第84話 戻る日常
翌日、俺達は手を繋いで教室に入ると中にいると生徒が驚いた顔をして見ている。
「祐樹、また後で」
「ああ」
野乃花が自分の席に行くと水島さんと緑川さんが近寄って何か話をしている。三人共思い切りの笑顔だ。
俺も自分の席に行ってバッグを机の上に置くと
「より戻したんだ」
「えっ?」
「何でもないわ。工藤祐樹君」
そう言えば俺は、頭の中が野乃花の事で一杯で何処に誰が座っているかなんて興味も無かった。俺は話しかけて来た子の名前さえ知らない。
肩までの少しカールのかかった艶のある髪の毛。胸も適度に大きく、目は大きく鼻もスッとしていて少し丸顔の可愛い女の子だ。こんな子いたんだ。
申し訳ないので
「おはようございます。あの名前は?」
「別に覚えなくても良いわ。後、半年もすればお互い知らなくても良い事になるから」
参った。俺が野乃花の事ばかりを考えている間に周りからディスられていた様だ。
「嘘よ。私は君津川亜希子(きみつがわあきこ)、私の姉は君津川英里奈と言えば分かるかな?」
「えっ、兄さんの彼女の君津川さんの妹!」
「声が大きい。ほら皆こっちを向いてしまったじゃない」
野乃花の方を見ると心配そうな顔をしている。
「ふふっ、彼女さんを心配させちゃ駄目よ」
「…………」
何なんだ、この子は?
結局君津川さんとはそれだけだった。お昼になり野乃花が俺の所にやって来た。
「ねえ、祐樹、今日は二人で学食行こうか?」
「ああ、そうしよう」
隣に座る水島さんが笑顔で野乃花を見た。
二人で廊下を歩いていると他の生徒、特に女子が驚いたような顔をしている。そうか野乃花これが目的だったんだ。
野乃花はヘルシーなA定食、俺はB定食を食べていると小見川が彼女から離れて寄って来た。
「工藤、門倉さん。元に戻ったのか?」
「ああ、心配かけたな」
「良かったよ工藤。今回は本当に心配したんだから。教室でも工藤の事で持ちきりだったし」
「小見川君、どういう事?」
「あっ、いや。何でもないです門倉さん。じゃあ、工藤またな」
「ああ」
小見川が彼女の所に戻って行った。
「祐樹、小見川君の最後の言葉って?」
「さあ?」
変な事言って心配かけたくない。
周りの生徒が俺達の事をジロジロ見ては小声で何か言っている。野乃花の狙い通りか。
「ところで祐樹、朝、クラスの子が声掛けていたでしょ。あの人誰?」
「ああ、あの人は俺の兄さんの彼女の妹さん。野乃花も病院に兄さんをお見舞いに行った時、居たのを覚ええているだろう」
「ああ、あの綺麗な方」
「うん、その人の妹さん。凄い偶然。この学校に妹さんがいるとは思わなかった」
あれ、野乃花が怒っている。俺何かしたか?
「あの野乃花さん、俺何かした?」
「ふん、君津川さんの事嬉しそうに話していた」
「えっ!」
もしかして野乃花って焼き餅焼き。昨日の話があるからもうそんな事にならないと思ったんだけど。
「野乃花、昨日の父さんの話もあるし、こんな事で…」
「それとこれは話が別!」
そういうものなのか?
話をしながら食事をしていたら大分時間が経ってしまった。
「野乃花、戻らないと時間無くなる」
「あっ、本当だ」
女子は食事が終わった後、色々やる事が有るようだ。男は簡単なんだけどな。
放課後になり、俺と野乃花は揃って教室を出た。
ふーん。工藤君、門倉さんとよりを戻したのか。でもまだ分からないわよ門倉さん。
俺達は、駅に向かいながら
「ねえ、祐樹。先の話だけど、今年の夏はどうしようか?」
「えっ、気が早いな。まだ、模試も期末も来ていないのに?」
「違う。遊びもしたいけど、私ね塾に通うと思っているの。祐樹は頭いいから問題ないけど、私の頭だと祐樹と一緒に行く大学結構ギリギリだし」
「そういう話かぁ。そう言えば俺達受験生なんだよな。なんか春先から色々有り過ぎて、頭に無かった。でも塾行くにしても何処の塾に行くとか、どんなコースにするとか有るんじゃないか?」
「それもあるし、出来れば優子と里奈とも一緒に行きたいし」
「確かになぁ。まあおいおい考えよ」
「いいなぁ、頭いい人は。ところで今日はどうするの?」
「今日って?」
「だって、昨日。話が終わった後、祐樹のマンションに行く予定が、夕方まで祐樹のお母さんに摑まって、全然いけなかったしぃ」
そういう事か。
「いいよ。でも今からだと二時間位しか居れないよ。午後七時までには送って行かないと」
「もう、祐樹真面目過ぎ!」
結局、俺達は学校のある駅から二つ目の駅で降りてマンションに向かった。
そしてマンションを出たのは午後七時を過ぎていた。
「祐樹の所為で遅くなっちゃったじゃない」
「俺の所為?」
「そう、祐樹の所為。それともこういう時、私の所為にするの?」
はぁ、なんか段々言う事がはっきり強くなって来たな。
野乃花の家に送って行き、玄関に出た野乃花のお母さんに遅くなったのを詫びると
「いいわよ。もっと遅くても工藤君」
「えっ?!お、俺帰ります。野乃花また明日」
「うん、また明日。お弁当作るね」
「ありがとう」
急いで野乃花の家を離れた。まだ正式に野乃花の家には挨拶に行っていないのに彼女両親にあの事言ったのかな?
―――――
投稿意欲につながるので少しでも面白そうだな思いましたら、★★★頂けると嬉しいです。それ無理と思いましたらせめて★か★★でも良いです。ご評価頂けると嬉しいです。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます