2話(17)

 「ここだよね」


 「そうだね」


 私たちは部室を出て、HR教室かある方の校舎に来た。


 そして、ここは二年生のフロア。

 目の前には、『立ち入り禁止』と書かれた貼り紙がある女子トイレがある。


 「これ、俺も入る……んだよな」


 「そうだよ、鬼龍院! 背に腹は変えられないからね!」


 「まぁ、うん……そう、なのか?」


 鬼龍院先輩は女子トイレに入るのが躊躇わしいみたいだ。

 そりゃあ、異性のトイレに入るなんてそうなるよね……。


 「もう、いじいじしてないで行くよ! みんな!」


 鈴木先輩が何とも心強い。

 前回の酒天童子事件では鬼龍院先輩がそのポジションだったけれど、女子トイレを前にするとそうも行かないみたいだ。


 そんな鬼龍院先輩を連れて、私たちはズンズンとトイレの中に入る。


 鬼龍院先輩は、遂にやってしまった……というように顔をしかめている。


 「……は、花瀬さん!? 大丈夫!?」


 鈴木先輩が大声を出した。

 その声の向く方を見ると、そこにはありすがぐったりと倒れていた。


 あ、ありす……!

 ありすの方に手を伸ばすと、急に視界がぼやけ始める。なんだか、クラクラする。


 ――もう、立ってられない、かも……。

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