隠された八番目 『いないはずの生徒』

○○→??



 ぴちゃん、ぴちゃんと雫の滴る音が聞こえてきます。そこで私、御鏡美綺ミカガミ・ミキの意識は覚醒しました。周りを見渡してみると、そこは見たことのない場所でした。薄暗く、じめじめしていて、コンクリートで固められたような部屋。広さは教室くらいあるでしょうか。その一面にはとても重そうな鉄の扉が備え付けられています。どうやらここは地下のようでした。そんな場所に私は後ろ手に縛られた状態で寝させられていたのです。


 ……どうして私、こんなところにいるんでしたっけ?


 私は記憶を辿ってみました。確か、兄が七不思議を六つも体験してしまって、もうあとがないと取り乱してしまったんでした。それで――それで? ダメです。頭の中に靄がかかったようになってしまっていてこれ以上は思い出せません。


 私はハッとしました。兄は、兄はどこでしょう!? 今度は忙しなく首を上下左右に動かしました。しかし、兄を見つけることはできませんでした。この部屋の中に兄はいなかったのです。

 兄はいませんでしたが、違う人ならいました。見ず知らずの女性です。私同様縛られた状態で床で眠らされていますが、一体誰なのでしょう? 綺麗な方ではありましたが、それ以外のことはわかりませんでした。


 それよりもやはり問題なのは兄がいないことです。


「うう、お兄ちゃん……っ」


 心細くて仕方がありません。私は兄がいないとダメダメなのです。兄はなんでもできて、何もできない私をいつも助けてくれていました。……双子なのにどうしてこうも違ったのでしょうか? 兄が私のためにやってくれることは嬉しく、悔しいなんてちっとも思ったことはありませんが。

 ……ああ。不安で泣いてしまいそうです。目線が自然と下に下がりました。すると、ガチャンという壮大な音が響いてきました。


「御鏡さんって顔はいいのにとんだブラコンなんだね」


 誰かがこの部屋へやってきたようです。あの重そうな扉の向こうから来たのでしょう。俯いていた顔を上げると、そこには布を一枚羽織っただけの格好をした女の子が一人立っていました。


「だ、だれ、ですか……?」


 ちょっと警戒してしまいます。私はこの方を存じ上げないのに、相手方は私のことを知っているようでした。……どうして?

 同じ学校の生徒、なのでしょうか? 明るめのゆるふわボブにぱっちりとした大きな目、垂れ気味の眉、鼻は小さく少し薄めの唇。幼さが残る顔立ちの低身長で、とても可愛らしい方、というのが第一印象です。


 どういった人物なのか見極めようとしていると、その人が私の問いに答えてきました。


「え? 知らないの?



――笹川七夕ちゃんっていえばわかるかな?――」



「……」


 笹川、さん……? いや、「もちろんわかるよね?」みたいに言われても困ります。わからないので。

 親しげに話しかけてきますが、私たちはどこかで知り合っていたのでしょうか? うーん……。こういう時、他人の顔と名前を覚えられないのがネックになってきますね。兄さえいればそれでいいと思ってしまっているからか、全然頭に入ってこないのです。


 頭を捻って唸る私を見て、笹川さんは驚きの声を上げました。


「えっ!? ちょっと、はぁ!? あなた、それ、マジなの!? いくらなんでも気にしなさすぎじゃない!? そんなんだから月見里にも鬼灯にも気づけないのよ!」

「……え? ヤマナシ? ホオズキ? って……?」

「……あ。ううん! こっちの話!」


 本気で驚いているのだと顔が語っていました。その際に人の名前みたいなものが彼女の口から飛び出してきましたが、それが誰で、何を意味しているのかは私にはさっぱりわかりません。聞き返しましたが、笹川さんはそのことについて教えてくれませんでした。


 笹川さんは頭にクエスチョンマークを並べている私に、自分のことを語ってくれます。


「えっと、ナユちゃんは笹川七夕! ミキちゃんと同じ学校の二年四組だよ! 三週間くらい前に机の上に白い菊の花が置かれてて、それから一週間で学校の七不思議ってされてるものを全部体験しちゃって! 今に至る、かな? ミキちゃんもここにいるってことは七不思議を体験しちゃったってことでしょ? だったら、同じ体験者同士! 仲良くしよ! ね!」


 そう言って私の背中の方に回って縛られている私の手を取って振る笹川さん。……そうでしたか。彼女は七不思議を体験して行方不明になっていた生徒だったんですね。

 しかし、笹川さんの説明を受けても納得できないことがあります。



――私は七不思議を全て体験していません――。



 私は最初の『白菊の花』を体験していませんし、まだ、七つ目の不思議も残っていました。最初の不思議を体験しているのは兄ですし、その兄だって七つ目は体験していませんでした。つまり、この場所に「私」がいるのはおかしく、百歩譲って「私」が行方不明にさせられたのだとしても、それは兄も同じでなければ辻褄が合わないのです。


 私は笹川さんに尋ねました。


「あの、えっと、ここは……?」


 この問いに笹川さんが答えます。


「あー……ここは七不思議の七つ目、『下りの階段』のその先、ってところかな?」


 そう言われて、何かが頭の中をピリッと走っていきました。まるで拒否反応を示すかのように。そして、ある情景が思い起こされます。それは、



――階段で兄が眠らされる映像――。



 ……そうでした。私たちは誰かに眠らされて、気がついたら私だけがこの場所にいたのです。その誰かは思い出せませんが、ここで重要なのはその人物の特定ではありません。人によってこの展開がもたらされているということです。



――私がこんな場所にいるのは怪異でもなんでもなく、全て人がやったこと――。



 そう考えれば、兄がこの場にいないことにも説明がつきます。そして、七不思議を体験していないであろう謎の女性がここで倒れていることも。……男の子はいらなかったということなのでしょう。


 兄はどこか違う場所に閉じ込められているかもしれません。もしそうなら、私が助けに行かなければ……! 普段、助けてくれる兄さん。その兄さんがピンチなのだとしたら、私がどうにかするべきなのです……! 私は「しっかりしろ」、と自分に言い聞かせました。


 しかし。これが人の手によるものだと解釈すると、この子が一気に怪しくなります。笹川七夕……。彼女がこれを「七不思議を全て体験した結果」だと言ったこと。明らかに私の記憶と食い違います。この子は何かを隠している、そう悟りました。

 警戒すべきはこの子か、それとも別にもっと警戒すべき対象がいるのか、私は判断したくてまた質問します。


「そ、そういえば、笹川さんの他に二人――いえ、甘花? って方と怪物みたいに怖い人、それとあのキツネっぽい人を含めれば五人でしょうか……。その人たちも行方不明になってるんですけど、ここにいたりはしませんか?」


 私の質問に笹川さんはあっけらかんとした様子で返してきます。


「死んだよ? ススキちゃんもマコモちゃんも拒んだから。あと、甘花くんと、怪物みたいって菖蒲のことかな? あいつらは楯突いたから返り討ちにあった。仕方ないよね? だって、ここではに従わなくちゃいけないのに、それを拒否したんだもんっ。キツネっぽい人は知ーらない」

「……え」


 内容に反して明るい言葉と笑顔。寒気がしました。私の中で確定しました、この子はこの事件の被害者なんかじゃなくて――



――クロ側の人間だ――と。



「……って?」


 私は気になってつい聞いてしまいました。それは聞かなくてもいいことで、むしろ、聞いてはいけないことだと言っても過言ではなくて。

 私はこの行動をひどく後悔することになります。


「うん! っていうのはね! この七不思議の主なの! ここに連れてこられた人たちはね、に愛されることで生きていけるんだよ! それだけがナユちゃんたちに残された生きる道なの! 最初はちょっと怖いけど、でも大丈夫! すぐに慣れるから!」


