【打切】異世界転生の遺児〜最強の父を殺された僕の復讐譚〜

チン・コロッテ@少しの間潜ります

第1話 プロローグ①(この世界の伝承)

 これは、最強スキルを持った異世界転生者の物語。ではなく、その転生者の息子である僕の話。決して、ハーレムにもならないし、明るい話でもない。僕の復讐譚。それがこの物語の全てだ。


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 九十歳にもなろうという長髪の老人が遠い目で椅子に座り、周りを囲む子供らに語り聞かせていた。



 今から遡ること二十年前。夜空に翡翠の彗星が流れた。


--"凶兆星緑彗星テンテア"が堕つるとき、地は震え、空は死灰に覆われ、魔王おこらん--


 その伝承はいつの時代も滅びはしなかった。数百年おきに魔王は勃興し、甚大なる被害を齎らし、伝承は語られ続けた。ゆえに今なお生き続けている。あるときの魔王は鎌蛇族から興り、あるときは呪木族より興り、あるときは竜族より興った。魔王が興る種族は限定的ではなく、またその特性も異なった。被害の様相も全て違う。

 今回、二十年前の魔王は人族より興った。故に狡猾。故に強欲。謀略、そして人心を砕くことを得意としたその邪悪なる者は、世界に多くの被害と癒えぬ傷を齎らし、史上最"厄"の魔王と仇名された。

 しかし、それでも希望はあった。魔王の伝説と共に語り継がれし、勇者の伝説が存在した。


--"吉兆星蒼彗星テルテマ"が駆けるとき、雲を裂き、朝日とともに勇者いずこより転生す--


 そう、いつの時代も必ず魔王を倒す勇者が青玉せいぎょくの彗星と共に現れた。魔王生まれるとき、異世界より現れし勇者が幾度も人々を救ってきた。


 今回も人々は絶望の中それを二年待ち、今から十八年前、遂にその日が来た。


 異世界より現れたのは十七歳の神無月奏太という少年だった。そして、彼は四人の仲間達と一年で魔王を倒して、世界に平和を齎したのだった。


side note---

凶兆星緑彗星テンテアと吉兆星蒼彗星テルテマ』

 テンテアとテルテマは翡翠色と蒼色のツートーンから成る一つの星だったと云われる。別れ、陰と陽を担うことになったと。そのため、この世界の人々はツートーンカラーを嫌い、翡翠色を凶兆の色としている。

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