2話(12)
「うーん……」
私たち新聞部は、部室で頭を悩ませていた。
なんでかというと。
「事件の真相、全然わからないよー!!」
樹理ちゃんが嘆く。そう、そうなの!
保健室の先生に聞き込みをしたあと、被害者の人たちの担任の先生や友達にも聞き込みをしたんだけど、全然事件の真相が見えてこない。
そのあともかれこれ一時間くらい話し合いをしたけど、それでも特に進展はなし。
話し合った内容は主に、この被害者の人たちに共通点はあるかってこと。
でも、これが中々見つからない。
まず名前。違う。
次にクラス。これも違う。
部活、交遊関係、その他もろもろ、全部違う!
こんな感じで、共通点は一つも見つけられなかった。
「じゃあ、もう自分達で花子さんのとこにいっちゃうとか!」という樹理ちゃんのヤケクソな提案は、「五人目の被害者になったらどうなるかわからないだろ」という鬼龍院先輩の冷静な意見により却下された。
そんなこんなで力尽きたのか、鈴木先輩と樹理ちゃんは机に突っ伏していて、鬼龍院先輩は相変わらずパソコンとにらめっこ。
そしてありすはというと、保健室の先生から貰った写真をじーっと見ていた。
聞き込みをする前からめんどくさいと言っていたのに、ありすはなんだかんだ聞き込みに参加して、そのあとの話し合いにも参加した。
部室に行くとありすが言ったとき、酒天童子がいるからバレないか心配だったけれど、酒天童子はお気に入りのロッカーの中でお昼寝をしていたから何とかバレずに済んだんだよね。よかったぁ……。
もう一度ありすの方を見ると、何やらスマホをいじっている。
そろそろ飽きてきたのかな。
そんなことを思っていると、ありすは急にバッと顔をあげた。
「ねえ、しょこらちゃん、髪ゴム持ってない?」
「え? 髪ゴム?」
「そう、ちょうだい。二つ」
「ええっと、髪ゴム、あったかなぁ。
というか、ありす髪いわくのめんどくさいから嫌いって前言ってなかったっけ?」
「ちょうだい」
ありす、急にどうしたんだろう。
私がオロオロしていると、ありすははやくと急かす。
すると、机に突っ伏していた樹理ちゃんがこっちに来て言った。
「花瀬先輩、私のでよかったら髪ゴムあげますよ! はい!」
「ん、じゃあね」
樹理ちゃんから髪ゴムを二つ受け取ったありすは、お礼も言わずにさっさと部室を出ていった。
ありす、本当にどうしちゃったんだろう。
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