第12話 サイゼリヤ

 アフタースクール。

 それは高校生たちが最も活発に蠢く時間帯。うじゃうじゃしてて鬱陶しい。

 昼休みのやり取り通り、裕太ご一行はサイゼリヤに入店した。


 なんやかんや裕太とトゥゲザーしたがるエルミン・カルシーファさんを新たなお供に加え、彼らの放課後ランデブーの幕が開けていく。

 カントリー風の内観は一目で、ああサイゼリヤだなと思わせるほどサイゼリヤだった。


 裕太たちは奥側の窓際席に腰を下ろし、一息ついて歓談し始める。


「こ、ここ、この度はっ! 不肖橘みおんをサイゼリヤにお誘いいただき、ありがとうございました! まさか、お友達とファーストフード店を訪問する日が来るなんて……このご恩は一生忘れません! ひっく」


 橘みおん、感涙にむせぶ。

おい、嗚咽を漏らすな。周囲のお客さん、ちょっと引いてるぞ。

正直、ファーストフード店とファミレスは別モノではないかと感じているが、要は友達と騒ぐ場所ならままええやろ。


「ちょっと、みおん。情けない声を出さないで頂戴。変な注目浴びてるじゃない」


 エルミンさんは頬杖を突きながら、メニュー表をペラペラめくっていく。


「ご、ごめんなさい。つい、嬉しくて……」


 ぺこりと頭を下げ、やっちゃったとばかりにテヘペロである。


「お礼なら後で卓に言いなって。あいつ、普段はお調子者で適当なことしか言わないけど、おまけにいつも働かないで楽しいことだけして暮らしたいって断言するし、あまつさえ俺に聞いてもないのに女子生徒のスリーサーズを吹き込んでくる奴なんだ」


 裕太がしみじみと外の景色に思いを馳せる。

 お前、それほどまでに俺のことを考えてくれて……ん?

 ――って、ちょ待てよっ!

 よくよく聞けば、ディスってるだけじゃんっ!


 魂消たわぁーっ! あぁ、魂消し飛ぶほどビックラポン。

 普通こういう会話の流れって、最後の最後には褒めるんじゃないの? ねぇ、褒めるんちゃうん? あんさん、ホンマかいな? 自分、激おこですよ!


「ただの最低野郎じゃない。あの男、影が薄いくせに主張だけは図々しいわね」


 エルミンさんが呆れたと首を振ってため息をつく。


「一応、卓ちゃんにも良いところはあるんだよお? 困ってる人がいたら、すぐに気づいて助けてくれるとか」

「それってどうせ、可愛い子だけなんでしょ? スケベな魂胆が見え見えね」

「あぅ……」


 花は、早々に論破されてしまう。

 口喧嘩が苦手な彼女にフォローさせるのは荷が重いだろう。

 自分でツッコミを入れるべきだが、あいにく俺はこの場に存在しない設定だ。裕太ご一行に、大野卓は含まれていない。脇役は、真の仲間にあらず。


 男一人、女三人。ハーレムパーティーに俺の席はねぇーから!

 ならば、俺はどこから裕太たちの日常を実況しているのだろうか?

 ……実は、俺もサイゼリヤの店内にいる。


 彼らの席から食卓を超えて、二か所ほど離れたテーブルに座っています。近くね?   

 すぐバレちゃいますよ、と心配のお便りを送ろうとした親切な諸君。


 案ずることなかれ、俺は一流のモブだ。背景役をやらせたら、世界そのものと一心同体となり正体が露見しない。プロのエキストラを名乗る以上、空気と混然一体になれなきゃ全く務まるまいよ。


