∞7【わたしの弟(エミル)】

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 去年から飼い始めた豚が今年の春に子豚を産んだ。エミルが低く分厚い石壁で囲われたディオアンブラ家の庭で子豚とじゃれ合って遊んでいる。

 

 たまに母豚が子豚を守るために放つ本気タックルを、エミルは「あはは…」と笑いながらいなしていた。


「……あのも『天才』なのかしら」


 実家を見おろす丘の上の大きな樹に背中を預けて座りながら、アゾロがつぶやいた。

 子豚とじゃれ合いながら、エミルはまた母豚が放つ本気タックルを巧みに躱す。まだ5歳なのに、多分さばきだけは15歳のアゾロよりも上手いかもしれない。


「……将来が楽しみね」


 まるで他人事のように言いながら、アゾロがさらに樹の幹にもたれかかる。樹皮の表面がひんやりとしていて心地よい。天気もいいし、ついウトウトとしそうになる。


 アゾロの父は『ディオアンブラ領の伯爵様』である。

 しかし、それは父個人の騎士としての功績と、名誉に対して与えられたものだ。もし、父が亡くなったらディオアンブラ領がどうなるのかは、今のところなにも確定してはいない。


 普通だったら、父の後継者として長男のエミルを皇帝に謁見してもらい、『次期伯爵』の後継者としてお墨付きをもらったりするのではなかろうか。


 今のままだと父が死んだ後、エミルはこのディオアンブラ領の領主になれないかもしれない。

 今の父だって領主というよりも、皇帝の『代官』という表現の方が正確なのかもしれない。


 だったら、この『わたし』は?




…To Be Continued.

⇒Next Episode.

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