第10話 学期末考査


 昨日の夜、水島さんから連絡有るかなと思っていたけど連絡は来なかった。まあ絶対に話したいわけじゃないだろうし、疲れも有ったんだろう。実言うと俺も早く寝てしまった。朝着信記録も無いから良かったけどなんかちょっと寂しい。



 俺はいつもの様に学校へ行き、教室に入ると隣に座る小見川が挨拶をして来た。

「おはよう工藤」

「おはよう小見川」

「日曜日は楽しかったか?」

 うん?どういう意味で聞いているんだ。


 チラリと教室の中を見ると何故か緑川さん、門倉さんがじっと俺の顔を見ている。何だろうと思いながらも一限目の教科書を取り出していると二人が寄って来た。


「ねえ、工藤君。来週木曜日から考査でしょ。だから今週から部活無いの。でね。今心菜と里奈が君と一緒にやっている放課後の勉強会、私達も一緒に良いかな?」

「えっ?…別に俺は構わないけど」

 そう言って橋本さんと水島さんの顔を見ると


「あの二人は大丈夫。もう話してあるから」

「それなら良いけど」

 なんか橋本さんも水島さんも面白くなさそうな顔をしているけど。


「じゃあ、放課後ね」

 二人が自分の席に帰って行くと小見川が、


「工藤、いよいよハーレムだな。気分はどうだ?」

「良くない」

「そうかあ、周りを見て見ろよ。他の男子は羨ましそうな顔をしてるぜ」

 チラッと周りを見ると確かにそんな顔をしている。カラオケの時一緒だった前田と一条と田中はニタニタしていた。


 確か前田が、こいつらしつこいぞと言っていた事を思い出すと

「はぁ」

 俺は下を向いてしまった。


「工藤、ハーレムの感想教えろよ」

「小見川、俺と変わってくれ」

「ヤダね。こういうのは見ている方が面白い」


 参ったなぁ。


 それから金曜日まで毎日俺、そして緑川さん、門倉さん、橋本さん、水島さんと一緒に放課後は図書室で勉強をする事になった。

 いつも図書室の入口の側にいる可愛い女の子が、俺の顔をまるで犯罪者でも見る様な目で見ている。

 お願い、誤解しないで。




 そして金曜日の図書室での勉強が終わった帰り道。緑川さんが

「工藤君、明日の土曜は休みだよね。一緒に勉強しない?」

「明日は用事が有るから出来ない」

 明日は空手の稽古の日だ。午後からだけど午前中は開けておきたい。


「ふーん、また里奈と一緒?」

「「「えっ?!」」」

 何故か俺と水島さん以外に橋本さんも驚いている。


「工藤君、いま優子が言っていた事本当?」

 橋本さんが聞いて来た。悔しそうな顔をしている。


「本当だよ。でもなんでそれ知っているの?」

「だって、私と野乃花もその日アウトレット行ったから」

 まじっ、現行犯だよ。言い逃れ出来ないよ。



「明日は、本当に一人でちょっと用事が有るんだ。だから会えない」

「じゃあ、日曜日一緒にやろう?」

「いや、日曜日は、また色々有って」

 洗濯物が溜まっている。


「ふーん。どうしてもしないの?」

 不味い雰囲気だな。どうすればいいんだ。


「優子、諦めようよ。でもさぁ、工藤君。夏休みって全部埋まっていないわよね?」

「えっ?!」

 もっと不味くなりそうだ。


「そうね。その手が有ったわね。野乃花頭いい」

「そうでしょう、そうでしょう」


 これは不味いぞ。絶対に不味いぞ。ここは日曜日午後辺りで手を打つか。


「あの緑川さん、門倉さん。日曜日午後からなら一緒に勉強しようか」

「えっ、都合悪いんじゃないの?」

「ううん、なんとか都合付ける。だから夏休みは…」


「野乃花やったね。これで日曜日と夏休み、工藤君確保―!」

「へっ?!」

 どうしてこうなった。


「あの、でも勉強するところって」

「「工藤君のマンション」」

「絶対駄目!」

 流石に強く言った。女の子がこんなに来られたらおかしくなってしまう。


「じゃあ、何処にしようか」

「図書館が開いているよ」

 水島さんが助け船を出してくれた。サンクス水島さん。


「うーん、仕方ないかぁ。野乃花良いかな?」

「まあ良いんじゃない。夏休みもあるし」


 不味い、何とかしないと。そうだ。




 俺は、土曜日の午前中の内に、洗濯物と部屋の掃除を一気にした。普段なら寝ているのに。

