第81話 呆れた事実そして隠し事
私と優子は、野乃花を強引に教室から引っ張り出して、工藤君たちの後を追った。この辺でファミレスは駅前だけ。
「直ぐに追いつくわ。工藤君を無理矢理連れて行っているから、そんなに行っていない筈」
「そうね」
私と優子で野乃花の両脇を押さえて早足で歩いた。案の上、ファミレスに入る前だった。
「ちょっと、あなた達」
「えっ?!」
「野乃花が工藤君と話をしたいって言うの。譲ってあげてくれない?」
「でも門倉さん、工藤君と別れたんでしょ」
「別れてません。絶対に別れて無い!」
「えっ、でも」
「皆、俺も今日は野乃花と話したい。ごめん」
「えーっ、今日こそはって期待したのにー」
「仕方ないかぁ。行こう」
「「うーん」」
残念そうな顔をしながら女子三人が駅の方に歩いて行った。
「さて、野乃花。これで工藤君と話せるよ」
野乃花が下を向いている。
「野乃花、俺も話したい。俺は今でもお前の彼氏だと思っている。そうでないなら言ってくれ。でもまだ野乃花が俺の彼女なら話をしてくれ。なんでこんな事になってしまっているのか。なんでも俺は受け入れる」
「祐樹」
「じゃあ、あそこの喫茶店に入りましょう。ファミレスじゃあね」
「そうだね」
「野乃花、私達も一緒に居て良いよね」
「うん、もちろんだよ」
俺達は四人で喫茶店に入るとエアコンが良く効いた静かな音楽が流れている店内だった。俺達の姿をみたマスターらしき人が
「好きな所にどうぞ」
「工藤君、あそこの隅がいいよ」
「そうだな」
四人とも冷たいジュースを頼むと俺から話し始めた。
「野乃花、どんな事でもいい。全部話してくれ。あのカラオケの時、何が起こったのか」
「…祐樹、ここで私とあなたがいる所をあの人の知る所となった時、私達はあの学校を退学させられる」
「「「えっ?!」」」
俺と緑川さん、水島さんが同時に声を出した。
「野乃花、どういう事?」
私は、全てを三人に話した。
カラオケ店の中で元生徒会長の望月奈緒さんに会った事。
車の中に連れ込まれて、祐樹と望月さんは結婚が決まっていると言われた事。
結婚は工藤家と望月家との間で決められた事であり、祐樹も認めている事。
更に、祐樹と結婚するのは私なんかでなく血筋もしっかりとした望月奈緒さんが相応しいと言われた事。
そして最後に、祐樹と私がホテルに入った画像を見せられ、私が祐樹を完全に拒絶する事、従わなければ教育委員会にその画像を提出して、学校を動かして私達を退学にさせると言われた事。
私は退学させられても良いけど祐樹に迷惑を掛けたくないから、自分から祐樹を拒絶した事も全部、全部話した。そして思い切りその場で泣き崩れた。
マスターがこちらを見ている。見ている理由は注文の品を出すタイミングを見計らっていたようだ。
野乃花が大泣きしている所に何も言わずジュースをコースターに乗せて四つ置くと何も言わずにカウンターに戻った。
俺は、奈緒さんを外見でしか見ていなかったようだ。内気で恥ずかしがり屋のお嬢様だと思っていた。まさかこんな薄汚い手を使う女だとは。
「野乃花、望月さんに俺達がまた一緒に居る所を見せつけてやろう。もしその画像を教育委員会に出すというなら好き勝手させればいい。
俺は野乃花が大事だ。そんなもので俺と野乃花が離れる事は無い」
「祐樹」
「はぁ、流石工藤君。やっぱり野乃花に譲るんじゃなかったかなぁ」
「ふふっ、もう遅い様だよ優子」
「里奈もでしょ」
俺は野乃花の大切な友達に
「緑川さん、水島さん、野乃花の為にずっと傍にいてくれてありがとう。本当にお礼を言います。この通りです」
俺は二人に真面目に頭を下げた。
