Q12: 「空白の島と、ハザマダ ブンガク」について

Q12

 「空白の島と、ハザマダ ブンガク」についてお聞きします。

(質問より語ってる部分のが長いんですが、ご容赦ください)

 これは不思議なお話ですよね。別れた彼、恭平の死を知って、彼の故郷の島を訪ねた玖美の前に突然、現れた謎のシルクハットの男、自称ブンガク。玖美の心を見透かせるブンガクと一緒に、玖美は恭平との日々を辿る旅をする。恭平の死の原因は何だったのか? 別れた自分のせいなのか?

 ブンガクは玖美を苛立たせることばかりを言う。ブンガクの言葉から生み出される、この焦燥感というか追い詰められる感じというかが、なんとも座りが悪いんだけれども、座りが悪いからこそ、その先を知って落ち着きたくなるという謎の読書欲を刺激する不思議な文です。そして、その焦燥感があるからこそ、最後に恭平の死の原因を知って、解き放たれて悲しむことができる……。フランス映画っぽい作りですよね。

<ここから質問>

 これは、どうなんでしょう。何か書きたかったテーマがあるんでしょうか。どんな風にこのお話が生まれてきたのか知りたいです。

 あ、あと、この玖美さんが自然な女性であるところが好きです。ステレオタイプに語ってしまいますが、男性が書く女性って、ときどき「こんな女いねーよ!」って感じのキャラがいるじゃないですか。(逆も然りですが。特に異世界令嬢モノで。)

 以前にコメントで、恭平が頼りなくて、玖美さんが男っぽい感じと仰っていましたが、いや、全然普通じゃないですか? と私は思います。ということで、女性を書く上で意識していることってありますか?



A12

 この話も小説講座に参加していたときのものです。

 その講座のとある参加者の方が、男女の機微を、ま~~超お上手に書かれていまして。それにムカついて(笑)「ワシも書いたろうやないか男女の機微をよぉ!」という経緯で書くことにしました。

 で、当時やってたあるゲームの舞台が小さな島だったので、「じゃあ島を舞台で」と。

 ……ふたを開けてみたらあんまり「男女の機微」でもないような……? まあいいか! あ、舞台はちゃんと島です(だから何)。



 書きたかったテーマは……というと、そんな経緯で書かれた作品なので(笑)何、と聞かれると絞るのが難しいのです……(大丈夫か)。

 あえていうなら「人の心はすれ違うけど、どうしたらいいんだろう?」「文学って何? 人って何?」

 もしかしたら書いた当時考えてたテーマとは違うかもしれません。


 というか、ハザマダ ブンガクという怪しいキャラクターが書きたかったのかな、と思います。……いや、男女の機微はどこ行ったんだよ!? 

 まあ、それは動機の半分であって。やはり主人公である女性の心の動きが書きたかったのです。



 次に、女性を自然に描くため意識していること、ですが。

 オイオイそんなの木下望太郎先生自身がバリバリのキャリアウーマンだからに決まってますわよオホホホホ……か、どうかはともかく、木下望太郎は年齢性別不詳の覆面文士なのです(そうだっけ?)。


 まあそんなことはどうでもいいとして、女性を描くときに意識していることは。

まず、お人形さんにならないように『怒るところは怒る』ということです。


 『何に対して、あるいはどうして』怒るのか――自分のどういうところに対して、他人のどういう言動に対して? 

誰だってそりゃ怒るよ、ということもあれば、その人独自の怒りポイントもあると思います。


 『どんな風に』怒るのか――怒る=キレる、ではない。

 足踏みをする、腕組みをして指で腕をトントン叩く、意味もなく持物を整理する、誰もいない方を向いてすげぇ嫌な顔をする、あるいは怒っていることをはっきり伝える……色々だと思います。

 何にどう怒るのかは、その登場人物の個性がはっきり出るところだと思います。


 そして(実はさっき言ったことも含まれますが)『その人物の中に入って、その人の目で世界を見てみる』。

 要は『自分がそのキャラだったらどう感じて、どう行動するか』。


 人は他人のことは分からないけど、自分のことは結構分かるのです。なので、「自分がそのキャラの性別で、容姿で、体格で、その環境で生きてきたら」「どう感じる? どんな表情、どんな所作が出る? どう話してどう行動する?」とイメージしてみる……というのを適宜いろんなキャラにやっていく。


 ……書いてみると割と普通のことですね。皆さんも無意識にやっていると思います。

 余談ですが、二次創作でこれをやるとすっごい楽しいです(笑)。

 某競走馬擬人化ゲームの二次創作で、明るいナルシストのキャラの話を書いたことがあるんですが。

 その子の目から世界を見るので……もう見るもの全てが美しい(笑)。美しい世界! そしてもっと美しいボク! 友の辛辣なツッコミも機知に富んだエスプリとして受け入れる余裕のあるボク! そんなエスプリを投げかけることのできる賢い友! という感じで……全てを肯定的に見るという新鮮な体験ができました(笑)。

 ……その話の中でやったことは「ちょっと走ってジュースを飲む」とか「皆で非常袋を作る」とかでしたが。それなのに全てが美しく見える……キャラクターの持つ力は偉大だなあ、と思います。




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