2話(18)

 「……うーん」


 目を覚ますと、私は冷たい床に横たわっていた。

 ここ、どこ!?


 「起きたか、小豆沢」


 「き、鬼龍院先輩!」


 「私もいるよ」


 「私も!」


 「鈴木先輩、樹理ちゃん!」


 みんなが居て一安心だ。

 ホッとして周りを見渡す。

 ここ、さっき入った女子トイレ……だよね。

 でも、なんか――


 「……違う?」


 ここは、いつもの学校じゃない。

 前にも同じことがあった。その時は空が変に暗くなって、他に人がいなくなっていた。


 「どこか、窓……」


 「確認済みだ。

 ここは、あちら側の世界……妖怪が暮らしている世界、だろうな」


 また、来てしまったのか。

 瞬間、ブワッと全身が粟立つのを感じる。

 気持ち悪い、この感覚。


 ……そうだ。


 「ありす、ありすは」


 「それが……私たちが目覚めた時には、もうここにはいなかったの」


 「そんな」


 ということは、ありすは今頃


 「屋上にいる……?」


 「……ってことだよね」


 花子さん事件は、トイレから目覚めた後に屋上に追い詰められ、落とされるというものだ。

 そしてそのあと、現実世界の体にも影響が出る。

 

 一人目の被害者は悪夢に魘されていて、

 二人目の被害者は熱に侵されている。

 三人目の被害者は重体で入院。

 四人目の被害者は意識不明。


 あの時考えるのをやめた、まだいない五人目の被害者のこと。意識不明のその先なんて、一つしかないじゃないか。

 

 このままありすが五人目の被害者になったとしたら、そこに待っているのは、死だ。


 「助けに、行かなきゃ」


 「そうだね」


 「……行くか」


 「行こう!」


 粟立つ肌をおさえ、私はゆっくりと立ち上がる。ありすを助けに、屋上へ。

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