第2部の後の話 その2
彼女が道を開けるまでの10分間。彼は何をするのかというと周囲の警戒と雑談だ。彼は日陰に座り込んでいる詠の元へ、そして、彼の横に座る。ふたりの間に沈黙が流れる。その静寂を先に破ったのは鏡の方だった。
「お疲れ様。何か…久しぶりだね。こんなにボロボロになるのも。」
「ん。」
「ま、しょうがないね。それが僕達の歩むべき道だし。にしてもあんな素質持ち一体どこから…」
「これ。」
突如として差し出された紙を開き、内容を確認する。一通り確認したところで、ぎこちない笑顔で、またある意味納得した様子を浮かべている彼は会話を再開させる。
「あーね。うん。そっか…うん。これは…そーだね。よし、上に投げよう(思考放棄)」
「お。頼むわ。」
「ま、それはそれとして。ちょっと時間あるし、いつもの頼んでもいい?」
そう言われた彼は彼の方を見る。
こいつも相変わらずだなと思った。自分の事は二の次で、他人の事ばかり気にかける。時には自分の身も心も必要とあれば薪にし、炎に焚べ、足りないリソースを補う。それでいて、こいつは削った事を他人に悟らせない。よって、他人から見たこいつは"いつも親切で優しい人"という認識になる。
こいつもこいつでめんどくせぇ欠落を抱えてやがる。外面だけは完璧を装って、偽って、演じている。それがこいつの根底に存在している。
だから、弱った時はふと消える。そして決まって一人になっていた。その姿を見ることが出来る、見たことのある者は少ない。片手で数えられるくらいの数だろう。
なにより、あの姫様でさえ、その姿を見たことはない。というより、何処にいるかすら知らない。まあ、彼女の知らない場所となると限られてくるが。
まあ、そんなことになることの方がまれなのだが。今回はこのケースだろうなと、そう思った。なにより、その原因が俺のせいであることを俺が一番良く理解ってる。
俺はこいつの瞳を見た。
長い付き合いだ。相手が何を考えているかなんて互いに解りきっていた。それでもなお、俺はこいつに対してこういう態度をつく。それが俺が出来るこいつのための事だから。
「ほどほどにしとけよ。」
「…勿論。」
そうして俺は久々にメンテナンスをした。こいつのリソースの中に紛れるゴミを出すだけの単純な作業だが、こんなことが必要なのは扱う力が力な俺ら位だろう。しかし、状態が状態なため応急手当位にしかならない。この後、本格的な処置が必要になるだろう。
こいつが来るまで精々俺はゆっくり休ませて貰おう。
そんなことを終えた彼等に彼女の声が届いた。どうやら彼女も彼女で一仕事終えたらしい。それじゃあ行きますか、と彼女が開いた門をくぐる。
くぐった先にあるのは白を基調とした和テイストの風景であった。道は広く天井もそれなりに高い。全体的に大きい作りをしている彼等にとっては見慣れた場所だ。
場所が場所なので最低限服装を整えてから今回の騒動の報告をしに行く。
暫く歩いた後、ぽつんと扉が1つ現れた。彼がノックをし、報告をしに来た旨を伝えると、何処からともなく鈴の音が鳴り響いた。そして、一瞬彼等は煙に覆われ、気づいたときには、またさっきとは違う赤と黒のアクセントが入った彼等の上司である彼女の部屋に招かれたのであった。
そこには白をベースに青い蝶や紐を所々にあしらわれている何とも偉そうな一神と黒ベースに衣服の至るところに札の様なものぶら下げていり何とも頼りなさそうな一神がいた。
「ただいま帰りました。めぐるさんもいらしていたんですね。それではこちらを。」
そういうと、何処からともなく報告書が出てきて、それを提出した。
「ああ、ご苦労。形式的なのは此処までで良いかな。良く帰ってきてくれたね。」
「今回の問題解決感謝します。皆様お帰りなさいませ。」
「さてと、ね?」
どうやらいつもの空気感に戻るらしい。と言うことはそうです、お小言タイムが始まるんですよ。
「まあ、いつもの事と言えばいつもの事なのだけどもさ。あのねえ、はっちゃけ過ぎなの君達。いつもは程々にしてて偉いというか、いやそれが普通なんだけどもさ。いざこういう大きな事案が発生したら、うん、対処が速いと言うことは大いに良いことなんだけどもさ、それにしても、自分達の身を顧みなすぎなのよ。いや、何回も言ってるけどさ、君達3人はそれはもう私の大事な大事な契約者なのよ。この課において、こんなに人数が居ることは珍しく、喜ばしいことでもあるのよ。なのに、こんなに頑張りすぎている姿を見て私が悲しむとは思わないの?」
「特に。」
「黙秘で。」
「いやぁ…」
3人は即答した。
