第6話 図書室で勉強


 橋本さんと会った翌月曜日、俺はいつもと同じように登校して教室に入って自席にスクールバッグを置くと、隣に座っている小見川が声を掛けて来た。直ぐに橋本さんも寄って来た。

「工藤おはよ」

「おはよ小見川」

「工藤君おはよう」

「橋本さんおはよう」



 俺達の声に気付いたのか、金曜日にカラオケに行った門倉さん、緑川さんそれに水島さんが近寄って来て

「工藤君、おはよう」

「工藤君、金曜日楽しかったね。また行こうね」

「うんうん」


「あははっ、ありがとう俺も楽しかったよ。でも歌が歌えないからカラオケはちょっと」

「じゃあ、じゃあ私が教えてあげる。私帰宅部だから放課後問題ないよ」

「水島さん、今日から工藤君は私と一緒に放課後は図書室で勉強するの!」

「「「えっ?!」」」


「本当なの工藤君?」

「何となく流れで」

「いつそんな話したのよ」

 水島さんが食いついて来た。


「土曜日、工藤君のマンションに行ったのよ」

 橋本さん、それここで言うか?


「「「えーっ!」」」

「工藤君どういう事?」


 予鈴が鳴った。


「工藤君、この話、昼休みね」

 四人の女子が席に戻ると


「工藤、体育祭予定外のおまけが付いて来たな」

「…………」

 これおまけって言うか?





 午前中は先週と違い授業に集中出来た。美月の事はもう欠片でしかなかった。午前中の授業が終わると

「小見川、今日は学食だ」

「了解」


 朝の事を持ち出される前に小見川と学食に逃げた。ここならあの子達も追って来ても、あんな話も出来ないだろう。二人でB定食を頼んでテーブルに着くと


「工藤、大変そうだな」

「ああ、予定外だよ。俺なんかよりお前やカラオケ一緒に行った前田、一条、田中の方がよっぽどかっこいいじゃないか。なんでああなるんだ」


「自己評価低いな工藤は。俺から見てもお前は自分で思っているよりかっこいい。それにあいつらは彼女いるからな」

「はっ?だって金曜日カラオケ行ったじゃないか。その時、彼女いなかったろ?」

「前田は、1Bの子。一条は同じ吹奏楽部の子、田中はモテるから良いんだ」

「そ、そうなんだ。でも小見川良く知っているな。そんな事」

「まあな。と言う訳で、あの四人は、工藤狙いだ。当分ハーレム味わえるぜ」

「勘弁してくれ」




 放課後になると緑川さんと門倉さんは部活で居なくなったが水島さんは帰宅部という事で橋本さんと一緒に図書室に来ることになった。




 この高校に入学した時、教えて貰った以外は来た事のない図書室。ドアは開けたままになっているのでそのまま入ると入ってすぐ右の受付に可愛い女の子が座っていた。


 受付の子は俺達をチラッと見た後、また受付の机に目を落とした。図書室の中は静かだ。小声で話す人がいる位。


 俺達は、書棚の近くのテーブルに座った。俺の向かいに橋本さん、隣に水島さんが座る。俺はスクールバッグから数Ⅰの教科書を取り出そうとすると橋本さんが、


「工藤君、何からやる?」

「朝の時間割順と同じに数Ⅰからやるつもり」

「ねえ、苦手な奴からやりたい。私英文法駄目なんだ」

 俺は、水島さんの方を見ると


「別に何やっても良いんじゃない。私も数Ⅰからやる」

「えーっ、英文法からにしようよ」

「うーん、いいけど」


 あれ、工藤君って押しに弱いのかな。橋本さんの我儘に簡単に折れた。これは利用できるかも。


「じゃあ、最初英文法やってそれから数学Ⅰにしようか」

「うふふっ。水島さん、ありがとう」

「じゃあ、工藤君。英文法から」

「分かった」

 橋本さん結構我儘だな。


 十分もしない内に

「ここ暑いね」

 そう言って橋本さんはプチとか音をさせていたけど、音は無視して復習を続けていると


「ねえ、工藤君。ここ分からない」


 その声に顔を起こすとテーブルに覆いかぶさる様に俺の前に体を近づけて来た。

 えっ! 彼女のブラウスの第二ボタンが外れている。そしてそこからは重力に逆らう事無くたわわに実ったお胸がピンクのブラにガードされ、宙づりにされている。でもまだ上の方だけど。


 一点しか見て無かった俺に

「工藤君、ここなんだけど」


 さらに迫って来た。もっと深く見せて来る。何とかこの状況から脱しようと水島さんを横目に見るとホッ。教科書に夢中だ。良かった。


 俺が橋本さんのお胸に夢中になっている姿を見たら軽蔑されるしかない。顔を前に戻すと橋本さんがニヤニヤしている。そして


「工藤君、大好きな事は後でね。ここ教えて」

 大好きな事は後?どういう意味だ。



 私、水島里奈。橋本さんが工藤君に声を掛けて体をテーブルに乗せて来た。チラッと工藤君を見ると目を点にして橋本さんの胸に集中している。


 橋本さんは胸がとても大きい。私はちょっと貧乳派、無くはないけど同じ姿勢を取っても胸が橋本さんの様にはならない。彼女がわざとやっているのは簡単に想像が付く。


 工藤君も男の子、見てしまうのは仕方ないけどちょっとショック。私は工藤君が私に気付く前に教科書に目を落とした。



 二十分程で英語が終わり、数Ⅰに変わっても橋本さんは同じ姿勢で聞いて来た。やっぱり意図的にやっている。それともやっていること自体を分かっていないのか。




 その後もしっかりと復習をしていると予鈴が鳴った。


「もう時間かぁ。仕方ないな。帰ろうか工藤君」

「でも結構集中して出来たね。やっぱり図書室は静かでいいや」


 本当は、全然集中出来なかった。橋本さんのお陰で妄想が膨らみ、π(パイ)の字が別のパイ(おっぱい)に見えてしまった。今度眼科に行こう。


 三人で学校を出て駅まで行くと

「橋本さん、さようなら。また明日ね」

「うん、水島さん、工藤君また明日」



 三人で改札に入っても水島さんは工藤君と同じ方向に帰る、私は反対方向。何か寂しい感じがする。

でも良く考えると毎日図書室で水島さんも一緒に勉強するという事は、毎日、水島さんは工藤君と駅から二人で帰る事になる。たった二駅だけど毎日帰ったら。


 不味い、不味い、絶対に不味いよ。毎日図書室で勉強するなんて皆の前で言わなきゃよかった。

明日からしないなんて言えないし。でも何とかしないと。




「工藤君と同じ方向だね。嬉しいな。図書室で勉強して毎日工藤君と一緒に帰れるなんて。これからも宜しくね」

「ああ、こちらこそ。水島さん」


 ふふっ、この特典は考えていなかったな。橋本さんは家が逆方向。先週金曜日に工藤君のマンションが二駅目だという事は分かったけど、それでも毎日一緒に帰れる。これはチャンスかも。ありがとうね橋本さん。


―――――


書き始めのエネルギーはやはり★★★さんです。ぜひ頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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