2話(11)

 「じゃあ、聞き込み始めよっか!」


 そう言った鈴木先輩に、私と樹理ちゃんは「はい!」と大きく返事をする。


 鬼龍院先輩は無愛想に「ん」とだけ言った。何とも先輩らしい。


 酒天童子は「オレサマ今日はもう疲れたー」といってきたので、部室で待機させておくことにした。


 それで、無理をいって一緒に行くと聞かなかったありすはというと……。


 「しょこらちゃん、もう私飽きたー。めんどくさい。」

 

 「もう、ありす! まだ何にもしてないでしょ!」


 早くも飽きてしまったらしい。

 こんなので、今日の聞き込みやっていけるのかな……。


 鈴木先輩はありすの様子を見て苦笑い。

 それでも怒ったりしない鈴木先輩は、やっぱり優しいなと思う。


 「まずは、保健室の先生に話を聞きに行こう!」



 「お忙しい中お時間取っていただき、ありがとうございます!」


 「いえいえ。

 あの子たちがまた学校に来ることができるように少しでも力になれるなら、それ以上のことはないですから。何でも聞いてくださいね!」


 「ありがとうございます!」


 今日の聞き込み担当は鈴木先輩だ。

 書記担当は鬼龍院先輩で、私と樹理ちゃん、ありすは、先輩方の横で立って話を聞くことになっている。


 早速、先輩は質問を始める。


 「では、あの子たちが保健室に運ばれてきた時の様子を教えて貰ってもいいですか?」


 「えぇ。みんな、すごく辛そうだったからよく覚えているわ。顔が真っ白になって、呼吸困難みたいな症状になっていたの。」


 それって……すごく大変なことだ。


 「みんなたくさん汗もかいていてね……。本当に苦しそうだった。」


 「運ばれてきた時、どういう風に対処されたんですか?」


 「そうね……。

 まず、ベッドに寝かしてあげたわ。

 それで苦しくないようにボタンを外して、みんな髪をいわいてたから、寝やすいように髪ゴムを外したわね。

 あとは、冷えピタを貼ったりタオルケットをかけてあげたり……。

 まぁ、全部体調不良のときの、基本の対処方法よね。特に変わったことはしてないわ。」


 「そうなんですね。他に何か知ってることはありますか?」


 「うーん……。あぁ、これは保護者の方から聞いた話なのだけれどね。みんな今も症状は回復してないみたい。

 一人目の子は寝ると悪夢を見ちゃうから全然寝れないみたい。

 二人目の子も悪夢を見ちゃうらしくて、発熱とかもあるらしいわ。

 三人目の子と四人目の子は症状が酷くて入院してる。四人目の子は意識もない状態らしくて……。

 ……こう見ると、あの現象が回数を重ねていくに連れて段々と症状が悪化してるみたいに思えるわね。まぁ、偶然だとは思うけれど……。」


 悪夢に、発熱……。意識がない人も居るだなんて。

 

 保健室の先生が言っている通り、一人目から四人目まで段々と症状が酷くなっていっている。

 四人目の人が意識不明。

 この法則でいくと、もし五人目の被害者が出てしまったら……。


 そう思うと怖くてたまらなくなり、私はふるふると首を横に降る。

 出ていない五人目の被害者のことなんて考えるのはよそう。


 「それ以外に知ってることはないわ。お役にたてなくてごめんなさい。」


 「いえ、全然! 貴重なお話ありがとうございました!」


 鈴木先輩がお礼を言う。私たちもそれに続けてお礼を言った。


 すると、保健室の先生は「あぁ」と思い出したかのように何かを差し出した。


 「そうだ。これ、もしよかったら。あの子たちの写真です」

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