31 一番キス

 それは考えたこともなかった。


 今まで、戦いに次ぐ戦いをつづけていたせいで、粘膜直接接触法で法力を受け取るのは俺だけだった。


 しかし、逆もできるわけだ。


 俺がまずサクラやイーダから法力を集め、それをキッサに渡す。


 サクラの蓄えている法力は莫大だし、俺自身の法力だってそれなりに大きい。


 さらに、それを粘膜直接接触法でキッサに注ぎ込む。


 ま、実際のところ、粘膜直接接触法じゃなくても、カロンテの聖石を媒介にしてパルピオンテ移転法とかいう方法でもいいんだけどさ。


 それって、一回一時間とか二時間とかかかるらしい。


 時間効率が悪すぎるし、……正直、やり方がかなりめんどくさいし。


 もうここまで、キッサとかイーダとかとはめちゃくちゃキスしまくってるんで、あんまり抵抗感もないしなー。



「いいですよ、ここまできたらもう、副作用も楽しくなってきました」



 キッサもそういう。


 副作用ってのは麻薬の禁断症状以上レベルで俺にキスしまくりたくなってしまうという、あれだ。



「それに……」



 ちょっと笑みを含んだ表情で俺をちらりと見たキッサ。



「副作用を理由にしてますけど……嬉しくて楽しいんですよね……」



 キッサの赤い瞳が優しくうるんでいる。


 んん? 


 あれ、どういう意味だ?


 考える間もなく、婆様がいった。



「では、始めるかの」


「え、今すぐにですか?」


「ああ、早い方がええじゃろ。ええか、ババアが教えてやるがの、人生ってのは決まったらすぐやる、これが肝心なんじゃ、寿命なんてあっというまにくるからの」



 まあ、そういうもんかもな。



「ええと、じゃあ手順としては……まずサクラとイーダ、このふたりから法力をもらう。そして、その法力をキッサにわたし、それを婆様がコントロールする、と……」


「ちょっと待ちなさいよ、私もそれに参加するわ」


「参加?」


「ええ、私の法力もあなたに渡すわ。いい? 傭兵ギルドのギルド長、タニヤ・アラタロが長女、ミエリッキ・アラタロも法力をあなたに提供する。いいわね?」



 まあいわんとするところはわかったよ、傭兵ギルドの全面的な協力あってのタニヤアラタロ討伐だと言いたいのだろう。



「わかった、じゃあやるか」


「一番キスは私ですよね?」



 サクラが言った。一番風呂みたいにいうな。

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