お話を伺って(プラナリアさん)

 今回のインタビューは紆余曲折したインタビューでした orz(いつも紆余曲折はしてるんですが……)。

 いつもどおりの質問だと、上滑りになってしまうな……と感じたので、私が読んだ印象や分析などを語りながら進めさせていただいたのですが、なんか語り過ぎてるよな、とはインタビュー中から思ってました。まあ、でも後で編集すればいいか、と考えていたのですがとんでもない! 自分の分を削除すると、プラナリアさんのお答えがチンプンカンプンになってしまう! ということで、私のうだうだと長い文章をそのまま残すことになりました。プラナリアさんのことだけ知りたいファンの皆様には申し訳ないことです。

 しかも、深堀りし過ぎたせいで、たくさんのことが伺えず……。いつもどんなときに書いていらっしゃるのかとか、インスピレーションとか、『顕微鏡』のほかの人物についても伺いたかったんですが、あまりに長くなるので、内容としてはちょっと中途半端なインタビューになってしまいました。


 逆に深堀りしたことで個人的に良かったなと感じたことは、中学生という時期に焦点を当てたジュブナイル小説とも読める『顕微鏡』という作品が、その括りだけではなく、個人の人生にわたり「私とは何者なのか」という根源的な質問を問いかけていることを導き出せた点かなと思います。

 人は個人でだけでは存在できず、必ず社会とのつながりの中で育ち、外界や他人を理解し、それに照らし合わせて自己像を作り上げていきますが、周りから投げかけられる自己像が否定的であったり、期待されるものとは異なっていることが示唆されたりした場合に、私達はどのように反応すればいいのでしょうか。そのことに傷つきながらも、社会生活を送り続けるために傷ついていないふりをしたり、自分が悪いのだと思ったり、社会との関わりは命綱なのだと本能的に理解しているからこそ、それに迎合するために自分のあり方に蓋をしてしまう。残念ながらそこには力関係が存在し、人間の心理はそれを敏感に感知し、安全な立場を得たり、維持したりするために己の最もよく知る方法でその力関係を利用します。それは、いじめにつながったり、一方が他者を搾取するような不健全な関係に収まってしまうこともあります。

 インタビューでは触れることができませんでしたが、体が弱くて学校の行事に参加できない千津の負担を引き受けようとする泉に、桜木さんという女の子が「千津は自分の面倒を見られるようになるべきだし、できないことはするべきではない、そして、それは他人が手を貸すことではない」と正論を持ち出します。端から見ると、桜木さんは厳しいことを言っているのだけれど、実は桜木さん自身も同じようなことを家庭で求められているらしい、という言及があります(『陶器』)。このエピソードは、人をその側面だけで見るのではなく、その人の置かれた立場を含めて書かれていて実にプラナリアさんらしいと思わせるものでした。桜木さんにとっては、そのような考えを持つことによって彼女の家庭においての彼女の立場が安定するので、それを外の世界でも無意識に適用するわけですね。私たちは普段の生活の中で、自分が知る関係性を元に他の関係にも当てはめていこうとします。当てはめる関係は、個と個のものであっても、その先には社会が広がっている。そこで薄められた個に対して、私たちは他人を見、同時に自分を見る。

 この小説で語られる「顕微鏡」というモチーフは、この「見る-見られる」という関係を断ち切りたい真の気持ちを代弁しているとも考えられるし、同時にひたすらに自らを内省する象徴とも考えられるのではないでしょうか。そう考えると、『顕微鏡』とはなかなか深いタイトルだなと改めて思います。

 このほかにも、『命の流れ』のエピソードで、泉が、最近子供を産んだ年上の友人との会話で子供を持つこと、命を授かることを思春期の視点で捉えていて、同じテーマが最終話で泉自身の体験として語られるのが、プラナリアさんご自身がご自分のお子様たちに持つ視点と重なって、この小説の広がりを感じます。


 『顕微鏡』という小説は、中学生の泉が体験したこと、見たことが、繊細な言葉でモザイクのように散りばめられ、その言葉の一つひとつに私たちは遠い日の記憶(ええ……、私にとってはかなり遠い日の記憶でございます……)を揺さぶられます。と同時に、不安定だったあの頃は、燦めく宝石のような貴重な日々だったのだなあ、という気持ちにもさせられます。

 この繊細さと文章の美しさこそ、プラナリアさんの作品の真骨頂だなとつくづく思わされるインタビューでした。未読の方は、ぜひ、中学生だった自分に会いに『顕微鏡』を読んでいただきたいと思います。


 今回は、インタビューをするのに大変時間がかかってしまったのですが、辛抱強くお付き合いいただいたプラナリアさんには大変感謝しております。インタビュー中での作品完成おめでとうございました。そして、お忙しい中、お時間いただいてありがとうございました <(_ _)>

 これからの作品もぜひ楽しみにしております。

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