2話(15)

 「屋上転落事件の被害者が、今回の事件の犯人だなんて……。もう、この子は死んでるのよ? そんなはずは……」


 「そういう非科学的なことだってあるんだよ。

 酒天童子とかいうやつがここにいるんだから、あってもおかしくない」


 「だからって……」


 「証拠はある。まず、こいつの髪型だ。」


 屋上転落事件被害者の写真に目を向ける。 その子は、おかっぱだった。


 「世間一般的に、花子さんはおかっぱだという認識をされている。

 その上トイレに居たもんだから、今回の事件の被害者たちが花子さんだと思うのも納得だ」


 「でも、屋上転落事件被害者がトイレにいたのはなんで? 普通に考えたら屋上なんじゃ」


 「それも説明できる。この掲示板に、屋上転落事件被害者……長いから、花子さんと呼ぶことにする。……花子さんは当時、よくトイレでいじめを受けていたそうだ。教師が生徒用のトイレを使う機会は滅多にないだろ。だから、トイレで犯行していた。

 花子さんがトイレにいる理由は、ここに怨念があるからだろう。」


 「じゃあ、なんで今回の事件は起こったんですか? いじめを受けてた張本人なら、いじめの辛さを誰よりもよくわかってるはずなのに……」


 「復讐だ」


 先輩はそう断言する。


 「花子さんは、犯人たちに復讐をしたかったんだろう。だが、犯人たちは転落事件により退学。本人に復讐をする機会は訪れなかった。その無念で、しばらく眠っていたんだろうな」


 うん……。非科学的だけれど、ちゃんと筋が通っている。

 でも……。


 「なんで事件に関係のないこの子たちが被害にあってるんですか?」


 「これを見てみろ」


 鬼龍院先輩は、保健室の先生に貰った写真を机に並べた。


 「被害者たちは、全員ロングの二つ結びだ。この掲示板サイトに載っている、屋上転落事件の犯人と同様にな」


 た、たしかに……!

 名前にクラス、部活……。この人たちに共通点はないと思っていたけど、まさか髪型とは……。


 「酒天童子が言ってた『頭が同じ』ってのでわかったんだ。

 花子さんは、自分をいじめた犯人と同じ二つ結びをしている女子生徒を重ねて犯行に及んでいる。」


 「待って、じゃあさっき花瀬先輩が髪ゴムを二つ欲しいって言ってたのは」


 樹理ちゃんが口に手をあてる。

 そうだ。さっき、ありすは髪ゴムを二つ欲しいと言っていた。今までこんなことなかったのに。

 感じていた違和感は、これだ。

 ということは、まさか、もしかして。


 「ありすは、一人で花子さんのところに行った……?」

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