偽善者、天使になる。
@namadora
序章
第1話 呪い
やらない善よりやる偽善、大河の頭には常にその言葉があった。
親から誰よりも優しい子になりなさい、と育てられた。その言葉通りに大河は育った。
小中高と教師、生徒、地域の方からの評価は高く、優しいと言う言葉を浴び続けてた18年間だった。
その言葉は大河にとっての呪いだ。
優しいという言葉のせいで自分はこうなっていると思うと吐き気がした。
好きな言葉はありがとう。
いつからだろうか、何かをした時ありがとうと言われなくなったのは。
いつからだろうか、何かをした時相手にありがとうを求め始めたのは。
いつしか大河は捻くれた考えを持ち出した。
ありがとうも適当に言ってるだけ、感謝なんて全部適当なもの、自分はありがとうなんて言われる資格はない。
そんなぼろぼろな大河を見て親は、真面目に生きすぎだと言った。
親友は背負いすぎだと言った。
もし、その言葉が5年前に聞けたのならば、大河の人生は変わったのだろうか。
こんな最後を迎えなかったのだろうか
大河は学校に行ってた。
今日は朝早く学校に行き、前日に頼まれていた日直がやる予定の業務を代わりに行い、1時間目の教師に頼まれた手伝いをする予定だった。
「おはようございます」
「おはよう、今日も早いね〜」
すれ違った人全員に挨拶する、彼の習慣だった。大河が住む街は田舎だからすれ違う人は限られる。お互い顔と名前は一致してるのだ。
登校してる小学生が見える。この辺に住んでる小学生は1人だけだ。横断歩道を渡る前に右と左もう一回右を見て渡る。
そんな真面目さを無に返すように車が近づく、居眠り運転だ。
大河には絶対的ルールがある。どんな偽善をしようと、自分の命を最優先するというものだ。そうだったはずなのに、体はそれを許さない。走って子供の手を引っ張る。引っ張る反動で大河は道路に放り出される。
大河の頭に浮かんだ最後の思考は、「日直の仕事どうしよう」だった。
目が覚めると、雲の上に座ってて、周りがキラキラしていた。
目の前には天使っぽい何かがいた。その天使はこう言った。
「上野大河さん。あなたは車に轢かれて亡くなりました。」
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