 おそらくエルミンさんが使っている認識障害系の魔法より、ただそこに自然体で佇むだけで発動可能な――インビジブル・スタンスは強力だ。

 こちらの方が隠蔽率は高いだろう。へ、悲しくて泣けてくるぜ。


 閑話休題。

 裕太ご一行は注文を済ましたらしく、一斉にドリクバーへ向かった。


「卓ちゃん」


 花が見守りポイントにこっそり合流したので、俺は作戦を再確認する。


「君がやるべきことは?」

「えっと、裕太ちゃんのズボンにジュースをこぼす?」

「如何に?」

「ドタバタラブコメの演出で……ボディタッチして急接近? 他のヒロインどもに親密度をアピール?」


 よし、ちゃんと覚えてた。

 俺はコクリと首肯する。


 主人公様の周りでは常にハプニングが起こるのだ。これくらいで急接近するとは考えていないが、やらないよりはマシだろう。甲斐甲斐しさは幼馴染力に直結する。

 汝、幼馴染ならばすこぶるお世話せよ。


「花、早く選びなさいよ。注いでないの、あんただけじゃない」

「うん、今行くよぉ~」


 エルミンさんの催促に、とっとこ走るよ花太郎。


「……」

「どうしたの?」

「いや、今一瞬、何か見覚えのある顔が……」

「えー、気のせいじゃなぁ~い?」


「そうね。あたし、記憶力には自信あるのよ。クラスメイトの顔と名前くらい、初日で覚えたわけだし」

「すごーい」


 ふふんとドヤる、ピク耳エルフさん。

 ははんとドヤる、クソ雑魚モブ氏。

 あのぅ、ちょっと目が合ったけど気づきませんでしたね。


 前言撤回せよ。その自信は過信である。慢心するとは、もしや君も幼馴染なん?

 花が席に戻ったところで、彼女たちへ視点を移す。

 席順は、裕太が窓際、その隣が花、裕太の正面にエルミンさん、そして橘先輩。


 主人公の隣を確保しろと口を酸っぱく言い続けてきたが、その成果が出ていて嬉しい。花、いつも話を全然聞いてないと思っていてすまん。いやほんと、ぼけ~っと過ごしてるから頭の中がお花畑ってのが名前の由来かと勘違いしちゃったぜ。


 堀田花、あなたの成長が素直に嬉しいです。

 君の行く末に幸あれ――


「じゃあ、橘さんの初ファミレス来店を祝して」

「「乾杯っ!」」


 あちらも祝福モード。

 ゴクゴクゴク、と。

 喉が渇いてたらしく、裕太と花は一杯目を一気飲みした。

 橘先輩にエルミンさんが気兼ねなく話しかけていると、


「ふぅ……あっ!」

「どうしたんだ、花?」

「ハハハ、何でもない。グラスが空だと、作戦が使えないなんて思ってないよお?」

「ふうん? さいで」


 裕太は訝るものの、特に気にせずミラノ風ドリアの到着を待った。

 別に俺の奢りみたいなもんだし、ステーキでも注文すればよかろうなのだ。

 いや、彼のメニューチョイスは問題ない。問題なのは、花が犯したミステイク。


 彼女の指摘通り、ドリンクが空じゃ何をこぼせばいいのだね? 手前の二人はきっちり手でコーヒーカップを支えていた。さっさとおかわりに行けば、作戦に支障はないと誰もが考える。――想定外の事態にすぐテンパる、花を除いて。


 青ざめ、なう。

 漫画表現のような汗を派手に飛ばす人に見えるのは幻覚だろうか。

 助け舟を出そうにも、むやみに近づけば俺でも存在感が露わになる。電話を繋いでイヤホン越しに逐一指示を出せば良かった、と反省。後の祭りか。


 目下、ラブコメ主人公とヒロインたちのおちゃらけターン。ここでもモブが出しゃばると、神の見えざる手によって存在ごと抹消される危険性大。

 ……そこの出たがり君、このシーンに必要ないよね? うんうん、私編纂者だからぁ~、リズムを乱す元凶はカットしちゃうなぁ~。いいんです、それでいいんです。


 大相撲と異なり、番付・関脇役とモブ頭筆頭の二場所連続出場は降格の対象であるゆえ、俺はその他大勢のガヤ扱いになる。


 個人のセリフは皆無で、主要登場人物様に話しかけられなくなる。それはマズい。将来、端役の大物が俺の夢だ。助演をやらせたら、右に出る者がいないと業界で評価されたい欲もある。


 待ってろよ、アカデミー賞! 最低でもノミネートはされてみせる!

