オードトワレ

私は泣いた。

全部忘れるくらいに。

嘘も本当も私もあなたもぐっちゃぐちゃにしたくて。

私は笑った。

全部忘れたから。

もう香りも全部消えた。さっき濡らしてしまったからだろうか。

香りは水に弱い。嘘もまた水に弱い。

薄められて、混ざって、流されてしまうから。


「まだ、嘘をついていよう」


私は懇願した。

あなたは私の顔をみないまま、リュックを背負った。

私の涙で流れたオードトワレをあなただけがつけなおした

同じ香りのはずなのに嘘の香らない、私の知らない香りだった。


壊れてしまった距離感を混ぜて、流して。嘘の混じりけがなくなったオードトワレを机の上において。香りをつけたあなたはもういないから。

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罪の香り @Enn_Urui

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