 そしてカップ麺を食べた後、空手の稽古に行った。少しでもこの現実を忘れたい。


 夜は、電子レンジでチンしてチャーハンをしっかりと食べた後、テレビを見ているとスマホが震えた。水島さんだ。直ぐに出ると



「工藤君、水島です。ごめんなさい。先週の日曜の事まさか優子と野乃花が一緒に居るって知らなくて」

「仕方ないよ。あの状況で彼女達がいる事を分かれって言っても無理だし。でも明日の勉強会はともかく夏休みの事は参ったな」


「ごめんね。でも、あのもし良かったら私も工藤君と二人で遊びたいんだけど?」

「えっ、どういう事?水島さん可愛いし、俺なんかよりもっといい奴が誘ってくれるだろう」

「そんな事ない。私は工藤君と二人で遊びたい!」


 これって、でも友達としてだよね。


「うん、いいよ。水島さんなら喜んで一緒に遊ぼうか」

「本当!やったぁー。じゃあこれは他の人にバレない様にスマホで連絡取合おう」

「そうだね。そうしようか」


 私は、工藤君へ一か八かの連絡をしてみた。この前の日曜日彼と一緒の所を優子や野乃花達に見られてしまったのは仕方ない。


 でももう一度彼を誘って、もし駄目だったら、単に本当に、暇な時間を私と一緒に居てくれただけ。


 もしOKだったら、私は彼の傍に将来彼女としているチャンスが有るという事だ。確実に進めば彼のハートを射止める事が出来る。


 明日の午後からの勉強会は他の子達にリードさせない様にすればいい。それに場所は図書館だ。五月蠅くも出来ない。何とかなるだろう。




 図書館の勉強は思ったより静かに出来た。四人がけん制し合うみたいに誰かが俺に声を掛けるとそれを他の人が対応してしまうというなんか良く分からない構図だ。

 橋本さんも俺の前に座れないおかげであの作戦は出来なかったみたいだ。良かった。



 そして迎えた木曜日一学期末考査が始まった。来週火曜まで行われる。俺は二週間前より復習、そして家では予習をしていたおかげで、結構問題につかえる事は無かった。




 そして学期末考査が終わった。翌日は全校生徒が可愛塾の模試を受ける。これも結構うまく答える事が出来た。

 半場強制的だったけど結構勉強会も良いかもしれない。…でもやっぱ嫌だな。変に都合の良い事を考えていると碌な事がない。





 翌週の月曜日に考査の答案が帰って来た。同時に学年別に上位三十人の成績順位が掲示板に貼られた。俺は八位だ。

「工藤、凄いじゃないか。勉強会のお陰か?」

「そうかな」

 小見川が声を掛けて来た。彼は表示された順位には入っていない。



「工藤君、見て見て。私二十八番だよ。やったぁ」

「良かったね橋本さん」

「工藤君凄いね。やっぱり君出来るんだ」

 声を掛けて来たのは緑川さんと門倉さんだ。


「偶々、まぐれで答えが当たっただけです」

「でもよ工藤。ほとんど筆記で選択は無かったろう。やっぱり凄いよ」


 なんか変に悪目立ちしている。水島さんは入っていないのかと見ると十五位に入っていた。良かった。一緒に勉強した甲斐が有った。あれっ、でも水島さんいないな。



それより俺は、教室に戻ると急いで前田の所に行った。


「よっ、工藤。成績良かったじゃないか」

「ありがとう。それより頼みがあるんだ」

「なんだ。お前から頼みって?」

「実は、緑川さんや門倉さん達から夏休み一緒に遊びたいと言われていて」

「それは羨ましいな」

「だから一緒に行ってくれないか?」

「はっ、俺が?」

「前田だけじゃなくて一条や田中も」


「うーん、工藤悪い。俺は彼女が居るから駄目だ。彼女持ちが他の子と一緒に遊びは行けないよ」

「俺もだ工藤」

「前田も一条も彼女持ちか」

「あっ、工藤俺も駄目。色々誘われている」

「えっ、田中も?」

「工藤、あいつらに気に入られてしまった以上、逃げるのは必難だぞ。まあがんばれ」

「えーっ!」



 仕方なく俺は自分の席に戻った。今日は考査の答え合わせだけだ。やる気のない一日が始まってしまった。


―――――


書き始めのエネルギーはやはり★★★さんです。ぜひ頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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