進路
自分の進路は前述の通り、あのようなことがきっかけでしっちゃかめっちゃかになっていた。自分の今しか見ることができず、未来を見ることができなかった自分は、高校を卒業したら死ぬものだとばかり思っていた。
でも、結局のところそんなことはなくて、しっかりと進路を決めろと当時の担任にはよく言われた。自慢ではないが、成績はそんなには悪くはなかった。そのためか、親からは近くにある薬科大学に行けと強く押された。しかし、自分の進路は父親の背中を見てきたというのも大きいが、何より友人を一度失いかけてから、自分のような。Sのような人を二度と生み出さないように、あんな悲しいことを二度と起こさせないために、自分は教師を目指そうと思っていた。
けど、それは教師だった父が一番反対した。
教師は無くなる職業だ。一言目にはそれだった。
というのも、今の超少子化の世の中。学校は経営破綻してゆく運命にあるのだという。となれば、必然として教師の仕事は減ってゆくというのが父の言い分だった。
もっともな話ではある。当然、反対もした。自分が目指しているのは、そんな破滅的なものではない。だが、三年に上がって特に顧問からの風当たりが強かった私たちには部活以外に考えられる頭の余地は残されてなかった。
その時からか、自分の顔を笑顔で固定して人の顔を見るようになったのは。本当は辛いのに、顔に出さないで笑顔で大丈夫だと偽るようになった。そうしないと、顧問に殺されるから。周りの空気が悪くなるから、後輩が不安になるから。
自分で自分を殺す生き方に、いつの間にか慣れてしまった。
そして、流れるように卒業して、薬科大学に進学。小説を書き始めたのもちょうどこの頃だった。
しかし、元々やりたかった勉強について行けるはずもなく。授業は平然とサボり、ろくに勉強もせず。何もかもめちゃくちゃで当然のように留年。より一層、自分のことが嫌いになり、希死念慮ばかりが大きく育つばかりだった。
それでも死ねなかったのは、家族の存在が大きかった。
何より、家族に迷惑をかけるわけにはいかない。
自分が死んだら、家族が悲しむかもしれない。
そう思っていたから、いつもカバンに忍び込ませていたロープに手をつけることができなかった。
そうして、一年留年してから。一つ、自分の人生で大きな出来事が起きた。
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