第60話 夏休みも終わりです
家族旅行から帰って来た俺は、翌日八月十一日から四日ほど野乃花と一緒に過ごした。最初予定していた映画とか買い物とか行かなくていいのかと聞いたけど、彼女が一緒に居たいからと言っていた。だから全部二十日以降にした。
話を聞くと俺がいない間にどうも緑川さんと水島さんと一緒に○○ニーランド行って、俺との仲を散々弄られたらしい。
それも聞かれた内容は、あっちは野乃花はどこまでしているのかとか、俺からどこまで要求されているのかとか、はっきり言ってレベルが低くて聞くに堪えなかった。
野乃花が恥ずかしそうに嬉しそうに話しているのが印象的だった。それもあって何処にも行かずに一緒にいた。
その所為か野乃花は積極的だった。彼女から初めての事もされた。変な形も要求された。あの二人、野乃花に何を吹き込んだんだろう。
そして八月十六日から楽しみにしていた道場の夏合宿が始まった。今年も二十名を超える参加者が有った。
午前中は体育館で稽古して、午後は砂浜を走り、皆で一斉に横並びして泳いだり、スカイ割したり、もちろん砂浜で砂だらけになって遊んだ。これぞ夏だって感じ。
でも、今年はいつもより砂浜にいる観光客が少ない。民宿の人に聞くと、周りの町に観光客を取られているそうだ。
こんなに真っ白な砂浜が二キロも続く素敵な所なのにと思いながら、俺自身は十歳の頃からここ御宿という街に来ているからそう思っているのかも知れない。
そして八月十九日にマンションに帰って、翌日野乃花が俺の所に来て言った一言が
祐樹、真っ黒だった。まあ、快晴だったから仕方ない。
「祐樹、良く焼けたわね」
「まあ、毎年の事だから」
「ねえ、明日遊園地に行かない。優子や里奈と一緒に」
「えっ、野乃花と二人だけじゃないの」
「だって、二人と一緒に行く約束しているでしょ」
「それはそうだけど」
野乃花からあんな話を聞いた後では、あの二人とは二学期まで会いたくない。どうせ弄られるだけだ。どうしようかな?
「祐樹、行きたくないの?」
「あの二人とは。だって野乃花から色々聞いた後だし、どう見ても不味いような」
「分かった。じゃあ断っておく」
「うん、頼む。でも明日二人で行くには全然いいよ」
「ふふっ、そうしようか」
野乃花から工藤君と一緒に遊園地に行くという約束は無しにして欲しいと連絡が有った。
やはり、彼女に少し聞き過ぎて彼が引いてしまったんだ。ちょっと失敗。里奈はどうなんだろう?直ぐにスマホを手に取った。
「里奈、私」
「何、優子?」
「工藤君と一緒に遊園地に行く件だけど」
「ああ、ちょっと野乃花に聞き過ぎたみたいね。それで工藤君引いたんだと思う」
「やっぱりそう思う。あの時は楽しかったから、今度は二人の時に聞いてみようと思ったんだけど。駄目かぁ」
「それより優子。明日からどうする?まだ十日近くあるよ」
「適当に遊ぶ?」
「そうね」
そんな緑川さんと水島さんの予定は露知らず、俺は野乃花と残り十日間を映画を見たり、野乃花の買い物に付き合ったりして、毎日楽しんだ。勿論あっちも一杯した。
今日は、八月三十一日。今日はゆっくりしようという事で俺の部屋に朝からいる。エアコンを掛けて丁度いい温度にしているので快適だ。
今二人でリビングに座っている。勿論並んでだ。
「祐樹、明日から学校だね。まだ二人でずっとこうして居たい」
「俺もだよ。でも俺達学生だから仕方ない」
「祐樹」
「うん?」
「祐樹は私の事ずっと、ずっと守ってくれる?」
ちょっと重い質問だけど。
「もちろんだ。野乃花に告白した時、そう心に決めた。むしろ野乃花が俺に飽きて離れてしまうんじゃないかって不安がある」
「無い、それは絶対にない。逆だよ。祐樹は、イケメンだし、優しいし、モテるし。何時誰が祐樹を横取りしていくかと思うと怖くて仕方ないよ」
「買いかぶり過ぎだよ。俺なんか家を追い出された人間だ。この先どうなるか分からない奴に近寄る人なんていないさ」
「それは祐樹がそう思っているだけ。周りの人はそう見ていないわ」
野乃花が俺をじっと見ている。
「女の子って弱いよね。不安を感じると一番安心する事をして貰いたいと思う。だから段々体の中にあの感覚が染み込んでいく。
もし祐樹が少しでも私から離れたらと思うと自分が怖い。私をずっと捕まえていて」
「俺だって同じ。最初は興味が有ったけど、毎日の様にしていると、学校が始まった時、週一で我慢出来るか分からないと思ってしまう。
そんな時、野乃花が俺から少しでも離れていたらと思うと。俺絶対に野乃花を離さないから」
………………。
祐樹も同じ事思っていてくれたんだ。嬉しい。体を合している時の安心感。それがかえって怖い気がする。
でも今はいい。祐樹と一つになれている。堪らないこの感覚。これがとても嬉しい。
―――――
次話から二学期です。
投稿意欲につながるので少しでも面白そうだな思いましたら、★★★頂けると嬉しいです。それ無理と思いましたらせめて★か★★でも良いです。ご評価頂けると嬉しいです。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます