68.解呪し放題

「あ、宝箱だぁ!!」


 ディアーネが声を上げて宝箱に近寄っていく。

 魔境の宝箱には罠はなく、鍵もかかっていない。

 ただし宝箱の姿をしたミミックであったり、中身の宝物が呪われていたりすることはあるのだけど。


 どうやらミミックではなかったようで、宝箱を開けたディアーネは大きな宝石のついた首飾りを手にしていた。


「わ、凄い宝石だよ!!」


「はいはい。まずは鑑定ね」


「はーい。レイシア、お願い」


 差し出された首飾りを受け取り、スキルセットを回復特化に変更する。


「〈アナライズ〉」


《緋蓮の首飾り 装飾品 レアリティ15 炎無効 [呪]スタン》


 おお、強い。

 強いが呪われている。


「ね、ね、どうだった?」


「炎無効の首飾り。だけど呪われているね」


「わあ、凄い。中位属性の無効ってなかなか出ないよねー!!」


「そうだね。――〈エヴァンゲル〉」


 俺は首飾りの呪いを解いた。

 どうやら呪いを解く〈エヴァンゲル〉は失伝しているらしく、基本的に呪われたアイテムは神殿に無償で渡され、封印処置をされて放置らしい。


 ……なんともったいない。


 俺たちは当然のことながら、呪いを解けることを秘密にして宝箱から入手したアイテムで装備を充実させてきた。

 換金用のアイテムでも呪われていたら二束三文にもならないから、収入面でも大きく稼げている。


「さて……この首飾りは誰が装備しようか?」


「はいはいはーい!! 私が欲しいでーす!!」


 アリサとマーシャさんは苦笑しながら、「拙者はよいのでディアーネが装備するとよいでござるよ」「後衛より前衛の防御力が大事よね」とあっさりとディアーネのものになった。

 〈盾・かばう〉があるという面から言っても、この手の耐性のある装飾品はディアーネに装備させるべきだろう。


 魔境に潜って数日。

 宝箱の数はそれなりにあるのだが、半分以上、いや八割は呪われているアイテムが入っているのは悪意を感じる。

 ゆえに装備をポンポン更新している俺たちは割りと目立ってしまっていた。


 まあそれも『妖精の友』ゆえに幸運に恵まれている、というディアーネの堂々とした嘘が信じられているお陰で、俺が解呪していることはバレていない。

 俺たち自身も順調に強くなっているが、装備も店売りのものでなく、魔境の宝箱産のマジックアイテムで武装し始めていたから手がつけられない。


 ディアーネは雷属性の付与されたレアリティ17を誇る雷光剣を持ち、不要な装備品を売却したお金で買ったレアリティ10の魔法のラウンドシールドを持っている。

 鎧に至っては物理ダメージを大幅にカットするレアリティ20の聖鎧スタープレートという重装備。


 アリサはアリサでレアリティ15の霊刀風神天駆という風属性の刀を愛用している。

 なんと納刀状態での移動速度が爆速になるという特殊効果がついている一品である。


 マーシャさんの弓はレアリティ18の魔弓ミスティックレイザー。

 闇属性が付与された弓で、矢が命中すれば低確率ながらランダムな状態異常を付与するという極悪仕様。

 〈百発百中〉のお陰で命中はするわけで、後は運次第というわけ。


 俺のショートロッドは長柄の杖に変わった。

 その名も氷杖ダイヤモンドフロスト、レアリティは15ながら氷属性の攻撃魔法の威力を大幅に上昇させる一品だ。

 下位属性の攻撃魔法は今後リストラする予定なので、消費MPゼロの〈アイスボルト〉を強化できるのは嬉しい。


 その他、耐性を上げる装飾品やら能力値を上げる装飾品などなど。

 俺たちの戦力は急速に向上していた。

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