リクエスト凛編からの急患

 告白を受けてしまった、それも天寺の兄幹彦にもだ。

 ええと、安立に、翔太に、幹彦で三人も?

 ナニコレモテ期?


 慎重に答えないとと思い、皆保留にしてあるようなもの。

 どうしたらいいんだろう?

 だって皆真剣だった。

 おふざけだと思ってた翔太も真剣だったし、嘘じゃ無いのは分かった。

 けれど――まさか三人同時ってどうしたらいいんだろう?


 まさかまさかで、保留している間にまさかモテ期だからって新しい人が来るとは思わなかったんだ。



 *****



「あのさ、×××ちゃん」


「うん、何凛?」


 名字で人の事を呼ぶけれど、凛だけは凛と呼んでほしいと言われていたから凛としたの名前で呼んでいた。

 事実、田中凛以外に田中君がいたから仕方ないとも言えて――だから凛呼びをしていたのもあった。

 けれど、特別になりたくてだったと言われれば、思わず息がつまった。


「好き、何だよ、ほんとに」


「え、だってそんな」


 嘘でしょう?

 女の子同士だからダメとかこのご時世だし言わないけれど、だけどまさか凛まで本気だった何て思わなくて、二人きりで帰りたいと言われれば思った。

 このタイミングで言われるなんて、と。


 まさかのまさかだったから、思わずタイミングが凄いねと言ってしまった。


「へ?あれ?気持ち悪いとかじゃなくて?」


「ううん、本気だったんだなって思ったからと言うか。分かったから、別に。ただ、皆タイミングとしてはちょうど同じくらいに言ってきてて」


「アー………この間の幹彦か。あいつ、俺が先だからって言ってたんだけど、譲ってやったのに、何か勝ち誇った顔してやがるんだ。むっかつくでやんの」


「へえ。彼そんな人なの?」


「そ。いっつも由紀乃とベタベタしてるかと思えば、唐突に由紀乃は俺の方が好きだからとか言って来たりね。するわけよ」


 何か勝ち誇ってる顔があたしにはデフォだよと言われ、何かいやだなと思ってしまった。

 凛はもしも付き合わなかった場合、良い友人関係を築いていきたいから、だからその凛の嫌がる人は彼氏にはしたくない。

 そんな風に思っていれば、凛が、まあこれでイーブン、皆同じスタートラインっしょと言う。


 確かに、皆告白したスタートラインに立ってるんじゃないかなと思った。


「ごめんね凛。私凄く普通に、冗談だと思ってて」


 御免と繰り返せば、良いって、遊び半分みたいに言っちゃったあたしが悪いと言う凛。

 そもそも凛は私のどこが好きになったのだろう?

 訊ねてみれば一目ぼれだと言われた。


「最初はキレーな子だなあって思って、その後真剣な表情して色んなことに打ち込んでる姿見て、ひとめぼれしたの。何ていうか女の子にだったから、あたしも相当おかしいかもって悩んだけど、でも、普通に好きなんだって気が付いたから。かな」


 おかしい?と言われ、ううんと返す。

 だってそれはとても優しい声だったから、おかしい何て言えなかったし言えようはずも無かった。

 でも、×××には言えない一言があった。

 気持ち悪いとか思わないけれど、同性愛何て駄目だとは思わないけれど、ただひたすらに、彼の事が気になっているのだ。


 だから、御免と答えれば、何だ、告白されて好きになっちゃった子がいるんだねと言われた。


「うん。ごめん、もう少し早くに本気だって分かってたら良かったんだけど。ごめんね」


「ううんいいの。教えてくれてアリガト。でも、心なしか晴れ晴れしてる。あのさ、最後に一つだけお願い。聞いてくれる?」


「いいよ。何でもは駄目だけど、些細な事だったら叶えるよ」


 じゃあ、と言われ×××の耳に口を近づける凛。

 凛は――



 *****



 帰宅するとそこには何故か七海と安立が居て、叔父が早くに帰ってきていると言う事だった。

 じゃあ何故安立が居るのだろうと思っていれば、安立もそうだったようで、今日は体調悪いんで、連れて来られましたあと言うのだ。


「何で僕がこんなところ居るかなんて、僕の方が知りたいよ」


「はあ?熱………駄目じゃないですか、二階に上がれます?」


「上がれるよお。それより連れて来られても僕どうしたらいいのか」


「兎に角寝てください。服はパジャマもってきてます?」


「服一式は三日分持ってきてる。明日用事あるから頑張って治します」


「そうしてください。兎に角二階上がってくださいね。御粥作ってスポーツドリンク持っていくので!」


 何でこんなことになってるんだと思うけれど、致し方ない。

 叔父は、体調崩して助けてって連絡があったから連れてきたんだと言う。

 それは良いけれど、どうせ面倒見るのはわたしなのに、何で私に連絡くれないんですかと言ってしまう。


「まあそうなんだろうが、こっちもこっちで異常事態なんだ。皆風邪で休んでるんだよ」


「え、職場の皆ですか?」


「インフルエンザって風邪だ」


「風邪じゃないじゃないですか!」


「だから連れてきた。このまま行くと一人でぶっ倒れて死にそうでな。済まんが面倒見てやってくれ。俺は他の休んでる奴のところに見舞に行ってくる」


「お願いします!行ってらっしゃい! ああでもほんとに気を付けてくださいね!それと、凌士さんは凌士さんで病気貰わないようにマスクして会ってきてくださいね」


「おお、分かったよ。アリガトな」


 頭を撫でられてくすぐったくて首を竦めると、安立がゲフゲホと大きな咳をしたので、慌てて二階に連れて行く。

 階段が狭いので、後ろから追いかける形で二階の一室に押し込むと、そこで加湿器を自身の部屋から持ってきてかけてやる。

 部屋を暖めるために自分の部屋からストーブまでもってきてやると、あったかあいと嬉しそうだ。


 困ったなと思う。

 どうして一人お付き合いを断った日に限って、断った原因を作った大人たちに会ってしまうのか。

 (まあ実際は翔太と幹彦もだが)

 今日は二人とも合わないと思ってたのに――!!


 叔父にも安立にも本当は会いたくなかった。

 だって二人とも好きを全面に出してくるから、子供の好きより余程たちが悪いのだ。

 なのにこんな弱った所を見せられて、困ってしまう。

 拒絶が出来ない。


 額に冷やしたタオルを置いて、汗をぬぐってやると、気持ちよさげにしていた安立。

 御粥を作って食べさせれば嬉しいと美味しそうに食べている。

 味が分かるのだから相当体力がある方なのだろう、元気だから明日には大丈夫そうだなと思えば、インフルエンザだから一週間ここにお世話になりますと言う。

 ちょっと待って、私そんなの聞いてない。


「兎に角、早く良くなってください。じゃないと拒絶も出来やしない」


「おねーちゃんどうしたの?」


「んーん、大人ってずるいんだよってこと」


 いいや、病人だから今回はずるくはないんだけれど、でもずるいのだ。

 ずるくなかったら、いけない。




 *****

 モテ期です(*´▽`*)

 そして凛はふられてしまいました。

 元から凛はタイミングが悪かった感じですけれど、最初にまともに告白して入ればワンチャンあったかもしれません。

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