1話(13)

「あなた、誰!?」


「ガハハ! よくぞ聞いたな! オレサマの名前は酒天童子、妖怪だ!」


 しゅ、酒天童子……!?


 料理部に迷惑をかけ、さっきあれほど暴れまくった、あの!?


 まさかの展開に愕然としていると、鬼龍院先輩が酒天童子をひょいとつまみあげる。


 「おまえ、さっきはよくもやってくれたな」


 「オ、オイ! 人間! オレサマをつまむのはやめろ!」


 「そうだよ、鬼龍院、つまむなんてひどいよ!」


 鈴木先輩がムスッとしてそう言った。


「はあ? さっきあんな暴れまわっといてそりゃないだろ! こっちにもこんくらいする権利はあるっつうの」


「でも、こんなちっちゃいし……」


 先輩たちの会話に樹理ちゃんが割り込む。


「ちょいちょいちょい! そんなことより、酒天童子君! 君、なんでこの世界にいるのさ!」


「なんでって、そりゃあ、さっきので妖気を全部使い果たしちゃったんだよ!」


 どうやら、元いた世界に戻れないみたいだ。これって、大変なことなんじゃ。


 樹理ちゃんは酒天童子の言い分を聞いて、帰れないなんてそんなのは駄目だとはワーワーと酒天童子に説教をしだした。


 「うるさいな、人間! 戻れないったら戻れないんだよ!」


「だからって……」


「あ、そうだ! いいこと思い付いたぞ! 人間、オマエ、オレサマのことを匿え!」


 酒天童子は私に向かってビシッと指を指す。


 ……って、私!?


「なんで私!?」


「なんでって、そりゃあ、オマエの鞄に入ってた茶色い塊がうまかったからな!!」


 茶色い塊……? もしかして、それって……。


 「いっぱいあった私のチョコ、全部食べられてる!?」


 「オレサマ、それ気に入った! それ、ウマい酒の味がするんだ! もっとくれよ!」


 酒天童子がニカッと笑う。


 こいつ、私よ高級チョコを、全部……!


 「とりあえず! 酒天童子が元の世界に戻れないのはわかった。でも、目立たないようにして!これは絶対。妖怪がいるなんて知られたら、もう日本中がパニックになっちゃうんだから」


 樹理ちゃんが酒天童子を指さす。


 「そこまでいうなら、しょうがないなあ。人間ってやつは」


 「くっ、どこまでも生意気なやつなんだから、こいつは……! とにかく、十数年前の悲劇を繰り返さないように……」


 樹理ちゃんはぶつぶつと何かを呟いている。


 「なあ」


 その時突然、鬼龍院先輩が切り出した。


 「おまえら二人、新聞部入らねえ?」

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