母との会話
夕食の時間になってから、母はリトとルトへと向き合って忠告を始めた。
どうやら、魔獣の動きが活発になっているから気をつけるようにということを伝えたいらしい。
リトとルトの母と父は動物専門の研究をしている。
人気のない場所に住んでいるのもそのためだ。
「二人なら大丈夫だと思うけどね」
「そう思う?」
「ルトはそう思ってないの?」
「二人なら……大丈夫だと思う」
『一人だったらどうするんだろう』
不意にルトの考えていることが伝わってきて、リトは目を伏せる。
テレパシーの力は自然に現れてしまうことがある。
相手が伝えようと思っていることではなく、考えていることがたまに伝わってくる。
今聞こえたのはまさにそれだ。
ルトはいつか一人になろうとしているのだろうか。
今更一人になろうとなんて思われても困る。
親友で双子に転生したのだから、そこにはきっとなにか意味がある。
あと、今離れられるとリトが一人になってしまう。
リトは衝動に任せて、ルトの肩に腕を回した。
「そうそう! 二人なら大丈夫だから!」
「……リト」
何か言いたげにルトが口を開く。
『二人で居られないなんて想定したことないっての』
ルトに対してそう伝えると、ルトは困ったように笑っていた。
「二人とも、これだけは覚えておいて。最近魔獣がよく騒いでるみたいだから気をつけて遊ぶのよ」
「うん、気をつけるね」
母との会話は早々に切り上げて、ルトの手を引き部屋へと戻って行った。
‧₊˚✧
その晩 ーー 森の奥、夜の崖上
満月に照らされたその場所で、狼の遠吠えが響いた。
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