第73話 私は工藤くんと話したい
工藤君とスマホの連絡先を交換した。家に帰ったら、彼に連絡してそして…会うんだ。何回か会えば必ず彼と正面で普通に話す事が出来る様になる。
私は家に帰るとお父様に
「お父様、今度工藤君を家に招きたいと思います。宜しいでしょうか?」
「そうか。もうそこまで進んだか。良い事だ」
あっ、お父様盛大に勘違いしている。やっと声を掛けられただけなのに。それに日時も約束もしていない。
「それでいつ来るんだ?」
「えっ、それは」
「なんだ。来る日は決めていないのか?」
「はい、まだ」
「早くしなさい。彼との仲を早く深めれば、その先の話も進ませる事が出来る」
私は、お父様の言葉に恥ずかしくなって急いで自分の部屋に入った。そのままベッドにダイブするとスカートのめくれなんか気にせずにお父様の言葉を思い返した。
か、彼と仲を深めるだなんて。も、もしかしてお父様はあれをお考えでは…。
私は自分の頭が沸騰して顔が真っ赤になっているのが分かった。
もしかして工藤君とあれをこうして、ここをあれされるとか。きゃーっ。どうしよう、どうしよう。まだ心の準備が。
望月奈緒が妄想に耽っている頃、
祐樹と野乃花と一緒に電車に乗っていた。
「祐樹、お昼休み、生徒会長と何話したの?」
「うーん、それが」
あういうの、なんて言えばいいんだ。会話になってなかったし。
「私に言えない事?」
「全然違う。その何と言うか。望月さん、全然話せなくて、会話にならなかった」
「どういう事?」
仕方なしに、野乃花にその時の状況を説明した。
「何それ、生徒会長ってコミュ障?」
「でも無いと思うんだけど。とにかく何も会話が無かった」
「そっかあ。良かった。心配したんだから」
「大丈夫だよ。もうすぐ野乃花の降りる駅だ。家に送って行くよ」
「うん、ありがとう」
この季節はまだ、俺達が帰る時間は大分暗い。実家が隣駅だという事もあって、最近は彼女を家まで送り届けた後、そのまま実家まで歩く事にしている。時間にして二十分。たいした距離ではない。
野乃花の家に着くと
「祐樹、今度の土日も会えるよね」
「もちろんだよ」
「じゃあ、私の部屋に来る?」
「でも」
「両親もお姉さんも居ない時間があるの。だから、ねっ」
「うん、分かった」
実家に引越してまだ一週間経っていないけど、戻って来てからは野乃花とはキスもしていない。俺もちょっとその気分になっていた。
俺は実家に帰って自分の部屋に入ると少ししてスマホが震えた。誰だ。野乃花はさっきまで一緒だったし。画面を見ると、えっ、望月さんだ。直ぐに画面をタップすると
『工藤君、望月です。昼間のお約束決めていなかったので連絡しました』
この人、対面は駄目だけどこれなら普通に話せるんだ。ところで約束ってなんだ?
『あの約束って?』
『我が家にお招きするお約束です』
あっ、そうだった。
『あの時間ですけど、今度の日曜日は如何でしょうか?』
日曜日は、野乃花といつも会う予定だ。
『日曜日は都合良くないです』
『そうですか。では土曜日は?』
土曜日も用事が入っているんだけどな。どうするか。
『分かりました。土曜日はいいですよ』
『では、土曜日の午後一時に私の家のある駅でお待ちしています』
確か望月さんの家はここから学校とは反対方向に四つか。彼女結構学校から遠いんだな。
次の日の朝、野乃花の家のある駅のホームで午前七時半に待っていると野乃花が笑顔で階段を登って来た。
「祐樹、おはよう」
「おはよう野乃花」
いつものようにさっと手を繋いで来る。そして俺の顔を見て思い切りの笑顔で微笑む。野乃花と一緒に登校するようになってからの習慣だ。もう水島さんも緑川さんも一緒に登校しなくなっている。
学校のある駅で降りると
「ねえ、祐樹。私の家に来る日だけど今度の土曜日の午後からなら誰も居ないんだ」
「えっ!」
野乃花とは毎週日曜日会っているので、今回もそのつもりでいた。
「どうしたの?何か都合悪いの?」
「そんな事無いよ。土曜日の午後分かった」
望月さんには日曜日に変更して貰おう。
俺は、その日の夜、望月さんに連絡した。
私のスマホが震えている。夜掛かって来る事なんて無かったのに。画面を見ると、えっ、工藤君だ。直ぐ画面をタップして
『はい、望月です』
『工藤です。土曜日に伺う件なんですけど、日曜日に変更出来ませんか?』
『はい、大丈夫です』
