1話(7)

「新聞部のみなさんですね。今日はお願いします」


 「こちらこそ、よろしくお願いします!」


鈴木先輩が挨拶をしている横で、鬼龍院先輩はくるくるとペンを回している。


 「じゃあ早速質問させて頂きますね!」


 「鈴木、ここは俺が質問するからおまえがメモしてくれ。」


 「分かった、じゃあ鬼龍院よろしく」


 え、鬼龍院先輩が質問するの……!?

 無愛想で怖い鬼龍院先輩が聞き込みする姿、全然想像つかないや。


「まず、最初にお酒が失くなったのはいつですか?」


「うーん……。たしか、一週間前くらいだったかな」


「ありがとうございます。次に、何回お酒が失くなったか教えてください。」


「4回かな。もう予算がどんどん減ってくよ……」


「では……」


 鬼龍院先輩は淡々と質問をしていく。

 あれ、意外としっかりしてるかも……!?まさかの一面に、私はあんぐり。


 そんな私を見て、鈴木先輩はふふっと笑って小声で耳打ちしてきた。


 「鬼龍院、ちゃんとしてて意外って思ったでしょ」


 先輩に図星をつかれてしまう。


 「鬼龍院はね、妖怪新聞には真摯に向き合って活動してるんだ。だからかなぁ、いつもあんな感じだけど憎めないんだよね」


 鈴木先輩は鬼龍院を見て微笑んだ。

 そっか、そうなんだ……。鬼龍院先輩のこと、ちょっと見直したかも。


 「質問、答えてくださってありがとうございました」


 私と先輩がこしょこしょ話をしている間に、聞き込みは終わったみたい。

 料理部員の人にお辞儀をし、調理室を出る。


 鬼龍院先輩の意外な一面を見れたなぁ。苦手意識を持っていたけど、そんなに嫌な人じゃないのかな。


 そう思って、私は鬼龍院先輩の方に目をやる。

 そしたら、鬼龍院先輩は私からぷいと目を逸らした。


 うぐ、前言撤回。やっぱり鬼龍院先輩のこと苦手かも……。

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