1話(16)

 帰りのHRが終わった瞬間、私たちはダッシュで部室に向かう。


 なんてったって、初部活! 楽しみじゃないわけないよね!


 スクールバッグの中の酒天童子は、難しい授業に聞き飽きてぐっすりだ。

 あんなに生意気だけど、寝顔はなんだかかわいく見える。


 軽い足取りで、旧校舎に入る。

 もう、部室のドアを見るのも三回目だ。


 コンコン


 二回ノックし、ドアをがちゃりと開ける。


 「「こんにちは!」」


 「お、二人、来たね! じゃあ部活動、始めよっか!」


 「ん」


 鈴木先輩の明るい声も、鬼龍院先輩の空返事も、もう聞きなれたものになっていた。



 「今日の部活は、昨日あった出来事を新聞にするよ!」


 私と樹理ちゃんは、おー! とパチパチ拍手をする。


 「とりあえず、この新聞の名前の欄に『妖怪新聞』って書こっか」


 「あ! はいはーい! 私、提案あります!」


 樹理ちゃんが手をあげる。


 「『妖怪新聞』って、何かダサくないですか? 安直すぎるし!」


 それを鬼龍院先輩がギロリと睨む。


 「はあ? 別に、新聞の名前なんてなんでもいいだろ」


 「えぇー。そんなことないですよ!」


 「確かに、少しシンプルすぎるかもね。何か、いい案ある?」


 「うーん。まず、妖怪ってのが可愛くないから……そうだ! 妖怪を、もののけにする、なんてどうですか!」


 「樹理ちゃん、いい考え! もののけ、かぁ……。たしかに可愛いね!」 


 「ふふふー。ありがとうございます!」


 樹理ちゃんは自慢けだ。


 「翔子ちゃんは、何か他に案ある?」


 「えっと、もののけ、ですよね」


もののけを使った、新聞の名前……。


 「……もののけスクープ、とか」


 私は思い付いたものを口にした。


 「あっ、でも全然、変だったら別ので――」


 「めっちゃいいじゃん! もののけスクープ!」


 「ね! 翔子ちゃん、すごくいい案だよ!」


 樹理ちゃんと鈴木先輩がワイワイと盛り上がる。

 気に入ってくれたみたいで一安心。


 私は、その横で作業を鬼龍院先輩に目を向ける。


 「……まあ、いいんじゃねえの」


 「お! 鬼龍院が珍しく賛成してる!」


 「賛成ってか、どうでもいいだけで……」


 「またまた~! そんなに照れなくてもいいんだよ、鬼龍院くん!」


 「はあ?」


 先輩たちのやりとりに、思わず笑顔になる。

 樹理ちゃんも、先輩たちを見てニコニコしていた。


 よおし、そう言って、鈴木先輩は立ち上がる。


 「じゃあ、後輩ちゃんたちが入ってきて初めての新聞! もののけスクープの記事、書き始めようか!」


 「「はい!」」


始まったばかりの高校生活、何だか楽しくなる予感!

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