『良かった。同じ時間で良いですか?』
『はい』
『では、日曜日に』
切ろうとすると
『あの、工藤君。私、毎朝学校でご挨拶したいのですけど』
嘘だろう。目立ちすぎるよ。
『すみません。それはちょっと止めて欲しい』
『そうですか。残念です。あの一日一回で良いんです。どこかでお話できないですか?』
『すみません。時間取れなく』
『そうですか』
私はそのままスマホを閉じると
何とかしなくてはいけません。日曜日一回お会いした位では、彼の傍にいる事なんて夢のまた夢。とにかく普通に話せて、いつも隣に居れる様にしないといけません。
土曜日、俺は、朝から買い物と掃除、洗濯を終わらせると、簡単に昼食を摂って、野乃花の家に行った。勿論歩きだ。野乃花の家に着くとインターフォンを押した。玄関のテレビカメラで見ているのか、カチッと音がして玄関の前の飾り扉の鍵が外れた。そしてその先にある玄関が開くと
「祐樹、待っていた。さっ、早く入って」
「うん」
俺は飾り扉を開けて中に入ると更に玄関の中に入った。
家の中に入ると直ぐに二階に連れて行かれた。
「ここだよ。私の部屋」
野乃花がドアを開けると、女の子というか野乃花の香が一杯流れ出て来た。
「さっ、入って。飲み物持って来るから、待っていてね」
部屋の中は白い壁。机と椅子に洋服ダンスが二つ、本棚が一つとベッドそれに床に小さなテーブルが有った。俺は少し毛の長いカーペットが敷かれている床に直接座った。
何となくする事も無く、周りを見ていると
「祐樹、暖かい紅茶で良い?」
「うん」
「どうかな。私の部屋?」
「とっても可愛いよ」
「ふふっ、嬉しいな」
野乃花は俺の隣に座るとゆっくりと俺に寄りかかって来た。
「久しぶりだね。こうして二人でいるの」
「ああ」
「ねえ、祐樹。私のベッド小さいから」
「うん」
「祐樹、我儘言って良い」
「良いけど」
「じゃあね」
耳元でごにょごにょ。
「へっ?」
「いいでしょ」
「いいけどぉ」
「じゃあお願いね」
野乃花が一度立つとそのままベッドに横になった。
野乃花のお願いはベッドに横になって目を閉じているからそのまま洋服を脱がせてくれというものだった。それも優しくゆっくりと。なんか意味有るのかな。
ふふっ、私が目を閉じている間に祐樹が洋服を脱がしてくれている。優しく体を触りながら。これだけでも何かぞくって感じる。私少し変わったかな?
野乃花、洋服と下着を脱がしただけで濡れていた。この頃、野乃花の反応が段々凄くなっている様な気がする。直ぐにいってしまう。確かに初めてした時とは随分仕方も変わったけど、良いのかな。喜んでくれるのは嬉しいんだけど。
祐樹にこうされていると本当に気持ちが良い。何回も頭が真っ白になる。これ、相性が良いって言うのかな。
あっ、また。
えっ。あーっ!駄目ー!
野乃花が目を閉じている。可愛くて優しくて素直で気遣いもある。本当にいい子だ。父さんからはあんな事言われたけど。俺は野乃花と別れるつもりは全くない。
家を継ぐのは仕方ないかもしれない。父さんの言っている事は、正しい。工藤家がふら付けば、何万という人達が不安を感じる。路頭に迷う人出るかも知れない。
だからこそ、工藤家は揺るぎない実業家一族として維持していかなければならないのだ。
でもそれとこれは違う。例え家を継いでも野乃花と絶対に別れない。
あっ、野乃花が目を開けた。
「ごめん。寝ちゃった」
「いいよ。寝顔可愛かった」
「もう、祐樹の意地悪」
なんで?
「ねえ、祐樹、明日も会いたい。しなくて良い。会いたい」
「ごめん。明日は望月さんの家に行かないといけない」
「えっ!そうか、そうなんだ」
野乃花がとても寂しそうな顔になった。
「大丈夫だ。野乃花。あくまで建前だ。その内断る」
「その内って?」
「まだ、彼女と会ってから一ヶ月も経っていない。それにあの人今年卒業だし、大学に行ったら早々会えないだろうから自然消滅するよ」
「それならいいんだけど。でもとっても不安」
「俺が野乃花を離す事は絶対にない。俺は工藤家より野乃花が重要だ」
「分かった信じる。ねえまだ時間有る。だから」
「分かった」
俺はこの日午後五時半まで野乃花の部屋に居て実家に戻った。
祐樹はああ言ったけど、やっぱり不安だよ。
―――――
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