第57話 もうすぐ夏休み
私、新垣美優。工藤君が門倉さんに告白して正式に付き合う事になったと聞いた。私としては最悪のシナリオ。
委員長を利用して水島さんを遠ざけて私と工藤君が会う時間を作ろうと思ったけど、それも上手く行かなかった。
そして門倉さんと工藤君が正式に付き合うと分かった日から水島さんは、放課後図書室に来なくなった。
つまりもう私が工藤君にアプローチしても無駄という事になったからだと思う。これでは水島さんに委員長をけしかけた意味も無くなってしまった。
実際、工藤君の性格は真面目で、彼が受付担当の日に図書室に行っても私と一緒に帰る事はしなくなった。
委員長は、次の月曜日の朝、皆の前で水島さんから
『あんた、今度あんな事したら退学させるわよ』と言われてしゅんとなってしまった。
一時だけクラスの人が騒いだけど、それも午前中だけだった。
そして後一週間もすれば夏休み。前に夏休みに会いたいと言っていたけど、それも出来ないと言われた。当たり前だよね。彼女がいる身で他の女の子と夏休み遊ぶなんて絶対にしないだろうから。
でも、緑川さんや水島さんは工藤君と門倉さんと一緒に遊びに行く約束をしている。仲が良いからかも知れないけど悔しい。
もう午前授業になっていて、図書室も午後三時まで。部活は自由の様だけど、門倉さんは午後三時過ぎには下駄箱で彼を待っている。付け入る隙が無い。何とか出来ないものだろうか。
俺は、いつもの様に朝、駅のホームに行くと野乃花が待っていた。最近、一段と可愛く見えるのは気の所為かな?
「おはよう祐樹」
「おはよう野乃花」
二人で電車に乗ると
「祐樹、夏休みもうすぐだね。一緒に宿題やって、プールに行って、遊園地に行って、買い物行って映画見て、優子や里奈とも一緒に遊んで。ふふっ、嬉しくて仕方ないよ」
「俺もだ」
「でも、祐樹は家族の旅行とか道場の夏合宿とか有るんでしょ」
「おかげで今年も予定が一杯だよ」
「私は、祐樹と会う以外は、優子達と遊ぶだけだから一杯じゃない」
「それは逆に羨ましいよ」
「でもぅ」
学校のある駅に着くと緑川さんが待っていた。そしていつもの様に水島さんが後ろから声を掛けてくる。
祐樹がテレビに出た時は大変だったけど、今は靴入れに封筒が入っている事も無くなった。祐樹がそれを全く無視したからだ。
図書室にはまだ五人位が常連さんの様に来ているらしい。でももうそんな事も気にならなくなった。私は祐樹の正式な彼女なんだから。
四人で学校に向かいながら俺は
「緑川さん、水島さん、夏休み開けたらもう四人で学校に行く必要もないんじゃないかな。最近は随分落着いて来たし」
「そうね。優子も里奈も今までありがとうね」
「まあ、野乃花。言ってくれるわね。でももう良いか。里奈終業式までにしようか」
「残念だけど仕方ないかな」
「俺からもお礼を言うよ。二人共ありがとう」
「「どういたしまして」」
俺達が教室に入って行くと
「工藤、おはよ」
「おはよ小見川」
「いつもながらのハーレム登校かよ。羨ましい限りだな」
「もうこれも終業式までだ。休み明けからは野乃花だけだ」
「ふーん。それでも羨ましいけどな」
「小見川の方はどうなんだ」
「空振り中」
「田中にバットの振り方教えて貰ったら」
「お前結構エッチだな」
「…………」
何言っているんだ。こいつ?
昼休みになり門倉さんが工藤君に声を掛けて来た。
「祐樹、あっちで食べよ」
「おう」
工藤君が、門倉さんと一緒に緑川さんや水島さんの所に行ってしまった。隣の席に座る私とは、朝の挨拶以外ほとんど会話が無くなっている。図書室でも同じ。今日を入れて夏休みまで後三日。
一学期に入って図書室の受付や遠足の件で何とか近づく事が出来たけど、門倉さんと正式に付き合い始めた事で白紙状態になってしまった。工藤君へのアプローチは、二学期からやり直しだ。
私、渡辺美月。せっかく一生懸命勉強して2Aになったのに祐樹には近づく事も出来ない。門倉さんと正式に付き合い始めて、益々遠のいてしまった。
夏休みはなんの予定も無い。周りが全く私を相手にしてくれないからだ。祐樹とせめて友達に戻れば。
どうすれば戻れるんだろう。夏休みに考えて二学期に頑張って再度祐樹に声を掛けてみようかな。
私、橋本心菜。最近野乃花は勿論の事、優子や里奈とも話をしていない。お昼は祐樹が、皆と食べるから私は近付く事も出来ない。
いつも一人でお昼を食べている。祐樹と付き合う前に耕三と別れていればこんな事にならなかったのに。
去年の夏は楽しかった。祐樹とも楽しく遊べた。でも今年は誰とも約束はしていない。優子と里奈は祐樹や野乃花と一緒に遊びに行くようだけど、私は入れて貰えない。当たり前だけど。
もう祐樹と話をする事も出来ないのかな。夏休み良く考えて二学期にもう一度、本当に心の底から謝ったら、せめて話位出来る様にならないかな。
私、水島里奈。野乃花、優子そして工藤君と一緒にお昼を食べている。彼が野乃花に告白して当面の決着は野乃花の勝ちとなった。
でも私は彼ともっと親密になりたいと思っている。お父さんの事はあるけれど、私にとってはそんな事より工藤君にとても興味いや好意を抱いてしまった。
彼のちょっとした仕草や笑顔、真面目で恥ずかしがり屋。そして私にもとても優しい。無理を言っても決して無下に断らない。そんな彼を好きになるのは当たり前。
彼とは一度体を合せたが、全然満足できなかった。彼が工藤ホールディングスの会長の息子と分かってから弘樹とは完全に別れた。もし工藤君と上手く行った時、弘樹の存在は邪魔になる。それこそ心菜と同じ事になってしまうからだ。
野乃花は、工藤君とそれなりにしているみたいだけど、私も偶には彼としたい、愛されたい。あっちのテクは下手だけど、それも新鮮で良いかもしれない。この夏休み何とかならないだろうか。
私、緑川優子。野乃花が工藤君から告白されたと思い切り幸せな声で電話して来た時は驚いた。そして滅茶苦茶心が寂しくなった。口では野乃花が選ばれても仲良くして行こうと言っているけど、はっきり言って野乃花に思い切り嫉妬している。
野乃花は浮気なんか絶対にしない子。工藤君も真面目な子。多分このままずっと一緒に居るんだと思う。
初めてを工藤君に上げたのは後悔していない。でもやっぱり私が工藤君とお付き合いしたかった。チャンスはもう無いのかな。こんな事考えてはいけないんだけど。
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