 黒衣の名バイプレイヤー・大野卓をよろしくお願いします。

 捕らぬドラの皮算用にうつつを抜かせば、


「あら、裕太。もうドリンク飲んじゃったわけ?」


 刹那、救いの手を差し伸ばす者がいた。


「座ったばかりでまたあっちに行くのは面倒でしょう? だからあんたのために、もう一杯用意しておいてあげたわよ? フフン、存分にあたしに感謝しなさい」


 エルミンさんは、待ってましたと言わんばかりに嬉々とした表情で、ソファーの上に隠していたサムシングコールドトゥードリンクを登場させる。

 裕太がそれを一瞥するや、ぽつりと感想を漏らした。


「……ねえ、エルミン。これは何かな?」

「んー? ジュース?」

「いやはや、眼精疲労かな? 俺には、かつて飲み物だったものを焙煎して抽出した謎の液体Xに見えるんだけど」


 裕太が何度目を擦ったところで、現実は固定されたまま。

 グラスの中には、形容しがたいドロドロの何かが注がれている。バイオセーフティーレベル4の研究所から、細菌兵器を持ち出したのかしら? テヘテロッ。


「――オレンジ烏龍ジンジャートロピカルほうじ茶メロンエスプレッソ。ただのミックスジュースね」

「ミックスジュースは、ミックスジュースの味がするんだよ! そのネーミングッ! 明らかに、やったな!? お前、ドリンクバーの禁忌を犯したな!?」


 ドリンクバーに禁忌あり。

 其はオリジナル・ミックスジュースなり。

 是、何人も犯すことなかれ。

 ドリンクバーの錬金術師もそう言ってた。


「名前が気に入らないの? ほんと、わがままね。じゃあ、ブレンドジュースでいいわ」

「そういうことじゃねえ! 勝手に混ぜんな! これを飲んだら、人類の味覚にブレイクスルーが起きるぞ! 悪い意味だ! 無だ! 全ての味が虚無に帰るぞ!」


 味覚ぅぅうううっっ! 持って行かれた…………!

 ドリンクバーの錬金術師――人呼んで、マナー違反。


「ぜぇぜぇ……ハァハァ……」

「裕太、少しは落ち着きなさい。他のお客さんに迷惑じゃないの」


 叫んで息切れした裕太に、親切なエルミンさんはミックスジュースを勧める。


「あぁ、そうそう。そのミックスジュース、合成はあたしじゃないわよ」


 そう付け加え、彼女はチラリと隣に顎を向ける。

 橘先輩が申し訳なさそうに縮こまっていた。


「ご、ごめんなさい! 初めてファミレスを訪れた人は、どれだけ独創的なミックスジュースを作れるか試されると噂で聞いていたので! ファミレスを利用できる人間かどうか、最初の一杯でセンスを問われるのです、と」


「そんな通過儀礼はない!」

「失敗した途端、店員さんから恐ろしい洗礼を受けるというのは?」

「今時、炎上して店が潰れるわ!」

「ハハハ、橘先輩はお茶目ですなぁ~」


 赤鬼かくや、橘先輩は赤面を隠そうと両手で覆ってしまう。

 まったく、彼女にそんな勘違いさせた奴誰だよ! けしからん!


 そういえば放課後、俺は友人の友人キャラと偶然たまたま昇降口で、ラブコメのお嬢様ヒロインが信じそうなネタについて議論したけど全く以って関係ないぞ。庶民の生活に憧憬を抱くお方なら、防災扉の影に隠れて聞き耳を立てていたかもしれない。

 けれど、橘先輩は盗み聞きなんて柄じゃねーぜ。な!


