叔父編
結局あの後、安立は外に出かけられなくなった。
看病は私と七海でしているが、本格的にインフルエンザだったようで――昨日は熱が上がったばかりで病院に行ったため、インフルエンザの診断が出なかったのだが、今日行ってみたら出たらしい――本日会えなくノックダウン。
二階に寝ていると言うわけだ。
どうしてこうなるんだろうと頭を抱えていると、翔太がやってきた。
警察署がインフルエンザの流行で大変だと聞いて、お見舞いに来てくれたらしい。
「と言っても、叔父の凌士さんはなってないんだけどね」
「あ、何だ、そっすか!てっきり叔父さんもなっちまったのかと思ってましたよ」
「本当だよねえ。結局ね、同僚で相棒の安立さんがなっちゃってるんだ。だから面倒見てるんだけど、凄い熱なの。だから私も面倒見てるの。だから移るかもしれないから早く帰って欲しいな。ごめんね?」
「マジすか。それは大変ですね。何か必要なもんとかあります?」
「うーん、一応凌士さんが買ってくるって言ってたから大丈夫だと思う。気遣い有難うね」
正直言って助かる気づかいには有難うと言うよりほかない。
ちょうど休みの日だと言うのに、まさかの状態である。
午前には凛と天寺が来てくれたが、二人もインフルエンザの流行と言うことで帰って貰ったのだ。
今日来ていないいつもの面子と言ったら、後は加藤位だ。
加藤もインフルエンザらしいから、相当流行していると言える。
「本当にごめんね。来てくれて嬉しかったよ。また服、作りあおうね!」
「はいっす!」
七海に呼ばれて中に入ると、トイレに起きてきた安立がふらふらと彷徨っている。
どうしたのかと慌ててマスクをして駆けよれば、汗を流したいんだけどと言われる。
相当べたつくから分からなくはないのだけれど……
仕方ないので、濡れタオルで拭くからと言って、自室に戻らせた。
水をはった桶を持って二階に上がると、そこでは上半身を脱いで裸になっている安立が居て――思わず桶を取り落としそうになった。
何をしていると言いたかったけれど、普通に身体を拭くのだから当然服を脱ぐのはある行為で。
何でこんなにドキドキするのかと思い、手早くその上半身を拭いてしまうと、下半身は自分で拭いてくれと、新しい濡れタオルと、乾いたタオルを渡した。
そして彼にあてがった部屋から出て行くと、嘆息を吐き出す。
何だか妙に疲れた。
藤原が帰宅すると、安立がようやく熱が下がったとマスクをかけて階下へと下りて来る。
確かに熱を測ると7.8度。
元の40度台に比べれば圧倒的に熱が下がったと言える。
ただ、インフルエンザの間はここで面倒を見るらしいので、暫く安立とも顔を合わせることになるのだが。
はあ、何でこんなことに。
叔父の晩酌に付き合っていると、安立が酒を飲みたいと駄々をこねだす。
どうせ休まないといけないんだからいいだろうと言う事だそうだ。
だが、まだ病み上がりである。
無理をさせるわけにはいかないので、部屋に戻らせた。
「すまんな。俺の面倒に七海の面倒も有るのに」
「全然。ですけど安立さん大変です。体調が戻っても寝っぱなしだったから身体が動かないでしょうし。インフルエンザは辛いですからね。教室でも結構な流行具合でして………」
もう休みが一杯なんですよというと、叔父はくっと喉の奥で笑うのだった。
「嫁に来てくれとは言えないが、このまま一緒にこうして暮らしたいな」
「………うん」
それは、盛大な勇気を使って出た一語だった。
Yes、それは叔父にしてみれば、相当な言葉だったのだろう。
私の顔を覗き込んできて言う。
「いいのか?お前、俺で本当にいいのか?」
「いいですよ。でも、そう言うのはなしです。私一緒に住みたいとは思うけど、それだけですからね!」
最低限のルールを設けて×××はこの話は終わりと切り上げるのだった。
「あーあ、もう、こうなったら告白受けたの全部断らないとなあ」
「なんだ、誰から受けた。俺から何か言ってやろうか?怖い叔父をやってやるぞ」
「父親ヅラしないでくださいよ。 恋人にもなれない身の上何だから」
「何言ってる。恋人にはなれるだろ? ただ、結婚が出来ないだけだ」
「分かってますけど……」
それは分かってるけれど、それは違うと言う×××。
実際には分かってるのだ、狭い田舎だ、妙な事は出来ないと分かっているから恋人何て出来ないと言う。
それを分かっていて二人は言う。
ただ、どうしようもなくこの時間が愛しくて。
そしてどうしようもなく優しくて。
「好きですよ、凌士さん」
「分かってる」
ぶっきらぼうな言葉が嬉しかった。
*****
と言うことで叔父編でした。
キーワードが叔父と姪でワンチャンだったので最終的にこうなりました。
楽しんでいただけましたら幸いです(*´▽`*)
叔父と姪 ゆう/月森ゆう @benikake
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。叔父と姪の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます