第12話
「さて、まずはこの何も無い荒野に魔王城を築かなければいけないな」
翌朝、俺は早速行動を開始した。まず最初に行ったのは拠点となる場所の確保である。といっても、特に何か特別な事をするわけではなく、地面に手を置いて魔力を込めるだけで済んだ。
次の瞬間、地面が盛り上がっていき次第に形を成していった。その様子を見守っていると、やがて立派な城が完成した。
「よし、とりあえずはこんなものでいいだろう」
そう言って満足気に頷く俺の横では、同じように出来上がったばかりの建物を眺めている女性の姿があった。言うまでもなく、新たに加わった彼女だ。
「凄いね、あっという間に作っちゃうなんて流石は元魔王軍四天王の一人だね」
そう言って褒めてくれるのは嬉しいが、以前にミライがやっていた事を真似ただけだと知られたら落胆させるだろうか。
ここに知り合いはいないし黙っておこう。
いつまでもこうしているわけにもいかないので中に入ることにした。中に入ってみると意外と広くて快適な空間になっていた。これなら住むには十分だろうと考えていた時、彼女が話しかけてきた。
「ねえ、そういえば名前を聞いてなかったよね?」
そう言われて思い出した。確かに彼女の名前は美月と聞かされていたがこちらからは名乗っていなかった事に気づいた俺は改めて名乗る事にした。
「そうだったな、俺の名は御剣零時だ。レイジと呼んでくれて構わない」
「分かったわ、それじゃあ私の事も呼び捨てでいいから気軽に呼んでちょうだいね」
笑顔で言う彼女につられてこちらも笑顔になった後、今後の方針について話し合うことにした。
話し合いの結果、当面の間は二人で行動する事になった。というのも、彼女は戦いに関しては素人同然なので俺が守ってやらねばならないからだ。
神の呼んだ転生者達を倒して神の持つ全能の力を手に入れる。その為にも強くなる必要があるのだが、その前にやるべきことがあった。それは、戦力の強化である。
「というわけで、これからどうしようか?」
「そうね、誰かいないかしら?」
「うーん、そうだなぁ……」
二人して頭を悩ませていると、ふとある人物のことを思い出した。その人物とは、以前夢の中で出会ったあの女性のことだ。彼女は確か、魔王軍の残党を集めていると話していたはずだ。そこで思いついた俺は早速実行に移すことにした。
「ちょっと出かけてくるよ」
それだけ言い残して立ち上がると、そのまま部屋を出た。
その後、街へと向かった俺は真っ先に向かった先は酒場だった。扉を開けると、賑やかな声が響いてきた。そんな中を進んでいくと、カウンター席に座っていた女性がこちらに気づいたらしく手を振ってくるのが見えたのでそちらに向かうと隣の席に座るなり話しかけた。
「久しぶりだな、イリス。元気にしているようだな」
「ええ、おかげさまで楽しく過ごしていますよ」
微笑みながら答える女性に俺も笑みを返した後で本題に入ることにした。
「ところで、今日は頼みがあって来たんだけどいいかな?」
「何でしょうか?」
首を傾げる彼女に、俺がここへ来た目的を伝えると快く引き受けてくれた。
「そういう事でしたら協力させてもらいますよ。ですが、一つだけ条件があります」
「条件?」
聞き返すと、彼女は真剣な表情になって答えた。
「はい、もしもあなたが魔王として相応しい実力を身につけたらの話ですけどね」
「なるほどね、そういうことなら喜んで引き受けるよ」
「ありがとうございます。それでは、期待して待っていますね」
こうして、俺は魔王軍の残党を集めるべく旅に出ることになった。
数日後、俺は魔王城に戻ってきていた。目的はただ一つ、魔王軍の生き残りを探すためである。
「さて、どうしたものか……」
前の戦いで敗北し、魔王軍の残党は全国へ散り散りになっていった。今では息を潜めるように暮らしている。
これをどうやって見つけて集めればいいのか。
呟きながら悩んでいると、美月が提案してきた。
「それなら、私が探しましょうか?」
「えっ、いいのか?」
驚いて聞き返すと、彼女は頷きながら言った。
「もちろんですよ、だって私達は仲間じゃないですか」
その言葉に胸が熱くなるのを感じた俺は感謝の気持ちを込めて頭を下げると、彼女は優しく微笑んでくれた。
「任せてください、必ず見つけ出してみせますから」
「ああ、よろしく頼むよ」
それから、俺達は作戦を練ることにした。まず初めに行うのは情報収集である。各地を回って情報を集めることから始めることにした。
「分かりました、では行ってきます」
「頼んだぞ」
俺の言葉に頷いた彼女はその場から姿を消した。それを見送った後で、俺は魔王城の整備を行うことにした。
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