「工藤君、そんなに改まんなくっていいから。私達は工藤君より野乃花との友情を選んだんだから」
「だから嬉しいんです」
「そ、そっかあ。なら、愛情のお裾分けでも」
「里奈、それは駄目」
野乃花が真っ赤な目をして笑いながら言った。
「ふふっ、野乃花も元気出たみたいね。でも望月さんの事許したくない。あの女、学校じゃ清楚な優等生していたくせにこんな汚い手を使うなんて」
「水島さん、それについては俺に考えがある。流石に頭に来た。野乃花の弱みに付け込んでこんなくだらない事で野乃花を貶めるなんて許せない。
それと野乃花、言い遅れたけど。結婚なんて決まっていないし、俺ははっきりと望月さんに君を選ぶと言っている」
「祐樹」
「優子、ここまで聞けば私達はもう良いみたいね」
「そうね。これ以上いると熱中症になりそうだから、ジュース飲んで帰ろうか?」
「そうしましょ」
「優子、里奈。本当にありがとう」
「「ふふっ、どういたしまして」」
緑川さんと水島さんがジュースを飲み終えて帰って行った。もちろんここの払い俺だ。当たり前だけど。
そして今日は金曜日。明後日日曜日は望月さんと会う事になっている。その時思い切りお返しをしてやる。
二人で喫茶店を出る時、会計しながらマスターに
「すみません。騒いでしまって」
「いいえ、もし宜しければこれからもお寄りください」
「はい、必ずそうします」
喫茶店を出てから
「祐樹、あそこのマスター素敵な人だね。勿論人間として」
「ああ、これからはファミレスじゃなくてあそこ使うか」
「うん」
学校のある駅から電車に乗った。
「ふふっ、嬉しい。祐樹とまたこうして一緒に電車に乗れる」
「ああ、あんな動画なんてどうにでもなる。それより明日」
「明日?」
「ずっと一緒に居たい。父さんから前のマンションは必要なら使って良いと言われている」
「本当。じゃあ、朝から」
「もちろんだ」
俺は、野乃花を家まで送って行った。珍しくお姉さんが出て来て
「良かったね。野乃花」
「うん」
「工藤君、何が有ったか知らないけど、本当にもう妹をこんな目に合わせないで」
「お姉さん、今回は私が悪いの」
「でも」
「本当だから」
「お姉さん、済みませんでした」
「元に戻ったんだったら、まあいいけどさ」
俺はお姉さんに謝ってから自分の家に戻った。マンションの鍵はまだ俺が持っている。野乃花とは明日、野乃花の家に午前八時半に迎えに行く事にしている。
次の日、俺は野乃花を彼女の家に迎えに行くと直ぐに二人で前のマンションに向かった。
部屋に入ったら我慢出来ずに思い切り彼女を抱きしめて口付けをした。もう舌も絡ませて一杯口付けした。
それから寝室に行って野乃花の洋服も下着も全部はぎ取る様に脱がせ、俺も全部脱ぐと思い切り彼女を抱いた。
今まで溜まっていた二か月半分を取り戻そうと二人で一杯した。気が付けば午後六時を過ぎていた。
「祐樹、まだ足らない位。明日の事なんかいいから、もっとしよう」
「お腹空かない?」
「そんな事よりもっと」
もう午後九時を過ぎていた。
「野乃花、流石にもう帰ろう。明日、ケリをつけたら、また此処に来ればいい」
「そうだね」
簡単に二人でシャワーを浴びた後、また駅の中華屋さんで二人で夕飯を食べた。そして彼女の家まで送って行くとまたお姉さんが出て来た。
「あら、今日は帰ってこないと思ったわ」
「い、いや、それは」
「ふふっ、冗談よ」
俺はそれから家に戻り、爆睡した。流石に疲れた。明日は野乃花の家に午前十時に迎えに行く事にしている。
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