34.最上級クラスにチェンジだ!!

 キマイラを倒して何が美味しいって、金銭よりSPだ。

 遂に【大魔術師】アークメイジの上、最上級に位置するクラスの証を入手できた。


 〈魔法使いの証〉の習得。

 コツコツと一ヶ月、SPを貯めてきたが、キマイラ討伐でお釣りが出るほどSPを稼げたのだ。

 【魔法使い】ウィザード【魔術師】メイジ【大魔術師】アークメイジに連なる正当進化ルートのクラスで、上位属性を操る。

 上位属性とはすなわち光属性と闇属性だ。

 どちらも癖が強いものの、強力な魔法が揃っている。

 さあ、クラスチェンジしよう。


 まずは初期で習得できる魔法の選択だ。

 消費SPゼロで習得できるのは、光属性の攻撃魔法〈レイ〉か闇属性のデバフ魔法〈グラビティ〉の二択。

 どちらも強いが、最初に習得するならやっぱり〈レイ〉だろう。

 最上級クラスの攻撃魔法、消費MPは三点――〈MP軽減〉で二点だ――というコスパの悪さを補って余りある攻撃力が魅力的である。


 さて俺がクラスチェンジしたということは、ディアーネもクラスチェンジしている可能性が高い。

 【剣士】フェンサーの上ということは、【剣聖】エクスカリバーになるはずだが。


 メニュー画面がないので分からないのがもどかしい。

 そう言えば、故郷の森のフェアリーサークルは無くなってしまっていたから、あれからフェイには会えず仕舞いだ。

 できればディアーネにもアイテム袋を与えて欲しいのだが。


 おっとまだSPがそれなりにある。

 しかし目当てのスキルもあることだし、貯蓄に励むとしようか。



 休日を挟んで冒険の日。

 銅ランクになってから初めての依頼だ。

 もちろん狙うは討伐依頼。

 ゴブリン以外の討伐依頼を堂々と受けられるようになったので、成功報酬が美味しい。


 ……もちろん、本命はSPだけど。


 今のところ、俺のビルドは何の捻りもない【魔術師】メイジ一直線型だ。

 『トゥエルブ』ならば序盤も序盤、コンボを組めるほどSPがなく、他のクラスのスキルを習得している余裕がない状況。

 ひとまずそれでも、この世界では通用することが分かったのは大きいけど、『トゥエルブ』の奥深さを知っている俺からすればフラストレーションの貯まる現状だと言える。


 とはいえ無茶をして命を落とすのは論外だ。

 この世界では死んでもやり直すことはできない上に、後遺症の残るような怪我をしてもやはり戦えなくなるのだから。


 さて依頼だが、クリムゾングリズリーの討伐依頼に決めた。

 クリムゾングリズリーは、いわゆる属性耐性もちの熊系魔物の中位属性版だ。

 炎属性に耐性を持っているが、俺たちには関係ない。

 ただベアと違ってさらにフィジカルが強くなっているので、狩ろうとするとディアーネが危険に晒される。

 ともあれ、勝算はもちろんあるのだが。


 領都から少し離れた農村に、クリムゾングリズリーが出現して作物を荒らしているという。

 だから今回は少し遠出になる上、泊りがけだ。


 先方の農村も十歳の女の子ふたりが来るとは思ってもみないだろうが、胸元に吊るしたこの銅の冒険者タグを見れば実力は察してもらえるだろう。


 さて道中、試しておきたいことがあるので、ディアーネに素振りを頼んだ。

 もしも【剣聖】エクスカリバーになっているなら、恐らく初期スキルで〈剣・斬撃Ⅲ〉を習得しているはず。


「素振り? いいけど……」


「できれば、斬撃の三連撃が見たいな」


「ええ!? できるかなあ……」


 アイテム袋に入っている木剣を出して、その辺の木に目掛けて斬撃を試してもらう。


「じゃあやるだけやってみるね。――せぇい!!」


 いち、にい、――さん!!

 よし、しっかり火花のようなダメージエフェクトが確認できた。

 これは確実に〈剣・斬撃Ⅲ〉を習得している。


「うわわ、できちゃったかも」


「うん。できてたね。おめでとう」


「うわぁ、嬉しいな。斬撃だけで三回も斬れるなんて……」


 ちなみに三連撃の後に〈剣・刺突〉には繋げられないので注意だ。

 連撃数では変わらないが、〈剣・刺突〉は足を止めなければ放てないリスクがある。

 それに比べて〈剣・斬撃Ⅲ〉は動きながらでも放てるため、こちらの方が応用性に勝る。

 しかし待てよ。そうすると……。


 今のディアーネのスキル構成は、〈剣・斬撃〉〈剣・斬撃Ⅱ〉〈剣・斬撃Ⅲ〉〈剣・刺突〉〈剣・刺突Ⅱ〉〈スウェイバック〉〈バックステップ〉〈サイドステップ〉だ。

 アクションスキルがやっつ。

 つまりこれ以上の攻撃力を得るためには、何かを切り捨てる必要がある。

 〈スウェイバック〉は予備動作が少なく優秀な回避スキルだ。

 また相手から距離を取れる〈バックステップ〉も捨てがたい。

 横へ移動する回避スキルである〈サイドステップ〉も移動の自由度を上げるのに欲しい。

 このみっつがディアーネの防御力の要だから、このみっつのスキルを捨てる選択肢はない。


 そうなると、捨てるべきは自ずと決まってくる。


「ディアーネ。今日から刺突は禁止ね」


「え? なんで?」


「斬撃の方が応用性が高くて、ディアーネに合っているから。刺突の連打も強いけど、足を止めないといけないでしょ? だからこれからは三回まで繋げられる斬撃だけで戦って欲しい」


「うーん、それもそうかも? ……分かった。刺突は使わないで戦ってみるね」


 よし、これで次のアクションスキル習得時に〈剣・刺突〉〈剣・刺突Ⅱ〉が外れれば当たりだ。

 なにせ【剣聖】エクスカリバーにはまだ〈剣・斬撃Ⅳ〉と〈剣・斬撃Ⅴ〉が控えているのだから。


 ◆


《名前 レイシア 年齢 10 性別 女

 クラス 【魔法使い】ウィザード

 パッシブスキル

 〈MP軽減〉

 〈凍結付与〉

 〈高速詠唱〉

 アクションスキル

 〈ストーンハンマー〉

 〈ウォータースピア〉

 〈ウィンドカッター〉

 〈アイスボルト〉

 〈ブリザード〉

 〈レイ〉

 〈ヒーリング〉

 控えスキル

 〈農民の証〉

 〈大魔術師の証〉

 〈魔法使いの証〉

 〈農業Ⅰ〉

 〈槍・刺突〉

 〈投石〉

 》

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