1話(8)
「じゃあ、今日の仮入部はこれでおしまい! 新聞部がどんな感じか、ちょっとはわかったかな?」
「はい! ありがとうございました!」
「うんうん、いい返事! 明日も仮入部あるから、よかったら来てくれると嬉しいな!」
鈴木先輩に見送られ、私は新聞部室を出る。
聞き込みが終わって部室に帰った後、先輩たちはさっきの情報をまとめる作業に入った。
二人とも真剣に新聞に向き合っていて、私はより一層新聞部に入りたい気持ちが高まった。明日の仮入部も行きたいなあ。
鬼龍院先輩のことはまだちょっと苦手だけど、ね。
私は、腕時計を確認する。針は、5時50分
を指していた。
最終下校の6時まであとちょっとだから、早足で行こっと。
私は駆け足で下駄箱に向かう。
すると、後ろからポンポンと肩を叩かれた。
「翔子ちゃん、やっほ! 今帰り?」
「樹理ちゃん! うん、今帰りだよ! 樹理ちゃんも?」
「そう! ねえねえ、よかったら一緒に帰らない?」
「もちろん! 行こ!」
私たちは上履きからローファーに履き替え、校門をでる。
「樹理ちゃん、バスケ部の仮入部どうだった?」
「楽しかったよ! でも、仮入部来てた人みんな体育会系でさ……。私、そこまで運動上手くないから、入るかはまだ悩み中」
「そうだったんだ」
「そっちは? 新聞部、どうだった?」
「すごく良かったよ! ちょっとこわい先輩いたけどね……。」
「えー! そうなんだ! あぁ、あの部活紹介のときの、金髪の?」
「そうそう!」
「たしかに、あれは怖いかも」
「ふふ、だよね」
「あ、そうだ。私こっちの駅だけど、翔子ちゃんは?」
「私は徒歩だから、このまままっすぐ!」
「おっけー! じゃあここでバイバイかあ。」
「そっかあ、残念。樹理ちゃんは、何駅なの?」
「えっとね、私は……東森山駅、だよ」
「そうなんだ! ここからだと、かなり時間かかるよね?」
「そうなの! 帰り道長くて嫌になっちゃう」
樹理ちゃんはそういって顔をしかめる。
その顔がなんだか面白くて、私は笑ってしまう。
樹理ちゃんは、笑うなー!と言って私の頭をわしゃわしゃしてきた。
それでぼさぼさになった私の髪を見て、今度は樹理ちゃんが笑う。
そんなことをしているうちに、学校を出てからかなり時間が経ってしまった。
「もう暗くなってきたね」
「そうだね、そろそろ帰ろっか」
「そうしよっか! じゃあ翔子ちゃん、また明日!」
「うん、また明日!」
私たちは、見えなくなるまで手を振りあった。樹理ちゃんといると、時間があっという間だなぁ。
そうだ! 今度、樹理ちゃんと寄り道とかしてみたいかも。樹理ちゃんの最寄り駅って、何かカフェとかあるのかな。
そう思って検索アプリを開く。
私はそこに『東森山駅』と入力した。
マップを開くと、そこは山一帯で何もないところだった。唯一あるのは、お寺だけ。
これじゃあ、樹理ちゃんの最寄り駅で寄り道するのは無理かなあ、残念。
今度、他に寄り道できるところを探してみよう。私はスキップしながら家に帰った。
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