 興奮した笹川さんの大声が地下室に反響します。それが、謎の女性を気づかせました。


「んん。……っ!? ここは一体!?」


 謎の女性は目をしばたかせて辺りをおどおどと見渡しました。そして同じ状況である私を見つけると、目を見開いて、


「あ、あなたはあの時の……!? 一体、どうなって……!?」


 そう言いました。この女性も私のことを知っているようですが、私としてはとんと見当がつかず……。どこかであったでしょうか? 同学年である笹川さんに一方的に覚えられているのはなんとなく理解できますが、この方は生徒でも教師でもなさそうですし……。本当にそろそろ他人の顔と名前を覚えられないのをどうにかした方がいいかもしれません。……ここから無事に帰れたらの話ですが。


 ……などと考えていたのがよくありませんでした。私はフラグを立ててしまったのでしょう。笹川さんがなる存在を呼び込んでしまいました。


「りーちゃん! あなたの新しいお嫁さんたちだよ!」


 笹川さんがそう叫ぶと、重い扉がゆっくりと開きました。その奥にいたのは、



――目出し帽ならぬ口出し帽だけを被った男の人――。



「――ひぃ……っ」

「い、いやああああああああっ!」


 完全に女の人には見せてはいけない恰好をしていました。何もかもを曝け出していました。悍ましいものを目にして私も謎の女性もがくがく震え出します。特に女性は極寒の地にでもいるのかというほどすごかったです。


 笹川さんがの腕に抱きつき、二人してこちらに詰め寄ってきます。


「あっれぇ? 反応小さくない? もしかして慣れてるの?」


 私を蔑むように見ながらくすくすと笑ってくる笹川さん。……兄のを見慣れているので若干耐性がついているだけのことです。変態みたいに言わないでください。不本意な判定をされたのでぎろりと睨みつけると、笹川さんは「う……っ」と声を漏らしてたじろぎます。私の目は兄ほどではありませんが、それでも鋭いので女の子が相手なら怯ませることはできなくはありません。

 ただ、やはり異性ともなると効果は薄く……。私の顔にぐいっと口だけの顔を寄せられました。それだけのことなのに、どうしようもなく怖くなって、頭から思考力が抜け落ちていってしまいました。

 怖くて、怖くて堪らず、震え上がります。あの謎の女性のことを言っていられません。涙もぼろぼろと零れ落ちて、顔は恐怖に染まっていたことでしょう。


「ひぐ……っ! あぅ……っ」

「あははっ! 最初の威勢はどこにいっちゃったのかなぁ!?」


 情けない声が口から漏れ出ました。しっかりしなければいけないのに……っ。お兄ちゃんがピンチかもしれないのに……っ!


 それでも、迫ってくる唇に、私は正常ではいられませんでした。嫌で、嫌で仕方がなくて、気づいたらいつもの癖でお兄ちゃんに助けを求めていました。成長しない自分自身に嫌気が差します。悔しくて悔しくて、涙の量が増えます。お兄ちゃんもこんな私なんて見捨ててしまうかもしれない、そう思うほどに今の私は惨めでした。


 ですが――



――『待たせたな!』――



 耳に入ってきたお兄ちゃんの声。

 その声にハッとして涙を拭って見ると、僅かに歪んだ視界の中に大きく仰け反って床に倒れ込むと呼ばれた人物が入ってきました。その視界の端には――


「お兄ちゃん!」


 お兄ちゃんです! お兄ちゃんがいました! 私がピンチになるとどんなところにでも駆けつけてくれる、私にとっての正義のヒーロー。……私はもう成長できる気がしません。


 お兄ちゃんの一撃を食らってはノックアウトしたみたいです。笹川さんはそんなの元に駆け寄って起こそうと必死でした。

 そんな二人を横目にお兄ちゃんは私の手を縛っていた縄を解いて、言ってくれました。


「悪いな。一人にしちまって」

「ううん! お兄ちゃんは悪くないよ! お兄ちゃんはいつだって私を守ってくれるから!」


 感極まって抱きつこうとした私ですが、お兄ちゃんに制されました。……むぅ、どうして……。不満に思っていたら、お兄ちゃんはポケットから突如としてハンカチを取り出します。そしてそれを私の額に当ててきました。私はいつの間にか出血していたみたいです。お兄ちゃんは優しく手当てをしてくれました。

