第2話 プロローグ②(世界のこと)

 史上最"厄"の魔王討伐から十七年。テルカポネア暦1854年11月15日。


 この世界ではこんな諺がある。



「百人の魔法使いオーディンズ・サンを集めれば人の願いは全て叶う」



 そう、ここは魔法やスキルと呼ばれる不思議な力が存在する世界--テルカポネア。数多の種族が三の大陸に分布し、数多の国があまねく大地を支配する。



 しかし、それは"人"の視点で見た話に過ぎない。


 そこには同時に魔物と呼ばれる、動物と似て非なる生き物も住んでいた。世界から"生命"を奪うことを本能に刻まれた生き物。彼らは生殖活動をすることなく、どこからともなく生まれてくる。彼らは姿も形もまるで違う。狼や鹿に似た動物型が多いが、稀に植物型や人型もいた。



 そんな魔物に対して、"人"は非力だった。速度や力では到底及ばない。だからこそ、人は魔物に対抗する力を持っていた。それが"魔法"という特別な術と、"スキル"と呼ばれる特別な能力だった。魔法は人に宿る魔力を源とし"現象"を操り、スキルは特別な人間にのみ付与され"特性"を操った。


 ある者は魔法で炎を起こせ、ある者はスキルで炎を不消にすることができた。彼ら魔法やスキルを使える者は魔法使いオーディンズ・サンと呼ばれ、敬われた。



 異世界転生者はその世界の中でも強い魔力とスキルを与えられ、彼らは勇者として戦うことを宿命付けられていた。


side note---


 オーディンとはかつてあらゆる戦場に現れた"戦の神"の呼称。しかし、彼は敵味方なく全ての人を斬り伏したことから、魔法使いをオーディンズ・サンというのは多少"戦好きの迷惑な人"の意味が込められている。そのため、魔法使いによってはそう呼称すると激昂する者もいる。魔法使いの呼び方はいくつかある。

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