第11話 夏休み前には決めないと


 私、橋本心菜。夏休みまで、後一週間。何とか工藤君とデートの約束を取り付けたい。でもこの前スマホの件で彼を怒らせてしまった。


 そしてあれ以来、みんなでやった図書室の勉強会も日曜日の図書館の勉強会も彼ときちんと話す事が出来なかった。


 その上、里奈が工藤君とアウトレットでデートしたと聞いた。物凄いショックだった。私はまだそんな事していない。


 更に優子と野乃花が彼と夏休みの間に遊ぶことを約束させている。勿論細かい事は決まっていないみたいだけど。


 そして昨日の学期末考査の成績発表で私が二十八位に入っても工藤君は上辺だけ褒めてくれただけ。


 里奈は十五位に入っている。これじゃあ、工藤君の心の中の私の印象がどんどん薄れて行ってしまう。絶対に何とか夏休みに二人だけで遊びに行く約束をしないといけない。


 今日も工藤君が朝、教室に入って来たら直ぐに優子と野乃花が工藤君の傍に行った。二人共とても可愛い。

 せっかく教えて貰ったスマホの連絡先。何とか使って彼と約束を取り付けたい。


 もう学校は午前授業に変わっている。彼と話す時間はどんどん無くなって行く。私は思い切って一限目が終わった中休みに彼に声を掛けた。丁度廊下に出た所だ。


「工藤君」

 彼が振り向いた。


「何、橋本さん?」

「あの、今日の夜連絡して良いかな?」

「いいよ」

「ほんと」

「うん、おれちょっと急いでいるから」


 俺は、満タンだった。いきなり橋本さんから声を掛けられて、とにかく良いよと返事したけど、何か用事が有るなら放課後でも良いのに。あっ、とにかく早く済まさないと二限が始まっちゃう。



 二限目が終わった中休み、緑川さんと門倉さんが声を掛けて来た。

「ねえ、工藤君。話が有るんだけどちょっと良いかな?」

「いいけど」

「じゃあ、廊下で」

 着いて行くと


「工藤君、夏休みどこかで会えないかな?出来れば二人別々で」

「えっ、どうして?」

「理由なんてない。工藤君と夏休み一緒に遊びたいだけよ。駄目かな?」

「うーん、構わないと言いたいけど、実家に帰らないといけないし、道場の夏期合宿もあるし、夏休みの宿題もしないといけないから結構日付が絞られるよ」

「うん、都合は合わせるから。それにもし良かったら夏休みの宿題一緒にやらない?」

「いや、それは遠慮しておく。自分でやりたいから」

「そうか、じゃあ、空いている日を教えて」


 予鈴が鳴ってしまった。


「じゃあ、三限目終わった後で良いかな?」

「いいよ」


 席に急いで戻ると小見川がニタニタしている。俺をじっと見て

「ハーレム、ハーレム」って言っている。ハーレムって自分の時間が無くなる事か?



 三限目終わると放課後だ。直ぐに緑川さんと門倉さんが来た。

「いつ空いている?」

「えーっと、八月一日から八月四日までと八月二十日から八月二十五日までかな」

「うわーっ、結構忙しいんだ」

「まあ、仕方ないよ」


「優子、そろそろ部活行かないと」

「あっ、じゃあ明日ね」

「ああ、いいけど」




 参ったなぁ。残りの日はのんびりするつもりだったのに。俺はマンションに一度戻ると空手の稽古に行った。


 この時期はとにかく汗をかく。型をしているだけで汗が出て来る。組手をしていると俺も相手もびっしょりだ。受けと攻めをする度に汗が飛び散る。エアコンもっと強くして欲しいよ。


 二時間も稽古しているとびっしょりだ。稽古が終わった後、タオルで汗を拭いてから道場を出たけど、周りの人が気になる季節だ。なるべく電車でも人が少ない所に立つ。エアコンがとても効いているから助かる。



 車両の一番後ろのドアに立って、次の車両が見える窓を何気なく見ていると、あれ水島さんだ。こんな時間から何処に行くんだろう。まあ彼女の都合もあるから関係ないけど。



 マンションに戻って、シャワーを浴びて、稽古着を洗濯機に突っ込んで学校のシャツと一緒に洗う。無振動型だけど結構五月蠅い。でもまだ午後四時だから良いかな。


 今日の夕飯はコンビニ弁当。でも最近のお弁当は結構美味しい。そうだ、明日は駅前の中華屋さんにでも行って見るか。




 食べ終わった後、明日の予習をし終わってから寝るまでの間にテレビを見ているとスマホが震えた。もう午後九時、誰だろう。画面を見ると橋本さんだ。そう言えば今日電話するって言ってたな。画面をタップして


「もしもし」

「工藤君、私橋本です」

「はい」

「あの、まず最初にこの前スマホの連絡先を聞いた時、他に聞いてはいけない事を口にしてしまってごめんなさい」

「ああ、いいよ。俺もきつい事言ってしまったから悪いと思っている。でもこれからはあまりプライベートな事を聞いて来るの止めてほしい」

「ご、ごめんなさい」


「もう良いよ。連絡して来たのって、それだけ?」

「ううん、違う。あの、…出来れば夏休みどこかで一緒に遊べればなと思って。駄目かな」

「うーん、それは良いけど。会える日が少ないよ。色々有ってさ」

「そうなんだ。何時が空いているの?」

「八月一日から八月四日までと八月二十日から八月二十五日まで」

 緑川さんと門倉さんにも同じ事言ったけど彼女達からは何も言われていないからいいだろう。


「じゃ、じゃあ。八月一日でいいかな。一緒にプール行きたい」

「えっ?!プール!」

「駄目かな?」

「うーん、いいよ。行こうか」

 ちょっと厳しい事言ってしまったし。これで位良いかな。


「じゃあ、私の家のある駅の改札内側に午前九時半で良いかな?」

「分かった。そうしようか」



 工藤君との電話が終わった後、嬉しくって飛び上がってしまった。隣の部屋の妹からうるさいと言われたけど構わない。一気に今までの事挽回するんだ。


―――――


書き始めのエネルギーはやはり★★★さんです。ぜひ頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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