∞5【小さな世界】
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神聖アレクシス帝国の辺境、ヌクトリア地方にある小さな小さな村落『ディオアンブラ村』。
周囲を大小の丘と岩山に囲まれた自然豊かな草原地帯で、近くの山から流れる冷たい清流はそのまま手ですくって飲めるくらいに澄んでいる。
森林には食べられる植物がたくさん自生していて、それを目当てに集まってくる動物をたまに父が捕まえてくる。父が捕まえた動物の肉で母が獣肉入り香草シチューを作る。
『ディオアンブラ村』で一番の名物はなんと言っても母のシチューだ。弟のエミルの大好物も牛乳の入った母のシチューだ。
ディオアンブラ村の生活は『変化』に乏しい。
季節的には、長い春と短い夏とさらに短い秋の次に少し長い冬がきてまた春になる。感覚的には春と冬しかないような感じになる。
家から一番近い隣家が半里も離れているので、家族以外の他人に会うこともない。
町の学校は離れているので勉強は母に教えてもらうが、父を見ていると『体さえ丈夫なら勉強なんていらないんじゃないか』と思ってしまう。
そもそも辺境には学校に通わない人も多い。勉強はそれぞれの親から教わり、親の知らないことは親戚や近所の人から教わる。
だから、大人と子供の知識に差があんまりない。
そもそも辺境で生きていくのに必要な知識なんて、『食べられる動植物の種類』、『着るものや道具に加工できる素材の種類』、『建物や通り道を造るための素材の種類』の3つしかない。
両親から言われた仕事さえしていれば、あとは丘の上の樹の下に寝そべって昼寝をしても構わないし、自分で新しい仕事を始めてもいい。
物を壊したり人にケガを負わせたり自分がケガしたりしないなら、別に誰からも怒られない。
それが、ディオアンブラ村の基本ルールだ。
家と家族と獣肉入り香草シチューとディオアンブラ村の自然と丘の上の大きな樹。
それが、今のアゾロにとっての『世界のすべて』である。
他の世界は知らない。
…To Be Continued.
⇒Next Episode.
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