∞27【誕生日プレゼント】

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 夕食の後。

 エミルと二人でお風呂に行こうとしているアゾロを、父が呼び止めた。父の手には、なにやら黒くて丸いモノが握られている。


「……誕プレだ」


 そう言って、父は娘に手のひらサイズの『鉄球』をプレゼントした。その小さな鉄球の表面には、いくつもの小さながある。


「……コレでコブシタタけ。……したら骨密度コツミツドが高くなるから」


 『骨密度コツミツド』……!


 『もうすぐ16歳になる娘』への誕プレが、拳叩コブシタタいて骨密度を上げるための『小さい鉄球』という父のセンス!


 ………なんで鉄球?

 しかも、誕生日じゃないし今日!

 

 鉄球を受け取ったアゾロの混乱をよそに、自分が思ったままのことを父は話し続ける。


「……今のままだと全力パンチ一発で折れるからな指おまえ。……骨密度コツミツドを上げないと」


 また骨密度って言った!

 何回言うんだ、この親父!


 なんで『鉄球』なのか。なんで『誕プレ』って略して言うのか。そしてなんで『カタカナ』っぽく言うのか。


 アゾロの頭の中に自分の父に対する様々な『?』が浮かんでくる。



「……オレって『いい父親』だよな〜」


 勝手に自分で自分をそう総括した父は、夕食の後片付けをしている母に「……先行ってるね」とひと声かけた後で、両親の寝室に引っ込んでいった。


 ……色々と言いたいことはあるけど。


 アゾロは思った。


 ……多分、今年の本当の誕生日には父からの『誕プレ』は無いんだろうな。




…To Be Continued.

⇒Next Episode.

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