第26回 重力と価値観


 こういう時季、季節の変わり目は大抵体の調子が悪い。


「体調が悪い」と表現すればいいところをわざわざ「体の調子」と分割していってしまう時点で、すでに調子が悪い。



 気温差が激しいと体を壊しやすいらしい。メカニズムなんてわからないけど、自律神経云々が関係しているんだとかなんとか。



 季節の変わり目といっても、果たして本当に春夏秋冬が均等にというか、順番に、緩やかに巡っているのかどうかについては甚だ疑問。キンモクセイの匂いがしたのはたった一日だけで、あれは早咲きだったとかそういうことなのか。


 真夏になるちょっと前に鳴き始めてしまうセミの悲哀に、なんとなく似ている。


 でも、アキアカネを見たから、秋はホントに訪れたらしい。




 なにをしても身体が重く感じるのは、年齢のせいじゃないと思いたいのだが、風邪じゃないけど風邪のような症状が続くのは、さっき言った気温差だとか、気圧のせいだなんて話を聞いたことがある。



 だとすれば、そもそも人間ってのは、地球に適した生き物なのかどうかもわからなくなる。


 いや、適応するように少しずつ作り変えられた――、なんて表現は、どことなく極度に偏った思想を持っている人たちが好きそうなワードだから「進化してきた」に改めるが、進化してみても、季節の変わり目に対応しきれないのは、一体どういうつもりなのか。



 と、こんなふうに疑問に思ってみても、じゃあ何か解決策があるのか、解明の糸口があるのかといったら、私は学者でも研究者でもなければ、そこまでの知力すらないから、季節に体が順応するまでは、なんとか耐えるしかない。



 いや、待てよ…。「順応するまで耐える」その時間こそが、季節を実感し得る一番大きなポイントなのだとすれば、つまりはそういうことなんだなぁ、なんて思わないでもない。(えっ、つまりはどういうこと…)





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