リクエスト安立編 後編
*****
「ふあー、凄い豪勢な食卓!いっつも藤原さんこんなの食べてるの?一汁三菜って奴じゃん」
「汁ものは今回無いですけど、欲しかったですか?」
昨日作ったポトフを冷蔵庫から出して見せると、揃ったと何が楽しいのかケラケラ笑い出す安立。
肉じゃがに鮭のムニエルに、酢漬けをいくつか出してやると、豪勢で嬉しいと泣きそうとまで言ってくれるのでこちらも嬉しくなってにやけてしまった。
「今日はお客様居るから特別でもあるんですから、たんと食べて帰ってくださいね」
「え?藤原さんに連絡したらさっき、泊まっていけって言ってたよ?」
「七海が言ったの!とまっていってほしいなあって。そしたらお父さんもとまってけっていってた!」
そう言われ、思わず安立を凝視してしまう。
え、泊まっていくの?
先日の一件を思い出す。
顔に熱が集まってきた。
「どうかした?」
ニヤニヤと厭らしく笑う安立に、何でもないです!と言ってそっぽを向いた。
食事の席ではからかってこなかったけれど、美味しいと何度も褒めてくれて、嬉しくなった。
だから作ったシロップも出して、梅酒も出して、安立に渡す。
「え、梅酒作ってるの?凄いねえ」
「おばあちゃん見たいとか言われるかと思った」
「ううん、言わないけど。凄いよ、何でも作るね」
「あのね、あのね、七海、この間お姉ちゃんにこーんなおおきいケーキ作ってもらったの」
それとジュースもと言われると気恥ずかしくて、頬を染めて俯いた。
「七海、そろそろお風呂入ろうか?」
「え、そうそんな時間か。じゃあそろそろ藤原さん帰ってくるかな。確かさっき七海の風呂までには帰るって言ってたんだよ」
「へー、分かりました。じゃああと一時間以内って意味だと思います」
「そっか。分かった。じゃあ其れまで番犬宜しくここで待ってますねと」
「有難う御座います。七海をお風呂入れてきちゃうんで」
「んと、おねーちゃん今日は先に入って、七海宿題わすれてたのおもいだした!」
「え゛それはまずいよ七海………じゃあ、先お風呂貰っちゃうね?」
「うん!」
*****
≪安立視点≫
「所で僕たち何時から仲良しになったんだっけ。などと聞いてみるけど、君、精神年齢偽ってない?」
「何?安立さん」
「だから、さっきの無垢な子供の表情とか、あの子の前でだけなの?」
「お父さんの前でもしてるよ。学校でも。でも、安立さんにはこういう顔でもいいんだって思ったからこっちにするね。あのね、何で今日呼んだかってこと?」
「そう、そうなんだけど………何で呼んでくれたの?あの子に警戒させちゃったから、ちょっと冷却期間おこうと思ってたんだけど」
「それは他にも人が来るからダメ」
「誰が来るって?」
「お姉ちゃんの友達。お姉ちゃんを狙ってるらしいから」
安立は思った、じゃあ何故自分ならいいと言っているのか、と。
と言うよりそう言ってる、よな?とも思った。
肘をテーブルにつけて、顎を持ち上げるように手のひらで掬い上げると、安立は言った。
「僕ならいいって言うの?僕なら、彼女に何してもいいって?」
「いいよ。許します」
「君が許すこっちゃないでしょう?」
「ううん、違うの。お姉ちゃんには、安立さんかお父さんがいい。お姉ちゃんの家族になって欲しいの」
「何で?だって僕が家族になったら、」
「だから、七海も一緒に居られて嬉しい家族の形って分かる人だったらいいの。でも他の人だとダメって言いそうだから」
お父さんに言ったらたぶんokしてくれると思うと言えば、安立は押し黙った。
どうかしている。
つまりこの子は疑似家族を行いたいだけなのだ。
それに自分をまきこもうとしている。
だが、それは癪だが協力を取り付けられると言うことでもあり――
「君の考えは分かったけど、僕だって結婚したら×××とは二人きりがいいって言うかもしれない。それでも?」
「それでも泊まりに行くの許してくれるでしょ?安立さんなら」
「まあ、僕だったら毎日入り浸ってても別に文句も言わないし、ってのは当たってるよ」
「じゃあ、交渉成立?」
「そうだね、交渉成立で」
お風呂出たよーと言う×××の声を合図に、七海と安立は彼らの普通に戻った。
そして風呂上りの×××を堪能したい欲望を胸に秘め、七海ちゃん勉強分からないって言うから、先にお風呂貰っちゃうねと、彼女の入りたての湯船につかりに行くのだった。
きもいって?余計なお世話だ。
*****
友人が好きな安立です。
安立好きだと言うので書いてます。
安立需要高まれ、だそうです。
需要と供給になってれば幸い。
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