 もうホント、すごくいいお兄ちゃんです。



 私は感動していたのですが、なんかよくわからない男の子に水を差されます。


「たたたた、助けに来たぞ、御鏡――って、あれ!? なななな、なんで!?」


 扉の向こうからやってきたのは小太りの男の子。――あ。思い出しました。この人だった気がします。私たちを眠らせたのは。


「なんでも何も……。兄が助けてくれたので」

「っ!? また良綺ラキかよぉおおおお! なななな、なんであいつはいなくなってまで……! こ、ここは、ぼぼぼぼ、僕が華麗に助けるっていうプランだったのにっ!」

「……なんですか、それ。眠らせたのあなたですよね? 覚えてますよ? マッチポンプじゃないですか、これ……」

「――っ!?」


 私が「兄が助けてくれた」と教えると、その男の子は絶叫します。そしてぽろっと口を滑らせました。

 私たちを眠らせ、私だけを閉じ込めて、ピンチになった私を助けることで私の好感度を稼ぐ――あまりにも酷い自作自演に思わず指摘すると、その人は魂が抜け出たみたいに力なく座り込みました。……まあ、たとえばれずに成功していたとしても私は兄一筋なのでなびかないのですが。


 兎に角、今日は嫌な思い出をお兄ちゃんとの時間を目いっぱい楽しむことで上書きしようと心に決めました。


「帰ろ? お兄ちゃんっ」

「ああ。そうだな――って、あの人は? たぶん、あの人はただ巻き込まれただけだよな? ちょっと待ってろ」


 そう言って、お兄ちゃんは謎の女性の元へと寄っていき、縛っていた縄を解きました。お兄ちゃんは本当に優しい人です。その優しさは自慢なのですが、私だけに向いてくれないことが少し、少しだけ不満でした。


 お兄ちゃんに助けられた女性が私に向かって言います。


「ありがとう。助かったわ。まさか懐かしい顔にあったと思ったら、いきなり眠らされてこんなところに閉じ込められるなんてね。私は雛菱くんの初恋の相手らしいのだけど、彼はいったいどこで拗れてしまったのかしら?」


 謎の女性はふうっと深い溜息をついて、顔以外を丸出しにして伏している男の人の方へ視線を向けました。

 女性の言葉を受けて、お兄ちゃんが男性の顔の近くでしゃがみ込み、その覆面を剥ぎ取ります。


「……マジかよ。こいつ、雛菱だ……」


 雛菱というと、臨時のクラス担任だったはずです。教師がよもやこんなことを……。私も溜息が出ました。

 ちなみに私は顔を覚えていなかったので、お兄ちゃんが確かめてくれて助かりました。それを見越して率先して動いてくれたのかもしれません。


 それにしてもひどい状況ですね。気絶した変態教師に、それに縋りついて泣きじゃくる女子生徒、部屋の入口付近には放心している男子生徒。こんな空間にいるのは気分が悪いです。

 私はお兄ちゃんに再度「帰ろう」と言って扉の方へと向かいましたが、手を掛ける前に謎の女性に呼び止められました。


「ひ、一つ確認しておきたいことがあるの! あなた、もしかして御鏡美綺さん? 三年前、身元不明遺体の事件現場の○○中学校にいた……!」


 彼女が何を言っているのか、何を言いたいのかが私にはわかりませんでした。それはお兄ちゃんも一緒だったようで、私の前に立って彼女に返しました。


「……なんのことだかわからないな。確かに三年前って言ったら俺たちは○○中学の二年だったが、



――ぞ?――」



 お兄ちゃんの言う通り、私たちが通っていた中学校でそんな物騒な事件は。この人は何か勘違いしているのでしょうか? 思い込みが激しいのでは? と少し警戒してしまいます。

 お兄ちゃんの言葉と私の態度が引っ掛かったようで、女性は呟きました。


「……そう。聞いたことがない、ではなく、そんなものはというのね……」


 彼女は届くような声を出していなかったというのに、その囁きは私たちの、私の耳にいやに響いてきて――


「ちなみに私は○○警察署の冬城っていうの。その事件を担当していたわ。事件の資料もしっかり残ってる。だから、なかったなんてことは絶対にないのよ。最重要参考人だった御鏡美綺さん」


「やめて」


「当時、あなたは十三歳だったから罪には問われない立場だったわけだけど、いろいろと調べさせてもらったわ。そうしてわかったことは、まず、身元不明の遺体なのだけれど、鑑定をしたら性別は男性、血液型はAB型であること――」


「聞きたくない」


「あなたのお兄さんもAB型だったわよね? そして、事件の日から行方不明になっている。それってつまり――」


「やめろっつってんだろうがぁっ!」


 私は――いや、俺は、声を荒げていた。


「俺は生きてる! 事件なんてなかった! 何も変わったことなんて起きちゃいねぇんだよ! ――私も証言します! お兄ちゃんはずっと私の傍にいます! 行方不明になんてなっていません!」


 私たちはずっと一緒にいる。この三年間ずっと一緒に。

 今だって、俺がいなかったら私は助からなかった。

 覆面男に頭突きをかまして、縄を無理やり引っ張って緩めて――


 ……………………あれ?



――お兄ちゃん、いなくない?――



 あ、ああ、ああああああああっ!

 お兄ちゃんがいない! お兄ちゃんがいない! お兄ちゃんがいない! お兄ちゃんがいない!


「ち、ちょっと! いきなり頭抱え込んでどうしたの!? 大丈夫!?」


 ああ、お兄ちゃん! ああああ、いない! ああああああああ、お兄ちゃん! ああああああああああああああああっ!


「う、うわああああ! け、警察が三年前のこと調べてる! 死んだのが良綺だって気づいてる! もうお仕舞いだああああ!」

「え!? は!? ちょっと! ど、どうなってるのよ! 小太りの子が走って出て行っちゃったんだけど!? なんか気になることも言ってたわよね!? でも、今はそれどころじゃ……!」


 お兄ちゃんどこ!? 返事して! ねえ、お兄ちゃん! お兄ちゃんっ! いるんでしょ!? いるんだよね!? わ、わかってるんだから! 隠れてないで出てきてよ! ねえ! ねえってばぁ!


「節分が飛び出していったから何事かと思って着てみたっスけど、正解だったっスね。ヒドい有様っスね、こりゃ。まあ、このままじゃ、ウチも危ないんで証拠隠滅ってことで」


――かはっ――


 い、痛い? 背中が痛くて熱い……っ。ど、どうなって……?


「ち、ちょっと! 何をしているの、あなた! 私は警察よ!? 両手を上げなさい!」

「ちょっ!? なんで警察がいるんすか!? ……雛菱こいつの仕業っすね? まぁためんどくさいことをぉ……。まあ、見たとこ一人だし武器も持ってないみたいっスから、こいつもやっちゃえば問題ないっスよね?」

「!? なんで刃物を持って近づいてくるのよ!? 私、警察だって言ってるでしょ!?」


 ……ああ、どうも刺されたみたいですね、私。犯人は、声からしてあのキツネ顔の人、でしょうか? 話が出てこないって思ったら、まさか、こんなことを……っ。


 ……うう。痛い。熱い……。誰か、助けて……。お兄ちゃん……っ。


 ……いや、もう、お兄ちゃんはいないんだった……。


 ……じゃあ、もう……――



 私の意識はここで切れた。

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