2話(16)

 「そんな、じゃあ、花瀬さんは今頃花子さんのところにいるってことじゃない」


 ありすが、一人で、花子さんのところに。

 どうしよう、ありすが、ありすが。


 「しょこらちゃん、落ち着いて。きっと大丈夫だから。」


 樹理ちゃんが背中をさすってくれる。


 「ありすのこと、助けないと。」


 早く助けないと、ありすが大変なことになっちゃうかもしれない。

 部室のドアの方に足が動いた。

 一刻も早く、ありすを助けなくては。


 「まって、しょこらちゃん!」


 肩に手が置かれる。鈴木先輩だ。


 「でも、ありすが」


 「この事件の被害者は、みんな二つ結びだったでしょう? だから、二つ結びで行かないと、花子さんは出てこないんじゃないかな」


 言われてみればそうだ。ありすを助けなきゃとしか思ってなくて、そんなことも忘れていた。


 「はい! 私、たくさん髪ゴム持ってるよ!」


 樹理ちゃんが髪ゴムを取り出す。

 私に、鈴木先輩に、鬼龍院先輩に、ゴムを二つずつさしだした。


 「……ちょっと待て、俺もするのか?」


 「鬼龍院先輩、当たり前でしょう! 髪、まあまあ長いんだから結べるし! 花瀬先輩を助けるためですからね!」


 「……はぁ。しょうがねえな……」


 鬼龍院先輩はいそいそと二つ結びを始める。なんだかその様子がおかしくって笑ってしまう。


 そのおかげか、少し心が軽くなった。


 鈴木先輩は三つ編みをほどき、もう二つ結びになっていた。


 樹理ちゃんは元から二つ結びだからそのままだ。


 私も早く結ぼう。


 「オイ、人間! オレサマはどうすればいいんだ?」


 酒天童子がそう言う。


 「酒天童子は髪が短すぎて無理……かな。 もし花瀬先輩が帰ってきた時のために、部室で待ってて貰ってもいい?」


 「そういうことなら、わかったんだぞ! オレサマ、しっかり待っててやるからな!」


 酒天童子は納得いったようで、机の上で胡座をかいた。


 その間に私と鬼龍院先輩は二つ結びをし終え、準備万端。

 これで、ありすを助けに行ける。


 「じゃあ、行こう!」


 ありす、待っててね! 今、助けに行くから! 

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