「わたし、店員さんに謝ってきます。ミックスジュースを作って、ごめんなさい。独創性がなくて、すいません――と」

「いや、その必要はないだろ」


 橘先輩は例のグラスを掴み、立ち上がろうとして、裕太が制止する。


「注いじゃったもんは仕方がないでしょ。裕太、男を見せなさいな。まさか、みおんにそんなゲテモノ飲ませるつもり?」


 ニタニタとチェシャ猫る、エルミンさん。


「無理しないでください。これはわたしの問題ですから! お腹は結構強いんです。牡蠣を三つ食べても、当たったことはありません」


 一方、ガチガチに強張る、橘先輩。

 手が震えているのは、冷房が強いのかな?


「やれやれ、分かった。分かりました。俺が飲めばいいんだろ!」

「あ、待って」

「ええい、ままよ!」


 ままとはママにあらず。成り行きに任せるという意味だ。

 裕太がスネ夫だった場合、ままはやっぱりママになるが。


 ラブコメ主人公が度胸を見せた。

 謎の液体Xをゴクゴク飲み、その証拠に喉が上下に動いていく。

 空になったグラスをテーブルに叩きつけ、ドヤ顔である。


「どうだ! これで、満ぞ――バッハッ!?」


 別に、音楽の父はお呼びじゃない。

 突如、エビ反りに飛び跳ねた裕太。


「あんた、やればできるじゃない。ほら、口直しにあたしの……コーヒー飲みなさい」

「あぁ、すま……ない……エルミンにも優しさがあったなんて感涙しそう」

「あたしのブレンドは、ミネストローネコーラポタージュジャスミンコーヒーよ」

「――ゴッホッ!?」


 別に、浮世絵が大好きな印象派はお呼びじゃない。

 ミックスジュースは禁忌、ハッキリ分かんだね。

 二杯目を一口で吐き出すや、痙攣を引き起こして――堕ちた。


「だ、大丈夫ですか! 瀬利さん!?」

「アッハッハッハ! 裕太、最高だわ」

「エルミンさん! こうなることを分かっていて、先ほど黙っていましたね!?」


 橘先輩がエルフにお説教する中、俺は密かにほくそ笑んでいた。

 流石、メインヒロイン・エルミンさんや!

 おかげで、俺たちにとっての窮地を打開してくれた。その活躍に痺れず、憧れず、ようやく花の出番が回ってきた。


「もう、裕太ちゃん汚いなぁ~。ワタシガフイテアゲルヨ」


 この際、棒読みは気にしない。気にしたら負けさ。

 テーブルを台拭きで綺麗にして、花は未だ水滴が零れ落ちるズボンに手をかけた。  

 お節介と言えば、幼馴染。世話焼きと言えば、幼馴染。花柄のハンカチーフで優しく拭う姿は、まさにヒロインであった。


「お、おい。そんなくっ付くなって」


 意識を取り戻した裕太は、肩がコツンとぶつかる距離にたじろいでいた。

 吐息と肌の温もりを感じるボディタッチにビビるとは……ははーん、さてはこいつ童貞だな? これだから、DTの反応は分かりやすいぜ。あ、ぼくもです。


「待って。染みになっちゃう」


 童貞殺しの花は、裕太の太ももに何度もペタペタとハンカチーフを当てた。計算なのか自然なのか、寄りかかるような格好で頭を押し付けた。

 その都度、フローラルな香り漂う髪にくすぐられ、彼は悶えていく。

 心頭滅却すれば火もまた涼し、と言いたげな顔でこそばゆさを堪えていた。


「ズボンの中、濡れちゃってるでしょ? 私が拭いてあげるから、ほら脱いで」

「バカっ。こんなところで脱がす奴があるか!」

「私は別に気にしないよぉ~。そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに」

「ここは店の中だぞ。花、お前はもう少し常識というものをだな……」


 ズボンのベルトに手をかけ、二人は引っ張り合いに興じていた。

 なかなかどうして、青春してるじゃないの。イチャイチャしやがって、爆ぜろッ。

 日本全国に生息する非モテ男子たちの怨嗟が、モブ代表の俺の心へ集約していく。


 まぁ、待て……落ち着け、お前ら。否、俺ら!

