まさかの事態

「何かありましたか?、千石社長」 向かい合う尾上は、時間が経つに連れて度々腕時計で時間を確認しては、様子がそわそわとし出している千石に疑問を持ち、問いかけてきた、「あ、いや、どうやら今晩は頗る胃の調子が悪いみたいで、ちょっとお手洗いでも、失礼します。」千石はお腹の辺りを抑え気分が悪そうな顔のジェスチャーを尾上に見せつけながら、一度酒の席から退出した、和室の襖をゆっくりと閉め終えた瞬間、向かいの和室から明星が襖を勢いよく開いて廊下に出てきた、千石は慌てて明星に静かにするよう呟くと、廊下の先にあるトイレの方へと向かうよう促した、やがてトイレの中へと入ると、「一体どういう事だ!、予定よりも遥かに時間が過ぎてるぞ、」 千石は腰に手を当て困惑しながら状況を明星に問いかけた、「すいません、さっき田中から連絡がありまして、尾上のパソコンには既に証拠となる資料が抜き取られていました、」 「畜生、先に先手を討っていたのか、と言うことは、我々が尾上を陥れようとしている事は、尾上本人が気づいているのか?」   「それはまだわかりません、でも本人が直接証拠のファイルを今持っている可能性は低いと思われます。考えるとすれば、尾上が信頼を置いている部下の方が可能性はあると思います!」 その話に千石は困った様子を露にしていた、「悪いが計画は失敗だ、ファイルはもう消されているかもしれない」  

「何を言うんですか千石さん!、まだ時間は残っています、私はまだ諦めたつもりはありませんよ」 明星は真っ直ぐとそう千石に言いかけた、しばらくの間千石は皺を寄せながら頭を悩ませた、「いいか!何としてでも証拠を探し出せ」

強い口調で明星にそう言い放つと再び酒の席へと戻っていった、「すいません、千石さん」明星は心の中で、大変な任務を受け持つ千石に謝りながら、もう一度田中に電話をかけた、「もしもし、今どこにいるんだ?」 その頃田中は抜き取られたファイルを見つけるため、自分の中で怪しいと判断した、専務の石岡のデスクに向かっていた、「どうにか千石が、時間を繋いでくれている、誰がファイルを持っていると断定できる?」  

「実は今専務のデスクに向かっている所で、専務と尾上常務は直属の部下だったので、可能性は高いと思います、」 「そうか、頼んだぞ!」 明星は田中の通話を切ると、トイレに出ながらとある人物にメッセージを送った、その瞬間明星はフッと笑みが溢れたその時、「ガシャァァァァァァァァァァンン!」廊下の先にある、千石、尾上達がいる和室から、大きな物音をたてながら、突然千石が勢いよく襖を突き破って廊下に投げ出された、「グッフ、」一瞬何が起きたのかわからなくなった明星は、考えることを捨ててとにかく尾上いる和室へと駆け込んだ、和室の前へと着くと、和室の中では部屋が無造作に荒らされており、そこには、うつ伏せとなった状態で尾上を押さえつける高橋の姿があった、「何~し~てるんだ、バカ野郎ォォォォ!」 衝撃の光景に思わず明星はその場で叫んだ、「すまない明星、内の高橋は酒に酔うと気性が荒くなると言うことを忘れていた」  すると、「どないしたんや!!」騒ぎが聞きつて慣れなかった蝉が向かい和室から出てきてしまった、「何やこの状況?」蝉は全く何が起きたのか理解出来なかった、「誰か早くこの男を止めてくれ!、社長、頼む助けてくれ」 「ざけんなゴラァ!お前の悪事わもうわかっとんじゃぁぁぁ!」   「あ!?、」 その発言に三人は完全に言葉を失ってしまった、「どういう事だ、まさか、お前達がこの私を陥れようと!」すると尾上の表情は怒りへと変貌し始めた、「ウヘェェェェェ!お前の証拠はもう持ってるんじゃ!」 「まさか、そんな筈はない、証拠は別の人間に映しているからな、」そう言い放つと力付くで高橋から抵抗しようとしたのを、三人が一気に足首に掴みかかって再び押さえつける行動に移した、千石はまるで尋問をしているかのように、尾上に言い詰め始めた、明星はもう何振り構わず尋問に協力した、「ファイルは今誰が持っている!、今すぐ応えろ!」 。





専務のパソコンをようやく開いた田中は画面を見つめながら絶句していた、「何で、何でだよ!」

可能性が高くあった石岡専務のパソコンには何一つファイルは送られてきていなかった、「クソ、だとしたら本人が直接持っているのか」田中は焦りを浮かべながら急いで立ち上がると、明星に連絡をかけた。

「早く応えろ!」その頃明星はまだ必死になって尾上の足首を押さえつけていた、「お前らこんなことをして、ただで済むと思うなよ!」  「ケッ、その前に証拠を引っ張って先にお前が終わるけどな」 千石はもう既に対抗心が剥き出しになっている、そんな様子に明星は不安を隠せずにいたその時、ポケットから携帯がバイブで揺れている事に気がついた、「蝉!こっちの足首を頼む」 

「え?、俺はこっちで手一杯や」 しかし明星は蝉の言葉を気にすることなく尾上の足首を離すと、その場から立ち上がり通話にすぐさま応答した、電話の相手はやはり田中からであった、「もしもし、専務のパソコンに証拠はあったか?」

「すいません駄目でした、専務のパソコンには一切ファイルは送られてきていなくて」 

すると明星は、一度携帯から耳を離すと、画面をLINEアプリへと切り替えた、その時、「明星離れろ!」。





居酒屋店蘭々、店内は仕事終わりのサラリーマン達でごった返し、そこらじゅうのテーブルで飲み会が行われていた、その店内にある一つの席で、今日の午前に佐藤社長定年祝いを終えた新社長の

瀧川はある男と共に飲んでいた、「まぁ、今日はある意味祝いの席なんで、どうぞもっと飲んでください、石岡専務」 瀧川の目の前にいたのは、酒で酔い潰れる例の石岡であった、「瀧川……さん…も…もう…のめましぇんよ」  「ハハハ、そんなこと仰らずに、さぁどうぞどうぞ」そう言うと瀧川は強引に石岡のグラスに酒を注ぎ込んだ、そんな時、テーブルに置いていた携帯から一通の連絡が入ったのに気がついた、瀧川はこっそりとメールを確認すると、その内容には、石岡の携帯を調べろという無茶な連絡であった、ふと瀧川は石岡の方を覗くと、石岡は頭をテーブルにつけた状態で熟睡していた、「全く、明星は一体何を考えてんだ、」瀧川は仕方なく、熟睡する石岡のズボンからこっそりと携帯を抜き取った、しかし、やはり携帯にはロックがつけられている、石岡の携にはパスワードか、指紋認証がなければ開けないようになっている、「こっそり指紋に触れれば、」その時、携帯から顔を上げると、さっきまで眠っていた石岡がこちらを見ていた、その瞬間、瀧川の頭は真っ白になってしまったと思いきや、石岡は自身の携帯を触られていると気づかず、トイレに行くとだけ言い放ち、席から立ち上がった、瀧川は意を決して携帯を握って立ち上がった、「心配なので、私も着いていきますよ」

「いや、大丈夫です社長、一人でも行けますので」 「そうですか、」そう言われると瀧川は席へと戻った、その時石岡の携帯画面は指紋が取られロックが解除されていた、石岡がトイレに行くなか、瀧川は急いで尾上から送られてきたファイルを探し始めた。

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