∞21【戦闘の天才】
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(……まあまあ
娘の攻撃をすべて体捌きと片手に持つ木剣でいなしながら、父は心の中だけで感想を述べた。
一見無闇矢鱈と繰り出しているように見えるアゾロの攻撃は、父側からすると『今ここ打たれるとイヤだな……』ってところをちゃんとピンポイントに見極めて打ってくる。
父はアゾロの棒切れによる連撃を捌きながら、冷静にアゾロの戦法を分析する。
(……左右の『棒切れ』か。『剣』とは動きが違うなやっぱ……)
たとえば剣なら相手に攻撃を避けられた場合、『刃を返す』動作が必要となる。剣は『刃の部分』でしか攻撃できないからだ。その点、棒切れの攻撃には当然刃の返しの動作がないし、棒切れのどの部分を相手に当ててもいい。しかも、木の棒切れは鉄の剣よりもだいぶ軽く扱いやすい。左右の手に一本ずつ持って振り回せるほどに。
つまり、剣よりも棒切れの方が『動作の制約が少ない』。その分身体に『別の動きをする余裕』が生まれ、攻撃を多彩に振り分けることができる。
それが『棒切れ』の最大の利点。
(……左右の棒切れ二本の『波状攻撃』。今まで対戦したことなかったけど意外とイヤかもな棒切れ二本。……まあオレは剣のが好きだけど……)
父はアゾロの攻撃を捌きながら冷静に分析を続ける。アゾロは両手に持った棒切れの先端部分だけではなく、剣で言えば『柄尻』の部分も含めた多角的波状攻撃を繰り出してくる。
しかも、左右同時に。
たまに父の下腹部への『踵蹴り』も交えて。
父はアゾロが繰り出した踵蹴りを身体を半身にひねりながらのすり足で余裕で躱す。
(……その体勢で蹴れるんだ。『剣』だと無理だな。剣重いしヘタしたら自分が刃で怪我するし……)
父はアゾロの攻撃に冷静に対応しながらも心の中でアゾロの戦法の分析・評価を続ける。これは武人としての父の『本能』のようなもので、父はこれを意識的に行っている訳ではない。
アゾロは左右の棒切れを自在に振るって、自由に多彩に攻撃してくる。棒切れの『打撃』、棒の中間部分や柄尻での『引っ掛け』、そして合間合間に繰り出される『蹴り』。
アゾロが繰り出す波状攻撃をすべて余裕で躱しながら、父は分析・評価を継続する。
(……二刀流じゃなくて『棒切れ二本』の戦い方なんてオレ研鑽したことないもんな。結構色々できんだ『棒切れ二本』……)
今だってアゾロは、父の左の肩口を狙うと見せかけて、直前で手首の返しだけで父の右顎を弾きにきた。それを軽々と躱しながら、伸びたアゾロの右腕に反射的に小手を放つ父。父の小手を、手を引っ込めながら大袈裟にバク転で躱す
アゾロはバク転しなから父の脇腹に蹴りを放つ。
それを腰ひねりとすり足で簡単に躱す父。
(……動きにムダが多い。多分
いや、それはむしろ父の『武人としての習性』あるいは『
(……けどなぜか『動く相手に当てる基本』がすでに出来てる。……
次々と繰り出されるアゾロの攻撃を余裕で躱し、片手に持った木剣で弾きながら、父はさらに続けて自分の心の中だけでひとりごちる。
(……しかし、いやらしい攻撃だ。こっちハンデで片手で剣持ってるのに……)
(……一旦『ここが弱点!』と見極めたところを嵩にかかって、何度も何度も何度も同じところ攻め続けるところなんか誰かさんに似てる……)
(……
(……けどまあ、それは置いといて……)
父はアゾロの連撃をすべて片手に持つ木剣と体捌きのみでいなしながら、アゾロに対して冷静に言葉を発した。
「……単調な暴力の繰り返しだけじゃ『
アゾロが使っている両手打撃武器の連打は、実戦経験豊富な父でさえも初めて見るものだった。
しかし、父は早くもその動きに慣れ始めていた。
アゾロやエミルにおける『戦闘の天才』のルーツは、歴戦の騎士である『この父』にある。
…To Be Continued.
⇒Next Episode.
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