∞22【引き手の速さ】

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 アゾロは休みなく父に対して『棒切れの連打』を放ち続ける。アゾロにはまだまだ体力に余裕があった。アゾロの基礎体力の高さは、《無限チュートリアル》の成果ばかりではない。


 アゾロには『アゾロパンチ』と自ら名付けた必殺の打拳がある。


 要はただのパンチなのだが『拳立て伏せの腕を立てた状態で床に向かって左右の片手パンチを体が傾かないように何度も繰り返す』というオリジナル特訓を毎日自室の硬い床の上で行っている。

 その特訓の成果で攻撃の後の『引き手の速さ』には、現役騎士のアゾロの父をして目を瞠るものがあった。


 『引き手が速い』ということは『次の攻撃動作への移行が速い』ということでもある。実際アゾロの左右のコブシ連打の速さは、ディオアンブラ領内で言えば『クマ』のそれにも匹敵する。


 左右の棒切れの連打に加えて、『多分こうやればもっといいかも』と自身が思う蹴りや肘打ち体当たりなどもところどころに織り交ぜながら、アゾロは父への連続攻撃を休みなく続けていく。


「……おぉ、やっと……っ」


 父の言葉が途中で止まった。


 父はハンデとして左手を体の後ろに沿えて右手一本だけで剣を構えてきた。しかし、右手一本でアゾロの連続攻撃をいなし続けることは、さすがの父にも厳しくなってきている。


 戦いながら、父がアゾロに質問した。


「……もしかして普段からなんかやってる?」


 さすがにアゾロの動きを見ただけでは普段『何をやっているか』までは父には分からない。

 しかし、天才騎士たる父の嗅覚にはアゾロの動きの一つ一つに確かな『練磨の痕跡』が感じられた。


 アゾロが左右の棒切れ連打の中にたまに織り交ぜてくる『芯の通った打撃』が、木剣で受ける父の右手に響く。痛くはないが、このまま受け続けると正確にさばけなくなるかもしれない。


 調子に乗ったアゾロは、さらにオリジナルの技を父に向かって繰り出そうとする。


 そんな娘に父は言った。


「……そろそろこっちも『攻撃』するぞ」




…To Be Continued.

⇒Next Episode.

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※『アゾロパンチ』は危ないのでやらないでください。


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