第12話 夏休みはもう目の前

最初は緑川優子視点です。


―――――


 私、緑川優子。私立松ヶ丘高校に入学した。この高校には幼馴染の一条弓弦が一緒に入学した。彼の彼女も一緒。


 彼とは家が隣同士で物心ついた時からいつも側に居た。彼がクラを始めた時、彼が優子もやれよと言われてフルートをやり始めた。


 幼かった事もあって、無邪気に先生の言われた通りに二人共練習していたらそれなりに発表会に出るまでになった。もっとも賞を取るとかってレベルじゃないけど。



 中学に入って弓弦に彼女が出来た。元々弓弦と私は恋愛感情なんてないから彼に彼女が出来た時、喜んで上げたけど彼女がちょっとご機嫌斜めになった時もあった。


 だけど私と弓弦の間の取り方や関係が段々分かって来ると彼女も私達を理解したのか、今は問題なく友達として過ごしている。


 そんな中、同じ高校に三人で入学してから知り合ったのが前田弘行と田中秀衡。弓弦の友達になった男子だ。


 二人共背が高くて結構イケメン。性根が真直ぐしていて裏表無い感じの男子、弓弦が仲が良い所為か直ぐに友達になったけど、前田は彼女持ち、田中はモテ過ぎで友達以上には発展しなかった。


 そんな中、体育祭で目立つ子がいた。元々女の子の間では半イケメンとか言われて人気は有ったんだけど、話すきっかけが無かった。


 彼は体育祭で私の友達仲間の橋本心菜と一緒に二人三脚で一位になり、クラス別対向リレーで、1Cのイケメン高田賢二を私達の目の前で一気に抜き去り、思い切り人気が出てしまった。


 そこで弓弦に頼んで前田と田中に声を掛けて更に工藤君と仲の良い友達小見川君を誘い込みカラオケに誘った。


 彼は歌が壊滅だったけど、その仕草やちょっとしたテレが思い切り私の心にヒットした。でもそれは私だけじゃなかった。


 同じクラスの仲の良い友達門倉野乃花も同じ思いだったらしく、共同戦線を張って工藤君攻略に乗り出したけど、目の前には橋本心菜と水嶋里奈が居た。


 橋本は陽ギャルだからどうでもなるけど水島里奈はそうはいかない、可愛くて頭がいい。それにお嬢様育ち。


 あっという間に工藤君との単独デートまで持ち込まれた。だから何としてもこの夏休みで工藤君奪取作戦を決行しないといけない。


 そこで野乃花と相談して彼を夏休みに遊びに誘う事にした。勿論別々に。野乃花とはどっちが勝っても恨みっこ無し。友達で居ようという事にしてある。


 でも彼は結構忙しく思ったよりガードも固い。だから即効性の高いプールに誘おうという事になった。野乃花も私もスタイルには自信がある。負けるわけにはいかない。


 工藤君に夏休みの予定を聞いた翌日、工藤君が登校して席についた所で野乃花と一緒に彼に近付いた。


「工藤君、ちょっといい。昨日の事」

「分かった」

私達は彼を廊下に連れだすと


「ねえ、工藤君。夏休みの件なんだけど私が八月三日、野乃花が八月四日で良いかな?」

 橋本さんと被っていないし、間一日有るけどこの二人は連日か、そして翌日は実家結構きつい。


「八月三日は良いけど四日はちょっと、実家に帰る前日だし、出来れば八月十一日以降にして欲しい」


「野乃花どうする?」

「うーん、じゃあ八月十二日にしようか。どうかな工藤君?」

「うん、じゃあそれで」

「工藤君、待合せなんだけど、二人共君のマンションのある改札内側で良いかな。野乃花は三つ駅向こうから乗るし、私は学校のある駅から乗るから」

「うん、それでいいよ。俺が迎えに行っても良いけど」

「「えっ!」」

 まさか工藤君が迎えに来てくれると言うとは思わなかった。


「工藤君、私の家はプールのある遊園地から逆方向だよ」

「いいよ、門倉さん。たった三つだから。それに緑川さんは行きがてらだし」

「ありがとう工藤君」

「嬉しいよ」


 予鈴が鳴った。席に戻ると小見川が俺の顔を見て

「ハーレム、ハーレム」

 と言っている。変わってやってもいいぞ。



 これで夏休みの予定がほぼ一杯だ。これ以上入らないで欲しい。その後、二限、三限と平穏に過ぎて行き、下校しようと思った所で水島さんが、声を掛けて来た。


「工藤君、話が有るんだけど駅まで一緒に帰っていいかな?」

「いいけど」

 水島さん、なんの話が有るんだろう?



下駄箱で履き替えてから水島さんと一緒に駅に向かった。


「水島さん、話って何?」

「夏休み、優子や野乃花から誘われたみたいだけど、私まだ約束していないよね」

「…………」


「工藤君、私も工藤君の夏の予定に入れてくれないかな?」

「うーん、ほとんど埋まっていて、空いているのって八月二十日以降だよ」

「えっ?そんなに」

「うん、宿題や、実家に帰ったり、道場の夏合宿がメインで決まっているから、空いている日がほとんどないんだ。そこにクラスメイトから予定を入れられたから益々空いていない」


「そうか、そうなんだ」

 出来れば八月の始め辺りが良かったんだけど。でも会えないよりいいか。それに記憶の上書きは最後が良いから。

「分かった。じゃあ八月二十一日でどうかな?」

「いいよ」

 これでほぼ空きは無くなったな。会っても飛び飛び、一人で出かけるのは八月も終りか。しかたないか。


―――――


書き始めのエネルギーはやはり★★★さんです。ぜひ頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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