第17話 恋する街角【荒ぶる乙女たち】



恋する乙女の応援部隊(ダークサイドチーム)が動くよりも早く事態は動きました。



あの後、目を赤く腫らして帰宅した舞奈さんを見て異変に気が付いたお母様


部屋に籠ってしまった本人には何も聞かず、舞奈さんと仲の良いアリスさんに連絡が来ました。



そこで無敵のアリスさん 微に細に事の顛末を語りました。

アリスさんもかなりお怒りですからね。



驚いたお母様 詳細は即時に幼馴染みくんのお母様と共有されました。


幼馴染みくんのお母様もこの状況を知らなかったようでございます。


詳細を聞かされた幼馴染みくんのお母様 

舞奈さんを泣かせたことに烈火のごとくお怒りになりまして、幼馴染みくんに宣言


「きちんと話し合うまでお家に入れない」


と幼馴染みくんを放り出してしまいました。


舞奈さんのことを娘のように可愛がっていらっしゃいますからね。




そして私たちの圧力ある立会いの下 即日OHANASHIとなりました。





法廷と化したアリスcafe


もちろん被告人は幼馴染みくん 弁護人・・・なにそれ 美味しいのですか。



舞奈さんは別室で待機してもらっております。

余計に傷つけるわけにはまいりません。事前に私たちで事情聴取させていただきます。



さあ言い訳を聞かせていただきましょうか。


嘘偽りなどを口にした場合は・・・ わかっていますよね。



――――



幼馴染みくんが目撃されたのは、二日前の天気の良い昼下がり


商店街の外れにある趣味の良い素敵なアンティークショップ


そのアンティークショップから出てきたところを目撃されたようです。




そして舞奈さんが目撃したという隣に居た美人さんは・・・ 従姉妹さんだったようです。



従姉妹さんのお兄さんへ贈る誕生日プレゼントを相談されて、お勧めのお店に行っていたとのこと。



ラノベ的にはベタな展開ではありますが、現実で起こると大騒ぎになるのです。


舞奈さんが誤解をするくらいなのです。単に一緒について行っただけとは思えません。


さあ キリキリ吐きなさい



従姉妹さんは美人さんのようですね。


「はい 美人だと思います」



舞奈さんよりも美人だと・・・



「・・・舞奈の方が・・・可愛い・・・です」


正直でよろしいですね。確認のために後で本人にきちんと伝えるのですよ。


さてお店の前でいったい何があったのですか。



「いつもと違う高いヒールを履いていて転びそうになったところを助けました」


ほう どのように助けたのですか



「転びそうだったのでとっさに体を支えるように引き寄せました」


緊急ですから仕方ありませんね。それは許しましょう。



「すぐに離れて、それ以降触れていません」


でも抱き寄せた時には柔らかかったですよね。



「・・・はい ・・・ちょっとだけ」


ギルティ 有罪です。真っ黒です。裁判員満場一致にて有罪確定です。


おそらくこの時に作られた甘い空気を舞奈さんは感じてしまったのでしょう。




理由はともあれ舞奈さんを泣かせたのは事実です。


本人よりも恋を応援する私たちが怒っているのですよ。(理不尽な私たち)



舞奈さんを泣かせた事実は認めますよね。


えっ 知らなかったのですか。お母様から説明はなかったのですか。


アリスさんに連絡して指示を仰ぐように言われて家から閉め出されたと・・・

お母様あぐれっしぶでございますね。



よく聞いてください。


舞奈さんはここで先ほどまで泣いていたのですよ。


あなたが従姉妹さんと一緒にいるところを見て動揺して泣いちゃったんですよ。


ずっと泣くのを我慢して気丈にふるまっていたのです。

耐えきれなくなって泣いてしまったのですよ。



この意味が分かりますよね。


あなたに彼女が出来てしまったと泣いていたのですよ。



誤解だったということでよろしいですね。


次に何をすればよいのかよく考えてくださいよ。


何を恥ずかしがっているのでしょうか。


殿方の責務を果たす場面でございますよ。




仕方ありません。私の手元に映画のペアチケットが『偶然』ございます。


ポップコーンとドリンクセットの引換券付き豪華版

これを進呈致しましょう。



無駄にはしませんよね。有効にご利用くださいませ。


舞奈さんですよ。可愛い舞奈さんですよ。誘いたいですよね。


強制はしませんよ。でも舞奈さんの気持ちは十分伝わっていますよね。



何をためらっているのでしょうか。


私たちがいると恥ずかしいですか・・・お黙りなさい。




アリスさん すぐに舞奈さんを呼んでくださいませ。


「幼馴染みくんから大切なお話がある」とお伝えください。





舞奈さんが入室後、アリスさんより真実の説明がありました。

それでも硬い表情の舞奈さん


まだ感情が受け入れてくれないようです。


さあ あとは幼馴染みくんに任せますよ。



――――



幼馴染みくんからの熱いご希望がございまして、舞奈さんとのデートが決定致しました。


「一緒に映画を見に行く」ではなく『デート』と宣言致しましたからね。


やればできるではありませんか。



舞奈さん また泣いてしまいました。


嬉しいですよね。ホッとしましたよね。



今度泣くのは姫子さんのお胸ではありませんでした。


そして抱きしめられてしまいました。



急に甘い雰囲気になったふたりを追い出して、緊急乙女裁判は無事に閉廷となりました。


両家のお母様にも結果を打電しておきましょう。

どのように収拾するのかはお任せ致します。


私たちは温かく見守りましょう。デートは物理的に見守りに行ったほうがよろしいでしょうか。


わくわくなんてしていませんよ。心配なだけですよ。





いえ 待ってください。


ラノベ定番の展開でここまで来ました。


そうなりますと懸念される事項がございます。



従姉妹さんとは法律上結婚できるのです。



文献によれば義理の妹さんと恋仲になるなんて日常茶飯事でございます。


さらに従姉妹さんとなれば十分にあり得ます。(恋に恋する乙女理論)



幼馴染みくん

 

定評ある優しさで無自覚に従姉妹さんを落としたりしていませんよね。

転んでしまいそうなところを支えられて何か始まったりはしていないでしょうね。


その展開は希望していません。変なフラグ立てないでくださいよ。



ラノベの神様 ここは自重してください。 いえ 自重しなさい。


私の愛刀『聖デュランダル』の力を見たくなければ大人しくしていなさい。



恋に恋する乙女が怒ると怖いのですよ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る