「なんで…どうしてうちの子達はめぐるの所の子達と比べてこんなに当たりが強いのよ…」
「それはねしずか、この子達なりの感情表現なのよ。まあ、応援しているわ。」
「いいわよね、そっちの子は。人数も多いし、素直だし。」
「あら、そうかしら。素直すぎてこっちはこっちで大変なのよ。」
「まあ、此処に帰ってこれて偉い。で、色々聞きたいことはあるが…そうとも行かないのだろ?」
「まあ、そうですね…あ、そうだ。めぐるさんもいるなら手間が省けましたね。」
「どうかなされましたか?」
「自分っすね。これなんですけど、どうされます?」
また、何処からともなく1枚の紙を取り出しそれを渡した。こいつら何処からともなく紙切れ出しすぎなんだよ。
ま、それを渡された神ふたりはまあ何とも厄介そうな問題が次から次へとやってくる彼等に対して頭がいたいのであった。
「っすー、あー、ねー、うん。」
「これはこれは…また彼ですか…この条件ならまあ…ありですね。でも、いいんですか?」
「ま、喚べって半ば脅されたので。じゃあ、喚びますよ。後の事はお願いしますよ。」
そういうと彼は自身の足元に何処からともなく出現した楔を刺した。その楔はどんどん沈み融け広がり、いつの間にか彼が居た場所には別のナニカが立っていた。
「どもー。いやー、やっと喚んでくれた。皆様お久しぶりー。」
「喚ばせたの間違いじゃろ。」
「久々ですねネル。」
「いやー、そんなに言われると照れちゃうよー。いひひ。まあ、ボクは別にどっちに転んでも美味しいからいいんだけどもさ、はいこれ。メッセンジャーネルこれにて任務達成。質問無かったら帰るけどいい?今すぐにでも帰りたいねん。もう、何処にいても居心地悪いねんよ。ほんまに、いつか背中刺されるんちゃうかって位熱い視線注がれてるねん。」
「そうですね、あなたの立場はとても微妙ですからね…」
「せやろせやろ。やっぱ懐がちゃいますわめぐるはんわ。」
「それだけか?うちの子貸してるだけなので、はよ帰ってくれると嬉しいんやけど。」
「ひどい。久々に来たボクに対してなんて態度。ボク泣いちゃうよ。シクシク。でも、今回ばかりは褒めてくれてもいいんですよ?何て言ったってこのボクがそのデータを持ってきたんだから♪」
「一体今回は何を目論んでるの。」
「目論むだなんてそんなぁ。ボクはいつでも面白そうな事をするだけですよ。ありゃま。そろそろ器の方が限界ですか。それではまた来ますね。じゃあねぇめぐるん、しずにゃん♪」
そう言い残し、その気配は消え去った。そこに残ったのは膝をついている彼の姿であった。
「…先いつもの所に飛ばしておくぞ。」
そう言うと彼の返事を聞く前に、鈴を鳴らした。すると彼の姿はすっぽりと消えていたのであった。
「さっさと終わらせるぞ。で、さっきは何を貰ったのよ。」
「えっとね、さきの謝罪とお詫びの情報?」
「何故に疑問文?」
「うーん、なんと言うか。要するに、これからの予定をリークしちゃう!絶対怒られるけど、そっちの方が面白そうだしいいよね!だそうです。」
「そんだけ?」
「そんだけ。」
「あいつ…今度会ったら絶対殴る。じゃ、此処まででいいや今日は。2人ともちゃんと休むんだよ。いい?絶対だよ。」
「はーい。」
「勿論。じゃ、後よろしくね。」
そう言った彼はそそくさと部屋を出ていった。残った女子組はというと…
「青春ってかんじねぇ…」
「疲れた…帰っていい?」
「だめです。手伝ってください。ただでさえ2人も使い物になら無いんですから、神の手でも貸してください。」
「えぇー。代わりにやってよ、めぐ。」
「あらもうこんな時間。そろそろお暇させていただきますね。」
「えちょ、この後も暇って言ってたやん。」
「えぇ?そんなこと言ったかしら?」
「あいつ逃げるつもりやん。」
「たまには仕事ぐらい投げずにやってあげなさいよ。」
「えー、だってぇー。」
「口より手を動かしていただいてもいいですか?これ、振り分けておいたので。」
「そんなぁ…」
いつも仕事を部下に押し付けていたツケが回ってきた神。凄い自業自得ですね。今回の観測は此処まで。
いやー、彼等は一体何処に行ったのでしょうね。1つ言えるとしたら詠君は不定の狂気でガラスとかが雲っていると、磨きたくなってしまった。ただそれだけです。
とまあ、こんな感じです。1章も2章も書き終わってないのに間の話書くだなんて愚か過ぎです。作者は反省してください。次回こそ本編進めたいです。終わり。
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