第59話 それぞれの夏休み その二
私、水島里奈。夏休みに入り、部屋で宿題を片付けている。もうだいぶ終わった。
祐樹と野乃花とは八月に遊ぶ予定をしているけど、日にちは決まっていない。祐樹は色々予定が有るみたい。去年も遊びの時間を入れるのが大変だった。
でも今年は野乃花優先。当たり前だけど。今頃二人で宿題しているのかな?それとも…しているのかな?
弘樹と別れてから一度もしていない。ちょっと苦しい時が有る。そんな時は仕方なく自分でしている。でも偶には。祐樹無理なのかな。別に野乃花のポジを奪うつもりなんか無いけど。今更弘樹とは復縁する気無いし。
早く宿題終わらせて、遊びに行こう。優子に電話してみるか。
私、緑川優子。夏休みに入った次の日から宿題に取り組んでいる。もうすぐ終わる。この後はどうしようかな。
去年は工藤君とプールに行ったり遊園地に行ったりしたけど、今年は、野乃花達と一緒遊べるのは一日だけ後は予定が入っていない。どうしようかな。去年は一人で映画を見に行ったりしたけど。
あっ、スマホが鳴っている。里奈からだ。
『里奈、優子』
『優子、今何をしているの?』
『宿題やっている。ちょっと休憩中』
『ねえ、夏休みどうしようか。今入っているのって、野乃花達のだけでしょ』
『うん』
『一緒に遊園地とか行く○○ニーランドとか』
『そうだねえ。そうしようか。取敢えず宿題終わらせないと』
『じゃあ、八月入ったらという事で。あっ、ねえ良い考えが有る。工藤君って八月五日から家族旅行でしょ。その時、野乃花誘って一緒に行こうよ。現況報告させないと』
『ふふふっ、それは良い考えだわ。じゃあ、早速連絡しよう』
『うん』
あれ、優子と里奈のグループチャットだ。何だろう?それもビデオになっている。私は画面にタップすると
『野乃花、お久し。工藤君とは上手く行っている?』
『えっ、いきなり何?』
『野乃花、里奈と私で○○ニーランドに行こうと思っているの。それで野乃花も誘うかと思って。日にちは八月五日だから今からネット予約できるし、一緒に行かない?』
優子と里奈と一緒かぁ。楽しそうだな。その日なら問題ないし。
『うんいいよ。行こうか』
『じゃあ、待合せ場所とかは、後でね』
『分かった』
何で優子と里奈はビデオチャットしたんだろう?
『野乃花、工藤君一緒じゃなかったみたいね』
『随分健全な様ね。この時間で一緒に居ないなんて』
『まあ、あの二人らしいわ』
『じゃあ、ネット予約したら教えて』
『了解』
翌日は野乃花とは会ったけど、二人共少し体力を戻そう?という事で、一日おいて八月二日に一緒にプールに行った。
去年行った所だ。受付のお姉さんは居なかったけどウォータースライダーのお兄さんは一緒だった。ここの従業員なのかな?
もう野乃花とは何回も体を合せているけど、やっぱりウォータースライダーを滑る時の彼女のお胸様は俺には厳しい。あそこが三回目で元気になってしまった。
また、おトイレで落ち着かせた後、今度は波の出るプールに言ったけど去年の様な事は無かった。
そして帰りは俺の部屋に来て、一休み?して二人でシャワーを浴びた。流石にプールで疲れていた事もあり、その後二人で少し寝てしまって、送って行ったのは午後八時近くになってしまった。
玄関にはお姉さんだけが出て来て、遅くなった事を謝っておいたけど、何故かもっと遅くても良いのよとか理解出来ない事を言われてしまった。
二日ほどおいた八月四日、久々に実家に帰った。通知表も渡した。両親は結構喜んでいたけど、俺としては確認印貰えば良いだけだ。
そしてその夜の夕食の時、父さんから
「祐樹、お前付き合っている人いるのか?」
いきなりの質問に驚いたけど
「いるよ」
「そうか。いるのか」
「俺に彼女がいるのが何か問題でもあるの?実家を出された俺が彼女作ろうが何しようが父さんには関係無いだろう」
「祐樹、そんな言い方しない。お父さんもちょっと聞いただけなんだから」
「…………」
しきたりだとか言って実家を出された俺に今更何の用事が有ると言うんだ。
「ところで、思井沢の別荘に行った時の予定は」
兄さんが先に答えた。
「毎年同じ。散歩したり本を読んだりしている」
「俺も同じ」
「そうか、二日目はBBQだからな」
「それは楽しみにしている」
「俺も」
あれだけは楽しい。やっぱりBBQは、出かけた気分が一杯になる。
八月五日に渋滞を覚悟で家を出たが、二時間半位で着いたので、この時期としては普通だ。SAは混んでいたけど。
行って二日目の昼、俺は本を読んでいるだけではと思い、近くを散歩する事にした。但し、人の少ない方のコースだ。
のんびり歩いていると、前から綺麗な二人の女性が反対側から歩いて来た。一人は俺と同い年くらいかな。もう一人は少し年上な感じ。
何となく見た事もありそうだけど、こんな所で知り合いは居ないと思ってそのまま通り過ぎようとすると
「工藤君、工藤祐樹君でしょ?」
「えっ?」
「私、覚えていないの。悲しいなぁ。これでも君の高校の生徒会長なんだけどな」
俺は、声を掛けられた女の子を見た。腰まである綺麗な黒髪、綺麗な顔立ち、育ちの良さそうな仕草。
「あっ!」
「思い出してくれた?」
名前が思い出せない。普段関わりないから気にしていなかった。そう言えばあの時一回だけ俺達の教室に来てたな。理由は分からないけど。
「はい、生徒会長さんですよね」
「君ねぇ。もしかして名前覚えてくれていないの?」
「…………」
「私、望月奈緒。三年生よ。忘れないでね」
「奈緒。この人は?」
「同じ私立松ヶ丘高校の二年生。工藤祐樹君」
「工藤?ああ、工藤さんとこの。私は望月紗耶香(もちづきさやか)、奈緒の姉よ。宜しくね」
「工藤君、今散歩中?」
「はい」
「一緒に散歩する?」
「い、いえ」
俺はとんでもない事を言われて、早足でその場を離れた。
「奈緒、あの子ね」
「うん」
「心配しなくてもお付き合いすれば直ぐに分かるわ」
「そうなんだけど。まだその気は」
「大丈夫。まだ時間はあるわ」
―――――
ふーん?
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