1話(12)

 「つまり、あの変なのは酒天童子……ってこと!?」


 「まあ、そうなりますね」


 今、私たち四人は学校を出て帰路についている。

 あのあと、私たちは見回りの先生に早く帰りなさいって怒られて、学校を追い出されちゃったんだ。

 それで今は、事情を知っている樹理ちゃんに、みんなで質問攻めしているところ。


 「あそこはパラレルワールド、ってことでいいんだな?」


 「そうですねえ」


 「というか、樹理ちゃん、傷は大丈夫なの!?」


 「だーかーらー、さっきからいってるじゃないですか! パラレルワールドでの話だから、もう傷なんてないんだって!」


 樹理ちゃん曰く、私たちが迷いこんだのは妖怪が住んでいる世界線。

 それで、あの暴走していたのは酒天童子。


 樹理ちゃんの考察によると、お酒がなくなっていたのはこちらの世界に迷いこんだあいつの仕業らしい。


 そして、樹理ちゃんがこんなに妖怪に詳しいのは家がお寺だからだそう。


 「妖怪やらなんやらのせいで中学校時代いじめられてたから、このこと隠したかったんだけどね」


 樹理ちゃんはそういって笑っていた。


 「でも、酒天童子って、そんなに暴れまわるような妖怪じゃないんだよねえ。なんであんなに凶暴化してたんだろう。」


 「誰か黒幕がいるとか!? どう、どうなの!?」


 「わーわー、また始まった」


 樹理ちゃんの先輩たちの会話が何だか微笑ましくて笑ってしまう。

 さっきまであんな窮地に立たされてたのにね。


 「ってか、さっき翔子ちゃん酒天童子に触れてたよね?」


 「え、うん。それがどうかした?」


 「普通、妖怪と人間って触れ合えないんだよね。」


 「そうなんだ……」


 「妖怪の血が混じってるとか、そういうのがないと触れられないんだよ。もしかしたら、翔子ちゃんもそうなのかも」


 「えー! そうなのかな」


 「実際、妖怪に触れられる人って、かなり貴重だよ。私、そんな人知らないもん!」


 「そうだぞ! オレサマ、温もりを感じたのなんて数百年ぶりだ!」


 えっ!? どこからか声が聞こえ、私たちは辺りを見回す。一体、誰!?


 「ここだぞ、ここ! オマエの鞄の中!」


 鞄の中……!?

 私は急いで自分の鞄を見る。

 すると、そこから青い肌をした小さな鬼みたいな生き物が首を出していた。

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