∞8【《スキル》の試し打ち】

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「……そんなこと、おそらくなんも考えてないわね。あの親父のことですもの……」


 もたれかかっている大きな樹の樹皮に顔を押し付けて心ここにあらずといった感じでつぶやくと、アゾロは『ぽぉん…』と幹の表面を人差し指でごく軽く叩く。


 アゾロが幹の表面を指先で叩いた瞬間『ビッ…』という音が樹全体に響き、枝先にしがみついていた冬の枯れ葉の残りだけがハラハラと落ちる。

 現在丘の上に吹く風は微風で、枯れ葉が落ちたのは風のせいではない。


 まるで、

 『指先で軽く樹を叩いた衝撃が、樹の周りの空気を振動させて、樹の隅々にまで伝播していった』。

 そんな『衝撃』の伝わり方だった。


 アゾロは続けて『ぽんぽぉん…』と2回、幹の表面を人差し指で軽く叩く。

 ハラハラハラ…と樹の枝の枯れ葉が続けて落ちた。


 そして、アゾロが叩いた樹には、今年の春に芽吹いたばかりの新しい青々とした葉っぱだけが残った。


 立ち上がって樹を見上げながらそのことを確認したアゾロは、自分の両腰に手を当ててふんぞり返りながら言った。


「これでよし!樹の葉っぱも社会も新陳代謝が重要ってなもんよ。それに、たまには《スキル》の試し打ちもしなくちゃね!」


 そう言った後で、アゾロは傍らに置いていた自作の『木刀』を拾って元気よく素振りを始めた。


 その木刀の柄の部分には、『漢字かんじ』で『阿修羅あしゅら』という文字がアゾロの手書きで彫り込まれていた。





…To Be Continued.

⇒Next Episode.

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