1話(16)
帰りのHRが終わった瞬間、私たちはダッシュで部室に向かう。
なんてったって、初部活! 楽しみじゃないわけないよね!
スクールバッグの中の酒天童子は、難しい授業に聞き飽きてぐっすりだ。
あんなに生意気だけど、寝顔はなんだかかわいく見える。
軽い足取りで、旧校舎に入る。
もう、部室のドアを見るのも三回目だ。
コンコン
二回ノックし、ドアをがちゃりと開ける。
「「こんにちは!」」
「お、二人、来たね! じゃあ部活動、始めよっか!」
「ん」
鈴木先輩の明るい声も、鬼龍院先輩の空返事も、もう聞きなれたものになっていた。
*
「今日の部活は、昨日あった出来事を新聞にするよ!」
私と樹理ちゃんは、おー! とパチパチ拍手をする。
「とりあえず、この新聞の名前の欄に『妖怪新聞』って書こっか」
「あ! はいはーい! 私、提案あります!」
樹理ちゃんが手をあげる。
「『妖怪新聞』って、何かダサくないですか? 安直すぎるし!」
それを鬼龍院先輩がギロリと睨む。
「はあ? 別に、新聞の名前なんてなんでもいいだろ」
「えぇー。そんなことないですよ!」
「確かに、少しシンプルすぎるかもね。何か、いい案ある?」
「うーん。まず、妖怪ってのが可愛くないから……そうだ! 妖怪を、もののけにする、なんてどうですか!」
「樹理ちゃん、いい考え! もののけ、かぁ……。たしかに可愛いね!」
「ふふふー。ありがとうございます!」
樹理ちゃんは自慢けだ。
「翔子ちゃんは、何か他に案ある?」
「えっと、もののけ、ですよね」
もののけを使った、新聞の名前……。
「……もののけスクープ、とか」
私は思い付いたものを口にした。
「あっ、でも全然、変だったら別ので――」
「めっちゃいいじゃん! もののけスクープ!」
「ね! 翔子ちゃん、すごくいい案だよ!」
樹理ちゃんと鈴木先輩がワイワイと盛り上がる。
気に入ってくれたみたいで一安心。
私は、その横で作業を鬼龍院先輩に目を向ける。
「……まあ、いいんじゃねえの」
「お! 鬼龍院が珍しく賛成してる!」
「賛成ってか、どうでもいいだけで……」
「またまた~! そんなに照れなくてもいいんだよ、鬼龍院くん!」
「はあ?」
先輩たちのやりとりに、思わず笑顔になる。
樹理ちゃんも、先輩たちを見てニコニコしていた。
よおし、そう言って、鈴木先輩は立ち上がる。
「じゃあ、後輩ちゃんたちが入ってきて初めての新聞! もののけスクープの記事、書き始めようか!」
「「はい!」」
始まったばかりの高校生活、何だか楽しくなる予感!
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