3.石を投げ続ける少女

 森へ入ってはならない、と両親を含めた大人たちからは口酸っぱくして言われていた。

 なぜなら、森には危険が一杯だから。


 野生動物はもちろんのこと、魔物なんかと遭遇したときには命が幾つあっても足りない。

 森は【斥候】スカウト【鷹匠】ハンターの縄張りだ。

 そう、クラスはちゃんとある。

 確認する方法がないだけで、弓を扱える【斥候】スカウトや、弓の扱いに加えて鷹を飼いならすことができる【鷹匠】ハンターの存在。

 少なくとも、このふたつのクラスに関しては存在は確定しているのだ。

 どうやってなるのかは不明だけど。


 俺はひとまず森に入っても死なないように準備をすることにした。

 具体的には、どんなクラスに就いていても習得可能な、ノービススキルで戦うことにした。


 ノービススキルには〈投石〉という攻撃スキルがある。

 MPの尽きた魔法使い系が最後に縋る、もしくはMPを節約するためにやむなく使うスキルである。

 中盤になればMP回復手段などが充実してくるので、〈投石〉をセットする必要はなくなるのだが、序盤は割りとお世話になるスキルだ。


 これはひたすら石を投げることで習得できる。

 消費SPはゼロ。

 ただし訓練場での話だ。

 このド田舎の農村に訓練場などないから、訓練場以外でも〈投石〉を習得できることに賭けることになるが……。


 メニュー画面なしで【斥候】スカウト【鷹匠】ハンターになれる人たちがいるのだ。

 訓練場なしでノービススキルの習得くらい、できないはずはない。


 俺はその日から、密かに〈投石〉の練習を始めた。



 ガッ!!


 石が木にぶつかったとき、火花に似たエフェクトが発生した。

 これは〈投石〉スキルによってダメージが発生した証である。

 無事に〈投石〉を習得できたようだ。

 習得に三日もかかってしまったが。


 どうやらゲームで十分程度で習得できた〈投石〉は、この世界では習得に三日を要するらしい。

 今後が思いやられるが、ともかく戦う手段は得た。


 後はこっそりと森に入り、妖精を探し出す。

 妖精はフェアリーサークルと呼ばれるキノコが円状に群生している場所で、呼びかけることで現れる。

 これはゲーム『トゥエルブ』でそうだったから、きっとこの世界でもそうだろう。


 そうでなかったら非常に困るが、まずは森の中でフェアリーサークルを見つけるところからだ。

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