 ラブコメ主人公に安寧をもたらすのはヒロイン。

 されど、彼に制裁を下す者もまたヒロイン。


「おっほん。ゴホン、ゴホン。あー、もしもーし」


 エルミンさん、風邪かい? 首にネギ巻いとく?

 脇役の鈍感アピールはさておき、彼女は目を細めて件の人物を詰問した。


「瀬利裕太くん? 随分と見せつけてくれちゃって、楽しそうですわね。オホホ」

「キャラがブレてるぞ、エルミン。見せつけるも何も、拭いてもらっただけだろ」

「お黙り! 公衆の面前で露出プレイなんて、ハレンチ甚だしい! 恥を知りなさい」

「え~」


 不満を言いたげな裕太が視線を移せば、


「瀬利さんはいつもモテモテですし、わたしたちがいたら邪魔になりますね。わたしだって……お世話……したい……です」

「橘さん、違いますから。俺がモテモテなわけないでしょ。そりゃ、ちょっとはモテ願望ありますけど」

「馬の耳に念仏ってやつですね。ふんっ」

「え、何だって?」


 裕太にその手の皮肉は通用しない。

 ラブコメ主人公の耳にラブコール。

 彼はまさしくそれを、体現していた。


「馬耳東風とはこのことですね。ふんっ」

「どゆこと?」


 いわゆる、風が強くてよく聞こえないよー、である。

 エルミンさんは頬杖を突き、新しく持ってきたコーラをチューチュー飲みながら、


「それで~? あんた、いつまで花と腕組んでるわけ? まさか、そんな恰好を見せつけてくれて、いつもの調子だってのたまうつまり?」

「そうです! 密着しすぎだと思います。エッチなことはいけませんよ」

「バーローッ。ちょっとしたアクシデントだ! 俺と花は別にそんなんじゃねーしっ」


 ぶっきらぼうな思春期くん、腕を振り解く。


「あ……ごめん。高校生にもなって、迷惑だったよね。もうしないから」

「迷惑、じゃないけど。花なら別に、平気だぞ」


 普段とぼけた花が見せる沈んだ顔に、裕太は慌てふためく。その姿、童貞の如し。

 ったく、これだからDTは単純で困るぜ。いいか、同い年の女を侮るな。どんなに童顔で幼い口調を用いえど、精神年齢はずっと上だ。格上だ。


 幼馴染の可愛い小娘だろうが、男を惑わす手練手管を弄するのである。童貞を転がす程度、本能で応じる。

 フルパワーでDT力53万の俺は瞬時に理解した。察せよと強いられているのだ!


「裕太!」

「瀬利さんっ」

「裕太ちゃん」


 三匹の美少女ちゃんに迫られ、主役様が繰り出す決断とは果たして――


「……お客様、すいません」


 途端、スタッフさんがインターセプトをキメた。

 俺と同等の気配遮断を使った、だと!?


「周りのお客様のご迷惑になりますので、騒ぐのは控えてください。あと、店内で脱衣ショーを開催された場合、退店命令の対象となりますのでご注意ください」

「あ、はい」

「「「ごめんなさい」」」


 テーブルに料理が並び、出来立ての湯気が沸き上がっていく。

 されど、裕太ご一行の表情は普通に怒られて冷え込んでいた。

 言葉数少なげに、スプーンやフォークが食器を叩く音が響くのみ。


 …………

 ……

 ぐぅ~。


「俺も腹減ったな」


 しかし、やはり俺の存在感は希薄らしく、注文したミラノ風ドリアがいつまでも届かなかった。メロンジソーダなる至って普通なミックスジュースを飲み干し、俺は氷をがりがり齧って飢えを凌ぐのであった。

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