アンケート ①
何で急に皆静かになるんだろう?
怖いんだけれど………
休み時間のことだった。
自分の机からノートや教科書を取り出していると、どこに言っていたのか隣の席に凛が戻ってきた。
天寺も一緒にどこかに出かけていたようで、各々自分の席に腰掛ける。
「ねえねえ、ちょっと×××ちゃんに質問何だけど、………いいかな?」
「質問?」
「うん、質問。ちょっとアンケート的なものなんだけれどね」
「アンケートって誰かに頼まれたとか?」
「うーん、まあ頼まれたっかなあ?みたいな」
「なので協力していただけると嬉しいなあって」
「別にいいけど………」
何かおかしな態度に見えるが気のせいだろうか?
×××は天寺と凛に向き直ると、じゃあどうぞと質問の内容を促した。
そこで先ほどまでちょうどトイレに出かけて居ていなかった加藤が席に戻ってきて――加藤も席に着くとアンケートが開始する。
「じゃあ行くね?二人に質問です。まず、好きな食べ物ってなに?」
「好きな食べ物?………今はまってる食べ物だったら葡萄かなあ? この間隣の奥さんにシャインマスカット貰ったんだけれどね、これで作るお菓子作りにはまってるんだ。葡萄も美味しいし、七海も喜んでくれるし、今一番好きなものって言ったら葡萄で、葡萄ケーキ作りがはまってることだよ」
「うわー、良いなあ七海ちゃん。あたしも君が作ってくれたお菓子食べたいよ!!」
「葡萄のお菓子かあ、………本当に×××ちゃんって料理得意だよね。葡萄って……私だったらお菓子に使おうなんて考えないで食べちゃうな」
「結構使えるよ。この間はシャーベットとタルト作ったし」
「うわああああ!今すぐ食べたい!」
「何だったら後で食べにくる?放課後にでもうちに来れば食べられるよ?ね、加藤もどう?」
タルトの出来栄えが満足行くものだったもので、食べに来ないかと三人を誘ってみた。
七海と三人でお茶でもしようかと思っていたが、どうだろう?
けれど加藤は自分だけが行くならいいのにと言いたげで、取り分が減ると思っているのか、微妙な顔をしているのだ。
何て狭量な。
「えええええ、天寺と田中も来るのぉ?俺の分減るじゃんよお」
「はあ?もしかしてあんた先にこの話聞いてたなあ!?ひっど、自分だけお呼ばれされようだなんて何てやつ!」
「ったりめえじゃん!?俺×××の親友だっしい?一番に呼ばれるのは当然ですよみたいな」
なーと言われて、何と返そうかと言った所。
別に親友と呼ばれてもいいかくらいには確かにそう言う関係何だけれど、でも男女の親友と言うと穿って考えられるから困るので、答えにくい内容と言うか――。
と言うことで×××が答えないでいると、加藤はなんで答えないんだよと×××の方をゆすってきた。
ちょっと、戻しそう。
やめてーと言っていれば、楽しそうに笑みを浮かべる加藤。
こう言うじゃれ合いは好きだ。
「ねえ、三人分ある?×××ちゃん」
「大丈夫、まだ1ホール残ってるし全然平気だよ」
「ええええええ、マジでこいつらも呼ぶの?」
「わーい、君は優しいなあ! それに引き換え加藤はあ………」
「あのなあ、お前………田中、お前前のこと忘れたのかよ」
「前!少しは遠慮しろよな!!前の×××作のクッキー!あれお前一人でほとんど食べちまうし、………今度は少し周りを考えて食えよな!?じゃねえと俺は断固としてお前来るの拒否るわ。絶対にやだかんな!」
「ああもう、煩いなあ。静かにしなよ。それと、加藤も大人げない。たかがクッキーですよ」
前のって言うと先々週辺りに作ってきたクッキーのことか。
確かにその日作って持って行ったクッキーは、大半が凛の胃袋に消えて行った。
うんま―!と言いつつずっと口に運び続けて居た気がする。
気が付くとクッキーを包んできた袋の中身はほとんど空で、加藤は食いすぎを窘め、その後絶叫していたのだった。
実に食い物の恨みは恐ろしいとそう言う事だな。
先々週の事を今の今までよくぞまあ持ち出して語る。
「お前の手製だ!あのクッキー………あの日三枚しかくえないで、俺がどんだけ切ない思いをしたと!!」
「はいはい、後でクッキーも作るから。 だからタルトは三人とも食べに来なよ。七海も楽しみにしていると思うし」
「やった!」
「わーい、クッキーも何て×××ちゃんは太っ腹だなあ」
「おい、×××、あんまり田中を甘やかすなよ。クッキーまでなんて」
「どっちかと言うと私が甘やかしているのは加藤じゃないの?」
「つーか、別にそんなにね、一々細かい事気にしないでいいじゃーんって、適当に加藤も答えて、好きな食べ物は何?」
「ほらほらほら!!こいつ反省してない!!絶対田中を甘やかしてるよ!注意位しろよ!!」
どうしてこうも二人の仲は悪いのか、頭を抱えて唸る。
「ああもう分かったよ………加藤、いい加減にしなさい」
「俺じゃねえだろ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます